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エクストリーム・ミュージック界の超奇才Passenger of Shitについて

激しく躁鬱が入れ替わるエモーショナルでストレンジなメロディ、絶叫スクリーミング・ボーカルとデスボイスのラップ、高速で叩き込まれるガバキックとノイズとアーメン・ブレイクが一体となったアブノーマルな中毒性が強い楽曲を生み出し続け、今年3月には待望の新作アルバム『CRAPITALISM』を発表し、世界中のエクストリーム・ミュージック愛好家を魅了したPassenger of Shitが2016年に日本のハードコア・レーベルMaddest Chick'ndomからリリースしたベスト・アルバム『EROTIC SPEEDCORE COPROPHILIA』の貴重な在庫が発掘された。

『EROTIC SPEEDCORE COPROPHILIA』は2003年~2016 年までに12"レコードなどでリリースされた作品から厳選されたPassenger of Shitを象徴する数々の名曲/迷曲と新曲がコンパイルされ、日本のスピードコア・アーティスト m1dyによるリミックスが追加収録。サッドコア/スピードコア/ブレイクコアといったスタイルが最良のバランスで並んでおり、Passenger of Shitのコアな魅力がこの1枚で見事にパッケージングされている。比較的聴きやすい曲が中心となっているのでPassenger of Shitの入門編に最適だろう。

『EROTIC SPEEDCORE COPROPHILIA』はサブスクとBandcampでも配信されているが、今回発掘されたCD版はそれよりも曲数が多くデジタル解禁されていない秘蔵の音源が沢山あるので、ファンにはCD版をオススメである。MxCx online storeにて販売中なので是非チェックしていただきたい。
https://mxcxshop.cart.fc2.com/

Passenger of Shitの経歴

オーストラリアを拠点に活動している芸術家Swift TreweekeによるPassenger Of Shitは2000年に自主レーベルShitwankから1stアルバム『Nov/00』を発表してキャリアをスタートさせる。

デスメタル、ハーシュノイズ、スピードコアといったジャンルを音楽的ルーツ持ち、それらの要素をサディスティックでデプレッシブな世界観とドロドロに溶かして吐き出した楽曲をデビュー当初から展開。Global TerrorやCORE-TEX Labsといったスピードコア/ハードコア・レーベルから12" レコードをリリースした後、2004年にオーストラリアのブレイクコア・シーンを代表するレーベル/コレクティブSystem Corruptからリリースされた12"レコード『Shit is Harder Than Penis』とDJ Rainbow Ejaculationとのスプリット・レコードによってブレイクコア・シーンに大きな衝撃を与え、Passenger Of Shitの存在は好事家達の間で大きな話題となった。

その後、DJ Akira主宰のスピードコア/テラーコア・レーベルHong Kong Violenceからの12"レコードのリリースやNoisekick Recordsのコンピレーションに参加し、スピードコア/テラーコア・シーンでの人気を獲得していき、オランダのハードコア・フェスティバルDominatorに2008-2010年の3年連続で出演。他にもNightmare、Megaraveといった伝説的ハードコア・フェスティバルやBangface Weekenderにも出演している。

2000年のデビュー作以降ShitwankからPassenger Of Shitとして10枚以上のアルバムをリリースしており、ホラーコア・グループSuicidal Rap Orgyやグライ ンドコア・バンドOdiusembowel、ノイズプロジェクトDoodleinacacoonのメンバーとしても作品を発表。
本能に忠実な剥き出しのスクリーミング・ボーカルとスピードコア~ブレイクコア~ノイズ~ホラーコアが渾然一体となった発狂度数の高い作風は、エクストリーム・メタル系のリスナーからも支持されている。

僕はオーストラリアのブルーマウンテンズ出身さ。ブルーマウンテンズはシドニー西側の山々の中にある小さな街。そこには山の背に小さな街が連なっていて、広大な森に囲まれた山を登っていくと、小さな渓谷と展望台があるんだ。
都市と大差はなくて完全に孤立しているわけじゃない、かなり郊外っぽい街もあれば、未開の地に近いところもある。夏場における山火事のリスクは非常に高くて、世界で最も高いとこの1つだ。悲しいことに、オーストラリアのこういう土着の聖なる場所の多くは、幹線道路や旅行者のアトラクションを作るために破壊されてしまった。白人様のものって感じさ、キリスト教徒、保守主義者、人種差別主義者。僕はヒッピーの子供として育った、両親は60年代のサイケデリック・カウンターカルチャーに熱狂したヒッピーのアーティストで、70年代にオーストラリアで最初のコミューンを始めた。母が僕を生む直前に死にかけていたとき、ブルーマウンテンズに引っ越す前のことだ。
90年代には良い感じの規模のローカルな音楽シーンがあったんだけど、2000年代には衰退してしまった。今日でもここにはアートと音楽シーンがあって、かなり活発で多様なんだけど、非常に小さい。多くの才能あるクリエイティブな人たちがいるよ。何人かはよく知られていて、多くは無名だね。細々とやっている。天才的な隠遁者の姿は、ここでは普通のことだね。

ブレイクコア・ガイドブック上巻

Passenger Of Shitのどぎついエログロなジャケット・イラストは本人が描いており、作詞作曲から楽器の演奏といった楽曲製作からCD/レコード・ジャケットまで全て自身で手掛けているので毎回どの作品も拘りが感じられる超濃厚な内容。Passenger Of Shitのブルータルでエログロな世界観は好き嫌いがハッキリと別れるだろうが、あの独特な世界観には中毒性があり、一度でもハマると抜け出せなくなる。

楽曲の世界観を映像化させたMusic Videoも幾つか公開されているのだが、YouTubeの規制に引っかかる為にvimeoで視聴することができる。興味のある方は自己責任で検索して見つけてみてほしい。

僕は包括的なテーマからそれて、人々が聴きたいと期待するものに唾を吐いて背を向けるのが好きで、作品の中にコメディーとシュルレアリスムを持ち込みたいんだ。それ以上テーマや他の意味、あるいはそれから発展したディティールが無くなるまで、そのテーマを繰り返すのが好きなんだ。

ブレイクコア・ガイドブック

パブリブから出版した『ブレイクコア・ガイドブック 上巻』ではPassenger Of Shitのインタビューを収録しており、ヒッピーの家庭で育ったことやオーストラリアのブレイクコア・シーンとの関わり、楽曲製作についてやスピードコアへの想い、自身の表現に対する批判についてどう思っているのかなどを話してくれている。気になった方は是非手に取って読んでみて欲しい。


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