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「デット・エクイティ・スワップ(DES)の活用」CFOが語るシリーズ Vol.1


デット・エクイティ・スワップとは

ベンチャー企業の資金調達の手法として、ベンチャーキャピタルなどからのエクイティファイナンスによる調達や金融機関からのデットファイナンスなどもありますが、最近ではベンチャーデッドといわれるエクイティとデットをミックスした資金調達手段も、近年注目を集めています。

今回は上記の資金調達と合わせて特に有事の際に選択肢として検討しておきたい、デット・エクイティ・スワップによる資金調達について、お伺いしました。

そもそもデット・エクイティ・スワップとは?というところからお伺いしても良いですか?

はい、デット・エクイティ・スワップ(以下DES)とは、デット(債務、主には借入金)とエクイティ(=株式)をスワップ(=交換)することをいいます。

一般的なユースケースとしては、金融機関が経営不振の取引先を支援する目的で使われます。

DESを利用することによって、金融機関等からの借入金が株式に転換されます。そうすると借入金がなくなり、資本金などに代わるため、借入金の返済負担が軽減されるとともに、借入金に対する利息の支払などのキャッシュアウトを抑制できます。債務超過が解消出来たり、資本が厚くなることで、金融機関にとっては、財務格付の改善につながり、融資などの支援が行いやすくなったりといったメリットがあります。

ベンチャー企業におけるデットエクイティスワップの活用とはどういうことでしょうか?

実はあらかじめ検討していたというより、たまたまDESになった部分も多いのですが、私の場合はシリーズDくらいのレイターで予定していた資金調達が延期となったことにより、ランウェイが2-3か月あるかないかという状況になってしまったのがきっかけです。

そもそも財務的には赤字かつ債務超過の状況で、一般的な銀行などからの借入については黒字化の目途が立ってからなどとやんわり断られる状況で調達難易度が高く、基本的にはエクイティによる資金調達がメインという状況でした。予定していた調達が延期になり、新たにエクイティによる資金調達をするべく投資家アプローチを開始しましたが、クロージングまで早くて3か月はかかりそうでした。

そんな中で、ご紹介を受けた資産家の中小企業のオーナーに資金調達の相談したところ、資金面の支援いただけるという方向性は一度の面談で決まったのですが、エクイティによる調達は、まだ投資家との本格的なDDが始まっておらず、発行条件、特にValuationについては、ダウンラウンドも検討していたこともありすり合わせが出来ていませんでした。

そこで、ランウェイの問題なども考慮して、先に借入として資金調達をしておき、条件が固まり、エクイティ調達が実行されるタイミングでデットから株式に転換するということで交渉し、先方の合意をいただくことが出来ました。

「Valuationなども含めたエクイティ調達の条件が固まっていない段階」で、ランウェイの都合上、資金調達を行いたいときにデット・エクイティ・スワップが活用できるケースがあるということですね?

はい、そのとおりです。その時は初回の相談から、借入実行まで1か月以内で実行することができました。

エクイティによる資金調達の場合、投資家との条件交渉と合わせて、取締役会や株主総会などでの決議、投資契約に関する双方の弁護士チェックや既存株主との権利関係の調整など、方向性が決まってからも手続き面でも時間がかかりますが、DESの場合、先行するデットによる資金調達は基本的には金銭消費貸借契約をベースにして条件を作るので、契約書のレビューなども比較的軽量で済みますし、株式発行の場合に必要となることが多い、株主総会手続きをせず取締役会の決議のみで意思決定出来たのでクロージングまでのスピード感はエクイティよりも相当早くすることができました。そしてランウェイに多少余力が出来た状態でエクイティ投資家との交渉を行い、エクイティ調達のタイミングで借入を株式に転換していただきました。

DESによる資金調達のポイント

DESによる資金調達のポイントとなることはありますか?

ポイントとしては以下2点が大きいと思います。

  1. デット・エクイティ・スワップにて支援してくださる「投資家を探す」こと

  2. 先行するデットの条件を投資家側に「メリットがある設計にする」こと

やはりそもそもDESを受けてくださる「投資家を探す」という部分が一番大きなハードルになると思います。過去2社でDESを実行したことがありますが、実はいずれも直接お知り合いの方ではなく、いずれも紹介経由での面談させていただいた投資家から支援いただきました。投資家は企業のオーナーの方で、自分も企業経営の中で、資金面で苦労したこともあるのでサポートしたいということでした。あくまで経験の話ですがDESを引き受けてくださるのは個人投資家、中小企業のオーナー等のケースが多い印象です。

「メリットがある設計」についてですが、正解はないと思うのであくまで参考程度になりますが「金利」「株式転換時のインセンティブ」の両方でメリットがある設計にしました。

エクイティ調達が交渉中という状況の中で必ず資金調達ができるという保証がない中で先行して支援するというのは相当リスクもあると客観的に思いますし、相応のリターンを見込める条件設定することが必要と思います。

ベンチャーデットで見られるような銀行の借入などに比べてメリットのある金利、借入を株式に転換する際に、同ラウンドの株価に対して転換価額をディスカウントする、もしくは転換価額を変えずに、株式転換する金額×X%の新株予約権を発行し、実質ディスカウントした状態に近いとしてエクイティ投資としてもメリットのある条件としました。

イメージ的にはJ-KISSなどによる新株予約権による調達に近いイメージかもしれませんが、エクイティに転換されるまでの期間、借入として金利が発生する点や発行手続きなどが異なると思います。

<DES発行概要(例)>

補足になりますが、結果的にDESの借入満額を株式転換された投資家いらっしゃいましたが、株式転換せずに単純に期日に全額返済した投資家もいらっしゃいました。その他1億円の半額5000万円は株式転換、残り5000万円は期日に返済などMIXした状態になったこともあります。

DESを使うべきタイミングやベンチャーデットとの違いは?

シリーズDのタイミングでDESをされたとお伺いしましたが、活用のステージ感についてはどのようなお考えでしょうか?

そうですね。まず活用のステージ感についてですがシードあたりからレイターくらいまで幅広いステージで活用できるのではないかと思っていて、シチュエーションとして、エクイティ調達までの繋ぎの資金調達をクイックに実行する必要があるときに、J-KISSやベンチャーデットなどとあわせて選択肢として検討できるのではないかと思います。

当時はFlexCapitalのベンチャーデットなどは同時に検討されましたか?

また当時はベンチャーデットのプレイヤーがほとんどおらず、唯一といって良いようなデッドファンドにも相談しましたが、売掛債権を担保提供する必要がああったため、既存の銀行さんなどにも了解を得る必要があったのですが、既存の銀行から了解が得られず断念したと記憶してます。

いま仮に同じ状態になったとしたら、ベンチャーデットの選択肢は一番最初に検討すると思います。FlexCapitalさんなどはクイックに検討進めてくれますし、最小限のリソースでチャレンジできるのは非常にありがたいですね。また同時並行で意思決定の早そうなVCなどにJ-KISSを打診、またそれでもうまくいかない場合に備えて、中小企業オーナーなどにDESの相談も進めるみたいな形で対応進めるのではないかなと思います。とはいえDESは選択肢としては確保しておきますが、DESはあくまで奥の手の選択肢というか、積極的に使う選択肢ではないかなとは思います。  

アーリー、ミドルステージのCEOやCFOにメッセージあればお願いします。

今回Flex Capitalのベンチャーデットも利用させて頂いたご縁で、この記事を書かせていただいています。ベンチャー企業のファイナンスを約10年経験してきて、自分自身、資金調達にはとても苦労してきましたし、今も調達活動中をしており、やはり簡単ではないなと日々感じています。

これまでベンチャーにおける資金調達といえば、エクイティ調達がメインの手段でしたが、ベンチャーデットや今回ご紹介したDESなど、変化する事業環境にあわせて複数のプランを検討しておき、その時々で最適なプランを実行することが重要だと思います。

Sさん、第1回のご登場ありがとうございました!今後ともぜひ様々なトピックについてお伺いできればと思います!

いかがでしたでしょうか?
今後もCFO経験者が語るシリーズとして、経営者・CFOにとって役立つコンテンツを提供していきます。

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