「遅いインターネット」書評
読み終わったので、整理がてら書評。
「遅いインターネット」 要点まとめ
人間は基本的な承認欲求を持っている。承認欲求は、事実よりも「信じたい情報」を追い求め、それ自身を強化するようにできている。
この承認欲求について、吉本隆明の言葉を借りると、
自己幻想:自分自身によって承認される(と思い込む)
対幻想:誰かに承認される(と思い込む)
共同幻想:共同体から承認される(と思い込む)
の3つに分類される。
SNSはこれらの幻想を強化・肥大化させる機能を持っている。
プロフィールは自己幻想を。
いいねやリツイートは対幻想を。
タイムラインは共同幻想を。
結果、SNSへの依存度を高め、人はフィルターバブルに閉じこもってしまう結果となる。
人間の「信じたい情報」をつい探してしまう特性は、フェイクニュースを簡単に呼び寄せてしまう。結果、フェイクニュースがフィルターバブルを強化することになるのだ。
フィルターバブル
インターネットで、利用者が好ましいと思う情報ばかりが選択的に提示されることにより、思想的に社会から孤立するさま
引用元:http://bit.ly/3atWTsW
フェイクニュース
事実ではない、虚偽・デタラメな内容の情報・報道の総称である。読み手が真に受けて(事実として受け取り)、ソーシャルメディアなどを通じて広く拡散され、時には世論を動かしたり社会的な混乱を招いたりすることもある。
引用元:http://bit.ly/2Tykgus
フィルターバブルは、容易に政治的ポピュリズムに結びつき、トランプやブレグジットを生むことになる。
インターネット時代の個人が、こうした幻想から自立するためには、スロージャーナリズムが必要だ。
加速化する情報に翻弄されず、ファクトに対して、時間をかけてオピニオンを精製するコミュニティを構築する必要がある。
SNSは今後日本にどういった影響を及ぼすか?
facebookやTwitter生みの国、米国で起こったSNS絡みの事件といえばこれ。
グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル
https://www.netflix.com/jp/title/80117542
facebookの(不正に入手した)ユーザリストを使って、英軍謹製のフェイクニュース制作テクニックを使えば、世論は操作できちゃうよという趣旨である。
facebookの普及率を確認すると、2017年時点で、ざっくり米国が77%、日本が30〜35%と言ったところ。
・国内のデータ
https://gaiax-socialmedialab.jp/post-30833/
・海外のデータ
https://blog.members.co.jp/article/27109
昨今の統一地方選挙や市長選挙を見ると、SNSに投下された投稿と選挙結果は必ずしも一致していない印象がある。
しかし、日本でも米国並の普及率に成長する余地はまだまだあって、netflixのドキュメンタリーが事実であるならば、今後米国と同じことなる可能性はある。