【後編】自身にも想像できない、hpnの変化。その根っこにある「野心」と「悪癖」
この人らと関わってなかったら行けなかった場所ばっかり
——そこからはサポートでというか、裏方で活動を。
そうですね。シンジプ、DEFROCKもやったし、吉田チキンのレコーディングとかも入ってました。
——『チェリーボーイズタイム』(ラジオ福島)ってあるじゃないですか。調べても調べても情報が出てこなくて。
うっそ。
——Twitter(X)が出てくるだけ。なかなか放送、結局聞くことができなくて。聞こうと思えば聞けたはずなんですけど。
全然あの、しょうもない感じですよ(笑)。
——(笑)そもそもチェリーボーイズが何なのかわかってない……というところからになっちゃうんですけど。
真琴果樹園に竹原ピストル氏がバイトに来るという。今メジャーに戻ってますけど、その前のところで。で、aveが来て、ターキンも入って。なんなら俺もシンジプ、当時は衰退羞恥心っていう名前で入ってて。ターキンのお宅のさくらんぼ畑で、お祭りというか感謝祭みたいなのがあって、ライブをしてほしいっていうことになって。その時に急遽作られたのがその5人で。持ち歌もなかったから、aveの『福の歌』と、なんだったかな、忘れたんだけど2曲ぐらいで演った。名前何にしようと。さくらんぼの時期だし、チェリーボーイズでいいんじゃないかみたいな、そんな安易な感じで始まったんですよね。ピストルくんもその当時、震災のときは福島で被災していて、そのときに福島でお世話に色々なったとかっていうところの気持ちもあったみたいで……本人談なんですけど。チャリティーの音源も、みんなで作って出して。
——なるほど。謎だった……と言ったら失礼なんですけど。
いえいえいえ。
——活動自体も拝見する機会がなかったんで。
全然。集まってタイミングが合えばみたいな感じなので。
——不定期というか。あとはサポートで基本的にずっと……。
あ、でもずっとでもなくて。THE FANというバンドにも入って、この間も(Flagmentに)出た高橋智也が……自分がTHE FANにベースで入ったんですけど、抜けて高橋智也が入って。自分はまた他のバンド作ってみたいな。biscoっていうバンド。数えだすとすごく……何個やってきたのかなと思って。まあなんなんですかね、じっとしてられないのか(笑)。
——TwitterのIDのbiscoってなんだろうと思ってたんですけど、そういうバンドがあったんですね。
ああ〜、そうです。それもちょっと年内復活予定で、7〜8年ぐらいちょっと眠らせたのを。
——おお〜。それ楽しみですね。
『Detour』って最初の音源に入ってる曲、ほぼ、biscoの曲なので。
——そうなんですね。
でもそんなに……活動期間は短かったかな。AREA559とか。最近復活したけど。
——あ、復活したんですか! えー。
前のエリアのときにちょこまかbiscoでライブをしてて。活動止まる最後のときはPEAK ACTIONだったけど。
——福島大学に行ってたんで、大体ってほどではないですけど、そこ(AREA559)に行くことが多くて。
話を聞くと、そういう学生だったとかっていう人もいるだろうから、思い出して行ったら懐かしめるんじゃないかと。
——嬉しいですね。
頑張ってます。
——サポートとか裏方のところから、ご自身のソロの方に舵を切っていく……というよりは、それもやってみようぐらいの感じだったのかなと思いますけど。他のミュージシャンを下支えする仕事って、その人の色に合わせたりとか、その人の持っているものを引き出すのが仕事になってくるようなイメージがあるんですけど、自分の名前で自分の曲を作るってなると、自分の色が必要になってくる。そこで身をもって違いを感じたところとかって、ありますか?
うん……でもそれは絶対にあることだし、サポートは、10あるとして本当は10出したいけど、10出すと渋滞するしぶつかるので、それを3とか4にする。で、3とか4の音を使う時も、どれを残すべきかとか、どれが頭に残って歌の邪魔をしないとかっていうこととか。自分でやる時は15ぐらい出して(笑)そこから引き算。コーラスとかハモリのパートとかいっぱい入れるんで、その場その場で思いついたら入れていくとかっていう感じでやってた。自分の音源だったら、割と容赦なく。ただやっぱりどうしても同じ人なので、ギターの癖とかはやっぱり出てしまうところは、昔はすごいそれが嫌だなと思ったりもしてたけど、それでもいいのかなって。
——逆にそれがフックというか、hpnさんらしさだと思って声をかける人もいるんじゃないですかね。
だとしたらありがたいですね。
——行った来たしてあれになっちゃうんですけど、他の人の活動のサポートをしてて、印象に残ってるシーンとかって?
まず、aveの初サポート、一番最初の現場が競馬場だった(笑)。バンドとかやってて、競馬場でライブってそんなに、当時まだ全然なかったと思うんです。で、焦るっていうのと、それがサポートで一番びっくりしたことが、「ライブ会場が競馬場?」っていうところで驚いたのと(笑)。
あとは、シンジプでは本当に、いろんなところに連れて行ってもらって、いろんな人と会って。たまに、絶滅危惧種みたいな……(笑)まだこんなすごい才能がいたのかっていう感じで、遭遇したりすると嬉しくなったりするんですよね。こんな、原石じゃないけど、表にそんなに出てきてなくて、まだこんなすごい才能の人いたんだっていうところで、各いろんな県でそういう人にお会いしたりすると、めっちゃテンション上がるし、ライブもね、勝手に敵視じゃないけど、負けないように演奏しなきゃなと。そういうのは、旅っていう感じでいうとシンジプ、めっちゃいろんなところに連れて行ってもらいました。
——行ってみないと、会えない人とか、匂えない雰囲気とかもありますよね。
本当に。その辺は本当にまこ(真琴)の人柄と人間力なんじゃないかって。すごい人だと思います。
あと、DEFROCKでもやらせてもらって。みんなファーマーズなんで、自分とこの畑をやりながら活動をしてるので、期間こそ短かったんですけど、めっちゃ面白かった。どういうバッテリーで動いてるんだろうって思って(笑)。ターキンは多分3人はいるって思って(笑)。
——(笑)影武者的に。
絶対3人はいる。昨日の夜東京にいて、次の日の朝もう畑にいるとかね。
——パワフルだなぁ。
パワフル……とかじゃなくて、たぶんあと2人いるんで(笑)勝手にそう思っているだけだけど。
——(笑)本当に、そのサポート経験はじゃあ濃密でしたね。
まあ、比べたこともないからなんともわからないけど、自分的にはすごく、この人らと関わってなかったら行けなかった場所ばっかり。
その時のその感覚で作った映画の1本1本みたいな感覚
——そういう人たちと絡んで芽生えたものが、個人の作品に反映されてるみたいなのもあったりします? 反映というか、影響を与えている。
感情とか気持ちみたいなところはありつつ、でも葛藤しつつ。この人のサポートしてきたからっていうところで、似た感じなのかっていうのとそうでもないっていう。意外とやんちゃな発想かもしれないですけど、そういうところは意外と、いい意味での裏切り感を持って、「おじさんはこういう音楽を作りたいと思っている」っていう。なんでしょうね……野心? 映画見てるような……アトラクションというか。昔の映画って見ててすげえびっくりしたりとか、ワクワクとかっていうのがすごいあって。映画も好きなので。蓋を開けたらどんな曲になってんだろうっていう、驚かせたいというか、もうちょっと頭開いて面白いこと作ろうと。福島発で、ちょっと一人、こんな変なおじさんがいてもいいんじゃないのかなって、変な発想があってもいいんじゃないのかなって思ったりしてます。
——本当にその発想とか、出てくる作品に、共鳴してふっしーみたいな人たちが集まってくるっていうのがいいなと。
そう。だからなんかそれは、どこで誰にヒットするかわからないっていうのがあって。でもその、木島お兄ちゃんのとか、ふっしーとかは、さっきも言ったけど、そちらからの声掛けだったので、それが一番嬉しいし、そういうの最高です。音楽やっててよかったと思う瞬間でしたね。たまに、またタイミングが合えばまた(ふっしー)お借りするかもしれない。
——いやあ、個人的にも見てみたいです。今、少しそれっぽいお話をいただいてしまったかもしれないですけど……曲を作るときに……なんと言うか、すごくありきたりな質問として、大事にしていることとか意識していることっていう質問があったりするじゃないですか。それを聞くこと自体が正解かどうかというのを今考えてたんですが。
いやあ全然。大事にしていること……でも意外とそんなにないんですよね。メロディーが思いついたら、もう生まれたので。でも何でもかんでも残すっていうわけじゃなくて、どうしても鼻歌歌ってて、なんか聞いたことあるなとか、なんか知ってるなとか、っていうのはなるべく削って。あ、1コードで、メロディーを3つも4つも出せるようにしたい。例えば、C、Dでもいいです、Aでもいいんだけど、コード一つで、自分からどんだけメロディーが出てくるかなっていう、心がけとしてはそこかもしれない。
——バリエーション的な。
割とワンコードで出てくるメロディーって、意外と少ないんじゃないかなって思う。岡村ちゃんって多分そういうところがあると思う。コード一つに対してメロディーがどれだけ出てくるかっていうのを、無茶ない程度に、わざとらしくない感じで、作りたい、です(笑)。これがこだわりと言っていいのか、でもそういうのはうっすらと意識はあるかも。
——これを、ここ数年でアウトプットしようになってきたのは、なぜなのか……今まで活動期間は長くあったじゃないですか。biscoとかのご自分の活動を挟みつつ、今ぐらいしっかりめにアウトプットされてることって、今までもありました?
ないですね。でもコロナだと思いますよ。
——なるほど! なるほど。
コロナになって、人と極端に会わなくなって。言葉はあれかもしれないけど、落っこってくか、震い立たせるか、どっちかだったんじゃないかなっていう風には思う。でも多分どっちもあった。落っこって、落っこったままだとしても、這い上がれるのも、助けてくれる声もあるかもしれないけど這い上がるのは自分ではあるし、やらないまま「ああこうしておけばよかったな」っていうのは、極力そういう感じにはなりたくない。でもコロナ、本当ににっくきコロナではあるんだけど、でもきっかけとしてはコロナがあったからこそ、今のこういう感じになれたのかなと思う。
——欲圧がバネになって。
出してみないとわからない。だから先、意外と適当な感じになってしまうかもしれないけど、出してしまって、どういう風に変わっていくか、自分でも分からないし。まずぶち当たったら、その時にちょっと考えてみる。
——さっきおっしゃってたみたいに、アコギに留まらない何かをツールにするかもしれない。
なんかバックつけて、ハンドマイクで歌ってるかもしれない。全然自分の中でイメージできないけど。でも意外とそんなの、みんなも想像を一番できないと思うから、観てる人。誰が望んでるのかもよくわかんないけど(笑)でも「なんだ、どうした」っていうのがあってもいいんじゃないのかも。
——まさにそれこそ自分で出してみないと、わからない部分ですね。それを踏まえて現在、今は2枚の盤を作られていて、1枚は前のバンドの曲のものもありましたけど、自分の曲として出てきた曲が今、結構曲数いっぱいあると思うんですけど、それを眺めてみてどう思いますか?
その時のその感覚で作った映画の1本1本みたいな感覚というか。最初に出した『Detour』は、変な歌詞も多いし、展開も……『ghost』っていう曲があって。眠れなくて目を覚ましたら、目の前に亡くなったはずの友達が立っているとか、オカルト好きがどうしてもそういうところに出てしまったのか。新しいストーリーの聞き方とかいう感じにならないかなと思って。BUMP OF CHICKENとかでも結構そういうのがあるじゃないですか。語り的な。『K』とか、そういう感じとかではないけど、何でしょうね、その時のそういう展開が好きだったんだなと思って。子供のように見たり、わあ恥ずかしいな〜とかって思ったり。でも、自分から出たものなんで、好きです。
——アルバム見返してるような気がする。
あ〜そうですね。何年も時間が経っていってから、自分たちの音源を聞き返すと、絶対そういう感覚になると思う。
——うん。俺ですらありますもんね。
本当に。あると思う。
——でも、この時に比べたらこういうことできるようになったしなあ、とかもあれば、この時と今の自分は違うけど、この気持ちもわかるみたいなのもありますしね。
うんうん。葛藤というか、なんか器用になりたい自分と、でもそれを求めてっていうか、そこまでならなくてもいいんじゃないかみたいな。なんかもっと隙があった方がいいとか、余計なことまで考えてたりもするし……不時着(笑)。
——それがどう帰着するかでまた曲が、こういう曲もできるし、こういう曲もできるしっていう。
そんなに意外と、そこまで思い入れがなかった曲でも、意外とすごい愛着を持てるようになったりとかいう場合もあるので、現時点でわかったようなことをそんなに言えないかもしれないけど、安易に自分の思った感じと違うことになるんだなっていうこともあるので、この辺は不思議なものですね。
——ひとから感想を聞いて、なんか、この曲がこんなに好かれてるんだみたいなことがありますよね。
あ、ある。本当に。
——「そっち?(笑)」みたいな。あったりします。
バンドマンはだいたい『兵隊さん』好きだって言ってくれる。嬉しいです。
関わりをちゃんと持って、丁寧に大事にしたいなと
——もし大きな聞きそびれがなければ、まとめに向かっていきたいなと思っています。
全然……大丈夫ですかね。MVのことも言いましたしね。MV……イラストレーターさんも入ってくれたんですよ。玉坂(涼太)くんの知り合いで、米倉幸花さん。MVの中にこう、チョッチョッって現れる、表情のない……『君は誰?そばにいるの?』だけどなんか、勝手に繋がってるみたいな。意識体なのか、何なのか、誰かなのか自分なのかみたいなところの演出的な感じで、その絵が入ってくる。ので、観てやってくださいぜひ。よろしくお願いします。
——TripDaysのさとうしょうのインタビューをこの間したんですけど、彼もものを作る人間で、基本的に全部自分で作りたい。自分のアイデアを自分で完成させて作りたいタイプの人間だったけど、最近は色々人と違う脳みそを掛け合わせて何かを作ることの楽しさを知ったというようなことを言ってて。アパレルをふっしーとやってるのもその一つだったと。(hpnさんも)それと似たようなものを感じられたのかなと。
ああ、でもまさにそれです。
——アー写とか多分ご自身で作ってるじゃないですか。だからご自身でできるんだろうなと思ってたし、やるんだろうなと思ってたんですけど。
でも今回ので、一言で言えないかもしれないけど、人にこう映ってるのかとか、どういうふうに映ってるのかなっていうのは、他人の目線で。撮ってる方も「自分のイメージのhpnさんってこういう感じ」「なんとなくこういう表情を」みたいなのを注文受けて。でもなんかふざけたくなっちゃう(笑)それが悪い癖。でもすごくいい経験もしたし、また違う曲でもやってみたいし。その前に新しいのも作りたいなって思います。
——楽しみですね。ちょっとそれに紐づけてではないんですけど、これからのこと、こういうふうに動いていきたいだとか、こういう作品作りを今度はしてみたいとか、今の時点で言えることがあれば。
前回の『あはひ』は、その前もですけど、全部本当に一人で録ったんですよね。もう時間も限られてる中だから、もう致し方ない、自分ができる範囲で全部自分でできることを詰め込んでやったんですけど。もし次作るんであれば、さっきの話じゃないけど、人を入れてやってみるとか、自分から出てきたけど、この人に頼んだらどういうアプローチで出てくるんだろうかみたいなのは、むしろそこを楽しめるような感じに自分を持っていきたいっていう、関わりをちゃんと持って、丁寧に大事にしたいなと。
——自分のモードもありますもんね。
そうなんですよね。
——適したモードであればいいですよね。
なんかすごく、言葉正しいか分からないけど、誰でもいいとかっていうわけでもないじゃないですか。ちゃんと把握してもらって、それなりのアプローチができるタイプの方。まだ全然ノープランですけど、いい人を見つけてできたらいいなと思っているのと。あと、目の前に置かれた、誘っていただいた現場を大事にするのと、あと時間経つにつれてだらけていかないように。また突拍子もないことを、まだはっきりは分からないけど、野心みたいなのはまだ全然あるので、ちょっとおじさん、本気でふざけたいですね(笑)。
——(笑)めっちゃいいと思います。……一通りこんな感じなんですけど(笑)言ってないことなどなどなければ。
ほぼほぼ、話せたと思われます。
——じゃあ、以上になります。
はい、ありがとうございます。
——ありがとうございました。お世話になりました。またぜし。
ぜし! お願いします。