5月は、芍薬の旬の時期。
毎年この時期が楽しみで、今年は5種類の芍薬を家に迎え、蕾から開花、散り姿まで楽しませてもらった。
芍薬は、豪華で優美な花。
花姿だけではなく、香りもいい。
フランスでは爽やかな香りのするワインを例えるときに用いられるほど品がある。
開花すると一気に芳香し、その甘い香りに癒される。
固い蕾がゆっくりゆっくり膨らんで、ようやく開き始める花。
その後大きく満開になると、美しい姿のまま、潔く散ってしまう。
バサッと音を立てて落ちる花びら。
どちらかというと、散るというより崩れていくような感じ。
その終わりはあまりにもあっけない。
その姿に、私はいつも「美人薄命」の言葉が頭に浮かぶ。
女性として美しく輝いた人ほど、美しい姿のままで短い生涯を終える、という意味の言葉。
心を惹きつける艶やかさは、花にも人にもある。
その運命もまた似ているのかと思うと、不思議な気持ちになる。
唯一無二の美しさと力強さを、常に惜しみなく発揮しているからこそ、たとえ短い生涯だったとしても、人の心に残り続ける。
儚さが、より一層美しさを際立たせるのかもしれない。
昔から、美人を表すのに用いられることわざ、
『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』がある。
芍薬は、すらりとした立ち姿が美しい人の例え。
人の立ち居振る舞いに表現されるほど、芍薬は美しい花の象徴であったことがわかる。
そして、この言葉の中の3つの花、芍薬、牡丹、百合は、どれも女性の不調に効果的とされる生薬になる花でもある。
古代から芍薬は、根を薬用として用いられ、現代でも漢方では重要な生薬とされている。
(牡丹は根の皮、百合は球根)
中国では紀元前300年代頃に生薬として利用され始め、日本には平安時代までに薬草として渡来。
その後観賞用としても広まり、江戸時代には多数の品種が作られるようになった。
今では、牡丹との交配品種で、二つの花のいいところを掛け合わせた新しい芍薬「ハイブリッドシャクヤク」も誕生し、これからの新品種がますます楽しみでもある。
ちなみに、芍薬の属名「Peaonia(ペオニア)」や英名「Peony(ピオニー)」は、ギリシャ神話の医神Peaon(ペオン)が、オリンポス山にある植物(芍薬)の根で、女神の陣痛を和らげたり、負傷した国王を治療したことに由来している。
つまり、芍薬は古代ギリシャの時代から、女性を癒し、人々を救い、親しまれてきたことがわかる。
長い長い歴史の中で、様々な形で愛され続けてきた芍薬。
その美しさの裏に、人々が大切にしてきた理由があることを知ることで、魅力を更に感じることができる。
気品、気高さ、奥ゆかしさ、儚さをすべて併せ持つ花。
確かな存在感を残し、散り際まで美しくある花。
芍薬はまだしばらく花屋で見かけることができるので、その魅力をぜひ確認してみては。
6月半ばまでは楽しめるので、私もまだまだ堪能したいところ。
旬の花からパワーをもらって、日々を楽しく元気に過ごしていこう!