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Quest4の性能と今後のヘッドセットの買い替え戦略を雑に考察する
今のVR業界を牽引しているのは間違いなくMetaである。
社名変更もそうだが、なにしろメタバースへの投資が100億ドル(1兆円以上)という気が狂ったような金額なので、当然といえば当然。
XRの技術開発はもちろん、製品(コンシューマ向けのヘッドセット)で見ても、局所的にはともかく大局的にはMetaが最優なのは疑いないだろう(コストパフォーマンスまで含めて見れば、だが。もちろんより高価格でより高性能なものはLighthouse系を含めて存在する)。
「局所的に」というのは、Metaは製品戦略的に3年ごとに新型HMDを出すことにしていて、その狭間では他社が先んじることがあるためだ。
例えばQuestの競合であるPico4は2022/10に次世代光学系であるパンケーキレンズをMetaに先駆けて採用し発売されたが、これは2020/10登場のQuest2と、2023/10登場のQuest3の間の3年間に登場したため。
まあこれは同じような部品を組み合わせて作るスマホのような電気製品の事情と、製品ライフサイクルを考えたら当たり前の話である。
ただ「(ソフトウェアやコスパを含めた総合的な完成度で)発売時点のMetaのヘッドセットが他に劣ることはまずない」ということは概ね疑いないだろう。
なので自分は、現在のQuestと次期のQuestの性能をベンチマークにHMDの買い替えを考えるのが合理的だと思っている。
そこで今回、少し気が早いが次世代モデルQuest4の性能を予測して、これと比較しながら今後どんなヘッドセットなら買い/我慢なのか?を考えてみようと思う。
■MetaのHMDロードマップ
ではここで、MetaのVRヘッドセットの製品ロードマップを見てみよう。
次世代機Quest 4、その廉価版(仮にQuest 4Sとする)が2026頃とされている。
普及機:Quest2(2020年)⇒Quest3(2023年)⇒Quest4(2026年)
廉価機:Quest2(2023年に価格改定)⇒Quest 3S(2024年)⇒Quest 4S?(2026年)
ハイエンド:Quest Pro(2022年)⇒ Quest Pro2(2024年、中止)⇒ Quest Pro2(La Jolla: 2027年)
が、先日Quest Pro2とされていたコードネームLa Jollaのキャンセルと、代わってコードネームPuffinと呼ばれる超軽量モデルの話が出てきた。本体とバッテリバックなどを分離して、頭部にに装着するデバイスを110gまで軽量化するらしい。
ハイエンドモデル(Quest Proの後継機)の2度に渡る製品化キャンセル、そして軽量化という別路線への転換を見るに、Metaは従来の延長上にあるハイエンドモデルはナシと判断したのだと思う。
これは鳴り物入りで登場したApple Visionへの世間の反応も一因だろう。
おそらくMetaはこう考えている。VR-HMDは既に機能的に十分な所まできている。今必要なのはQuest ProやApple Visionのような「全部乗せ」ではなく、引き算の発想による使い勝手の改善と用途の拡大だ。
そういう意味ではApple Visionよりも、PC向けの仮想モニタと割り切って軽量小型化し装着性を高めたImmersed Visorの方が「正解」に近く、Metaの目指す10億人のメタバースも多分その方向性が合っていて、だからこそ「全部入り」のLa Jollaではなく軽量全振りのPuffinということなのだろう。
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Metaはゲーム機を作りたいのではない。あくまでメタバースに人を呼び込み経済圏を作れるデバイスを作りたい。
自分たちゲーマーやVRChatterは言ってみればMetaと同床異夢、たまたまお互いが欲しいものが一時的に合致したにすぎない。MetaがフルトラやLighthouseなどに一切興味を示さず、PC接続専用のHMDをまったく出さないのはその傍証だ。
(なのでPicoがPico4 Ultraで足トラッカーを出してきたが、Metaがこれに追従することは絶対ないと思う)
と、この辺りを前提に、2026年に来るであろうQuest4のスペックやらを予想してみる。
■Quest4の性能を予測する
VRヘッドセットの最近の競争軸はだいたいこんな感じである。Quest4のスペックを考えるため、各項目に分けて予測してみる。
①新世代のチップセットによる処理能力(+画質)向上
②光学系、バッテリ配置などのハードウェア設計
③小型化、軽量化
④カメラパススルー、深度センサ、顔トラ、アイトラなどのセンサ系
⑤MR、ハンドトラッキングなどのソフト的機能拡充
①新世代のチップセット
これは最新のSnapdragon XR2+ Gen2の次世代チップセットと考えていいだろう。QualcomもMetaの製品開発と歩調を合わせてくるのが自然だろう。
現状XR2+ Gen2は片目4.3kの解像度(=4300x4300:Quest3は2064x2208)が90fpsで描画できるスペックらしい。すげーな。
Quest3はこの一世代前、XR2 Gen2で、最大3kのところを2.2kの解像度に抑えている。電力消費や他の処理、そして高解像度液晶パネルの調達コストを考えての選択だろう。
仮にXR2 Gen2→XR2+ Gen2の上がり幅を見るに、XR3(仮称)が5.2kくらいの解像度までいけるスペックでもおかしくない。とすると、だいたい片目3.6kくらいは意外と現実的かも。
計算上、光学系がQuest3と同じならこれで40PPDほどになる計算で、これはフルHDの27インチ液晶モニタの解像度に相当する。実用上、一つ「山」を超える数字だと考えると、Metaがここまで冒険する可能性はあると見ている(ちなみにVision Proは解像度3800x3000で34PPD。2年遅れてのQuest4がVision Pro以下の解像度に甘んじるとは思えないので、最低でも3kの解像度は確保してくるだろう)
また廉価版のQuest4Sだが、Quest3Sの液晶パネルがおそらくQuest2のからの流用(解像度が同じ)なのを考えると、Quest4SもQuest3から液晶パネルを流用すると推測される。つまりQuest4Sの解像度は2064x2208となる。
札束でひっぱたいて最新モデル向けの液晶を作らせ、減価償却が済んだら次期廉価モデルで安価な部品として使い回す。理にかなったやり方に思える。
②光学系、バッテリ配置などのハードウェア設計
③軽量化、小型化
ここは現状、次世代の要素が見えず、少なくともQuest2⇒Quest3でフレネルレンズ⇒パンケーキレンズに並ぶようなトピックは見当たらない。Quest4はQuest3の光学系の小改良、もしくは丸ごと流用でも驚かない。
低価格&スタンドアロン(バッテリ内蔵)という前提だとQuest3の設計はほぼ現状の最適解だと思われるし、またハイエンドモデルとなるPuffinのキモがハードウェアの分離による劇的な軽量化である以上、差別化の観点からもQuest2/Quest3の系譜から大胆な変更があるとは考えづらい。
つまりQuest4は形状・重量ともQuest3から大きく変わらないと考えるのが自然だろう。Quest4SにいたってはQuest3の形状ほぼそのままになるだろう(いくら廉価版でもQuest2のフレネルレンズはさすがにないだろうし、Quest3のフォームファクターを引き継ぐはず)
④カメラパススルー、深度センサ、顔トラ、アイトラなどのセンサ系
Quest Pro⇒Quest3で省かれた顔トラ・アイトラはMetaが「これはメタバースには必要じゃない」と判断したと考えてよく、復活はないだろう。
Quest3のウリだったMR機能は引き続き維持されるはずなので、RGBカメラや深度センサは続投、高画質化するだろう。チップセットの性能向上に伴い現状のカラーパススルー18PPD相当から30PPDくらいまでは上がると思われる。
そして予想だが、センサーは増えると思う。特にVision Proにも搭載されていたLiDARセンサ。後述するが、Quest4のウリはハンドトラッキングによる操作系の革新になると予想している。そのため、Quest3で搭載された深度センサ(IRラインプロジェクタ)ではなく、より精度の高いLiDARセンサを採用してくるのではないか。
ただLiDARが乗るならQuest3の4個+RGBカメラ2個からカメラは増えないと思う。最小限のセンサを高度なソフトウェアの推論処理で補うのこそ、高いソフトウェア技術力を持つMetaのやり方だろう。
当然、Quest4Sではここはまるっとオミットされてコストダウンポイントとなるだろう。
⑤MR、ハンドトラッキングなどのソフト的機能拡充
おそらくQuest4のキモになるのはこの部分。Quest3からハード的な進化が液晶の高解像度化くらいである分、ここが注力点になるのではないか。
最も強化されると考えるのが、ハンドトラッキングによる操作インターフェイス。昨今のQuest3のソフトアップデートの目玉だったが、この開発で得られたノウハウをQuest4で再構築し、新たな操作系を提案してくるのはありえる流れだと思う。
特にハイエンドモデルのPuffinがコントローラーレスな操作系とされているので、その前哨戦としてQuest4の時点である程度実用レベルに仕上げてくるはず。既存のゲームなどとの互換性のためコントローラーは依然付属するだろうが、基本操作はコントローラー不要になるのではないか。
(とすると、ハンドトラッキング併用前提のコントローラーの小型化・機能縮小という形で変化が起こるかもしれない。例えばハンドトラッキングを妨げない指輪型のコントローラーなど)
そのために必要となる深度センサの性能向上は、Quest3で導入されたMR機能を一段上に引き上げるはず。眼の前のオブジェクトをスキャンする能力はあがるだろうし、より正確なキーボードの認識や、現実のオブジェクトの取り込みなどが強化されると思う。
他、MetaがAIへの投資を強化していることを考えると、操作系を補うのにAI技術がインテグレートされる可能性も高い。例えば音声入力やボイスコントロール、自然言語による対話的操作などが候補だろう。
Quest4Sはこうした先進機能を省き、あくまでコントローラー前提のVR専用機(つまりQuest3のチップセット進化版:Quest2→Quest3Sと同じ)にとどまるという予想だ。
Quest4 予想スペック
・解像度:片目3365x3600(片目3.6k:40PPD)
・チップセット:Snapdragon XR3(仮)
・センサ:カメラx4、RGBカメラx2、LiDARセンサ
・重量:500g
・光学系:パンケーキレンズ
・操作系:ハンドトラッキング+指輪型コントローラー(補助)
・トラッキング:インサイドアウト(Lighthouse非対応。カメラによる簡易ボディトラッキング(IOBT)は強化)
(正直解像度に関してはホントか?って自分でも眉に唾つけて見たくなる数字だが、2024/8現在でもPimax Crystalが2.9k、Varjo XR-4が3.8kを実現しているので、2年後なら無茶ではない。ハズ。よしんばXR2+ Gen2を使うとしても最低3kまでは上げてくるはず)
要するに:
10万円以下で買えるコントローラー付Apple Vision Proじゃないこれ??
■そしてヘッドセットの買い替え戦略
さて、こんなHMDが2026年10月に10万円以下で登場すると仮定した場合、はたしてHMDをどう買い替えていくのがいいのか?
スペック的には、総合的に見てQuest4がベストバイになるのは確実だ。冒頭に書いた通り「(ソフトウェアやコスパを含めた総合的な完成度で)発売時点のMetaのヘッドセットが他に劣ることはまずない」。もしVRChatを操作するのにハンドトラッキングでも十分というレベルになっていれば、かなり面白いだろう。
なので、もしQuest4を待てる&スペックに不満がないなら、それまでの2年間をつなげるHMDを買ってのんびり待つのが最適解となる。
裏を返せば、これのどこが不満か?を考えれば、買うべきヘッドセットが自ずと見えてくる。
現状、VRChatterやゲーマーのヘッドセット買い替えのモチベーションは「解像度」「拡張性」「軽さ」だろう。
解像度はやや不確実性の高い部分だし、しかも現状この(半信半疑の)解像度を超えるHMDはバカ高いVarjoしかないので除外。
現実問題、3K超となるとスマホの解像度はとうに超えてるわけで、こんな化け物みたいなディスプレイが出るとしたらMetaが札束でメーカーをひっぱたくしかないと思うから、Quest4が(複数パネルを搭載したVarjoみたいな例外を除いて)最高画質のHMDになる可能性は割とあると思う。
拡張性については、当然Lighthouse系のヘッドセットが強い…が昨今はQuestの周辺機器も充実してきたし、QuestをLighthouse系に強引に組み合わせることもできる(無線フルトラの常套手段)。新規にベースステーションを買ってでも乗り換えるか?というと少し厳しい気がする。
ただし先日登場したPico4 Ultraは、性能こそQuest3へのキャッチアップにとどまるが、専用オプションとしてIMU/光学式ハイブリッドの独自トラッカーが準備されており、ちょうどQuest系とLighthouse系の間のニッチに滑り込んだ。モーショントラッカーだけほしい!というなら選択肢に入るだろう。
非Quest系の活路は、Questが合理性ゆえに捨て去ったこういうユニークな専用周辺機器にあるのかもしれない(依然ニッチな商売には変わりないが)。
すると残る「軽さ」こそがQuest系を待っても手に入らない唯一のものとなる。これはバッテリ内臓のスタンドアロン型の宿命的な欠陥で、ザッカーバーグの心が折れない限り、Metaがこれを諦めることは多分ない。つまり軽いHMDが欲しい人こそ積極的に買い替えを検討すべき、といえる。
そうなると本命は、片目2.56kの高画質で127gという脅威の軽さを誇るBigscreen Beyond。またShitallが開発中で、同じく2.56kで200gと予告されているMeganex Superlightも魅力的。ただしどちらもLighthouse環境が前提で、ベースステーションを持っていないとややハードルが高いのが難点。
他方、冒頭に紹介したImmersed Visorはインサイドアウト方式で、上二者と違いベースステーションが不要なのが魅力的だが、SteamVR対応か不明なのが難点。
インサイドアウトかつバッテリーレスのHMDは…あとは迷作機のVIVE Flowくらいだがまあ論外。SteamVRも非対応だし。正直選択肢は少ない。
もっとも、軽さをいうなら今回情報が出た超軽量HMD Puffin(これももれなくスタンドアロン型だろう)が気になるが、コントローラーなしで発売は3年後、しかも未確定情報ということでここは一旦忘れておこう。
やはり「軽さ」以外でQuestに対抗するのは中々大変そうだ。が、Quest4が登場するのは最低でも2年後。それまでの間VRを遊び尽くす時間は、お金では買えない価値だ。あらゆる要素と比べても「今すぐ買える」以上に重要なことはない。
財布に十分な余裕があるなら、まだ見ぬQuest4を横目で見つつ、「今すぐ買える」HMDの価値を享受するのがいいと思うし、さらにニーズとして「軽さ」が大きなウェイトを占めるなら、ぜひ買うべきというのが結論だ。
ただしこの記事を書いたのは、そうした目先の「欲しい」につられて買い物をして、Quest4が出た時に「もうちょっと我慢すればよかった…」とならなぬよう(主に自分を)戒めるためである。
2年後にはこんなスペックのHMDが発売されるかもしれない。そう思った時、はたして自分にとって最適な「賢い買い物」の仕方はなんなのか?この怪文書が少しでもその参考になったなら幸いだ。
■終わりに
HMDの進化は日進月歩だが、2年後の性能を予測するのも相当難しいのだなというのがやってみてわかった。ド素人ながらそれっぽい予想ができたのは、Metaが比較的手堅く、リズミカルな製品展開をしているからこそだろう。
2026年10月、この予想が当たるか外れるか。それを楽しみながら、当面はQuest3で遊び続けようと思う。皆さんもよきVRライフを。
筆者X(Twitter)
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Quest4の性能と今後のヘッドセットの買い替え戦略を雑に考察する|ハルジオン #note https://t.co/xUsz91usWI
— ハルジオン (@fleabane_haru) September 13, 2024
昨今のMetaのリーク情報や業界動向を考察し、2026年に来るであろうQuest4のスペックを大胆予想()した記事です。
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