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Audiotist『Robin』

ベルギーのブレイクコア・シーンを長きに渡って支えているBreakcore Gives Me WoodとRagga Terror Frontの中心メンバーとして精力的に活動し、Jigsore RecordやSuck Puck Recordzといったレーベルから作品を発表しているAudiotistの新作EP『Robin』がMURDER CHANNELから先日リリースされた。

美しく儚いメロディと激しく感情に訴えかけるビートが感動的に交差する「Post Pa」、トラディショナルな楽器の音色が開放的な空間を作り出す「Robin」のオリジナル・トラックとAudiotistによるDROON、R-MIT、Birdmaskの楽曲を再構築したリミックス・トラックに加えて、日本の次世代ハードコア・クリエイター/DJのShimon_HarbigによるAudiotistの名曲「Batterijzuur」のリミックスが追加収録されたボリューム満点のEPだ。

『Robin』はAudiotistの父親に捧げられたというコンセプチュアルな作品であり、以前よりメロディが強調されていてリスニングにも特化している。彼の父親は音楽好きでレコードやカセット、CDを大量に所有していたコレクターであり、Audiotistは幼少期の頃から父親に連れられてフェスティバルやライブハウスに行っていたそうだ。非常に幅広い音楽を素材としたブレイクコア~ジプシーコア~ハードコアをクリエイトしているAudiotistの原点には父親の存在が大きく残っているのだろう。『Robin』には父親への深い愛情と尊敬が込められているのが感じられ、Audiotistがアーティストとして大きく成長したのが形となって表れている。

そして、SickboyとDROONが開拓したベルギーの土着的なブレイクコア・スタイルを受け継ぎ、その可能性を拡大させることに成功しているのも見逃せない。『Robin』はVenetian Snares『Detrimentalist』『Cavalcade Of Glee And Dadaist Happy Hardcore Pom Poms』、The Flashbulb『Love As A Dark Hallway』、Enduser『1/3』などの名作に通じる独創性があり、いつの時代に聴いても廃れることはない強固な世界観のある楽曲を生み出せている。

IDM~グリッチ要素を強めながらバンド的な構成を取り入れて世界的な人気を得たRuby My Dear、様々なアナログ機材を使いこなしてアシッド・サウンドを拡張させ未知の領域へと挑むStazma、非ダンスミュージックの要素を機能的に組み込んでアブストラクトな電子音と予想不可能なビートを打ち出しているHitori Toriなど、彼等のようにブレイクコアをアップデートさせているアーティストと並んでAudiotistも『Robin』によってブレイクコアを次のステージへと押し上げた。

近年はBangfaceやDominatorといった大型フェスティバルに出演し、ブレイクコア・シーンを飛び越えて多様なリスナー、アーティスト達から支持されているAudiotist。今後さらにクロスオーバーな展開を巻き起こし、ブレイクコアをリードする存在になるはずだ。

『Robin』でAudiotistに興味を持ったら是非とも2020年にリリースされたWan Bushiとのスプリット『Melos Ovilus』、2010年代のブレイクコア史に残る名作『Lunapark』やDeidream名義での作品もチェックしてみて欲しい。


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