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ベラゴアルド年代記 -序

…さて、何から話そうかの。

 モレンドの要塞での攻防。妖精たちの小さな冒険。旅芸人たちの不可思議な旅。ガンガァクスの魔窟、魔兵と戦士達というのはどうかな?すべては竜の仔の物語に繫がる話じゃ。おお、そうじゃ、そうじゃ、これが良いじゃろう。小鬼と野を駆ける者の物語。この世界を知るには調度よい話じゃ。

 どの物語からでもよい。一度、覘いたほうが話は早かろう。少しはベラゴアルドの世界はわかるじゃろう。

…ストライダとは何者か?

…妖精、弱き者たちはどう生き抜いているのか?

…ガンガァクスの猛き物語なぞどうじゃ?

…もちろん悪しき魔法使いもおる。しかしそれに立ち向かう勇気もあろう。

…それともドラゴンと戦う話なぞ好みかの?



…しからば、地図から紐解くのはどうじゃ? ベラゴアルドの世界に入りやすくはならぬか?

…ベラゴアルドをある程度理解した者に向け、簡単な地図もあるぞ? どうじゃ? 竜の仔の冒険に胸を躍らせてはおるか?


こんな趣向もあるぞい。
一話完結か、あるいは短く区切った短編がほとんどじゃ。現在はこのマガズィンを随時更新中じゃ。短いので、気が向いたらどうじゃ?


それから、きゃらくたぁ名鑑なんてものもあるぞ!

代理の者の悪のりも多少あるが、ベラゴアルドを人物から知るには調度であろう。物語にも描かれておらぬ、種族などの細かい説明も書かれておる。
今は止まっておるがな、こちらも随時不定期で更新中じゃ。



 …おや、その様子では、さては信じておらんな。ただの空想だと?

 では、この世界が三度ほど、滅んだという歴史も、無論、知らんのじゃろうな…

 残念なことじゃ、想像こそが現実。想像こそが、世界であるというに。

 たとえばお前さん方は、世界はこのまま続くものだと思い込んでおる。
 現実はひとつだけだと。

 あるいは、
 自分は何者にもなれない。この狭い世界から逃げ出すことはできない。世界は欺瞞に充ちている。努力は報われない。夢は叶わない。世界は自分を受け入れない。

…そんなことを考えてはおらんかな?

 そうじゃ、その通りじゃよ。

 世界はお前さんが考えている通りじゃ。

 だがの、もし、お前さんがそうじゃないと、そんな世界は受け入れないと。僅かにでも、そんなふうに考えられる余地があり、もし、お前さんが、全ての可能性を受け入れる準備ができている、としたら、そう考える余地が少しでもあるとしたら、

…どうかの?

 試しにこのワシの話に少しだけ付き合ってはくれんかの?

 おや、おや、勘違いしちゃいけないよ。

 ワシがこれから語ることは真実じゃ。真実だからこそ、物語を彩る人物達はそれぞれ苦悩し、傷つき、裏切られ、打ちのめされていくじゃろう。

 もしかしたら、お前さん方の望むような、美しい女性も、可愛い女の子も、圧倒的な強さも、都合の良い能力や魔法すらも、この物語には登場せんかもしれん。

…ま、そりゃ、ちょっとはあるかもしれんがの。

 とにかく、そこには、この世界と同じように、無気力に苛まれる者がいて、不公平な体制があり、虐げられる人々がいるかもしれない。暴力があり、差別や偏見に苦しむ人々がいるかもしれない。

 それでも、そこにはこの世界と同じように、美しい原野があり、圧倒的な荒野が広がり、深い海が広がり、青く澄んだ空があり、そして、力の限り戦う英雄たちがいる。世界を狭め、身勝手な都合で貶め、傷つけ、踏みにじっていく、理不尽な存在の全てに向き合い、戦い続ける英雄たちがいる。

 どうかの?そんな物語が聞きたくはないかの?

 世界がここにしかないと?文明が人間だけのものだと?それこそ愚かだというものじゃ。

 ベラゴアルドは在る。確かに在るのじゃよ。おぬしが信じようと信じまいとな。

…わしの名はギー。歴史学者、魔法使い、占星学者、逆賊、裏切り者、他にも山ほどあった。名誉ある称号から、言われ無き汚名。語り尽くせぬほどの時を超え、数えきれぬほどの名があった。

 だが、ワシのことは何とでも呼ぶがよかろう。ワシのことなどどうでもいいのじゃよ。大事なのは物語じゃ。物語こそが魔法なのじゃよ・・

 わしの名はギー。ベラゴアルドの案内人。英雄たちの物語の語り部。

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