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精油の産地をめぐる、旅の記録ダイジェスト(2017−2019)

香り好きが高じて、アロマテラピーの世界に足を踏み入れました。

最初は多種多様な植物の香りをあれこれ楽しんでいたのですが、ある時、ふと気がついたのです。

「精油は、植物の加工品である」

ということに。

アロマセラピストの資格まで取ったのに、小瓶の原料になる植物のことを全く知らない。
それは、魚の缶詰の味をいっぱしの顔で品評するくせに、海を泳ぐ魚の姿を知らないのと同じなのでは?

「精油を知るなら、原料植物やその土地のこと、作り手のことも知りたい」

そう考えたのが、旅の始まりです。


以下、今までの旅記録を、ダイジェスト的にまとめてみました。

【2017年7月/福岡県八女市星野村】

一番最初に「原料植物を見たい!」と思って足を運んだ、SA no SAさんのベチバー畑。数々の名作香水に使われているベチバーは、根っこに香りをためている植物です。
根っこを引き抜く体験と、蒸留見学をさせていただきました。
ベチバーも周りの木々も、キラキラ輝いて見えるような土地でした。

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【2017年7月/鹿児島県指宿市】

日本最古の植物園と言われている、開門山麓香料園へ。芳樟(ホーリーフ、ホーウッド)の蒸留を見学。
手塚治虫氏の愛した香料園というだけあって、歩みを進めるごとに、「何か」がぴょんぴょんと足元を通りすぎていくのが印象的でした。
写真は、ふんわりと香気を放つティートリー(手前)と、芳樟(奥)。

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【2018年4月/富山県中新川郡上市町】

立山の麓にある森林組合の一角にて、AROMA SELECTさんの蒸留見学。
立山はスギの名産地ですが、この日の蒸留はクロモジとスギの二種でした。
(写真は精油の原料ではなく、木材として世に出ていくものです)
名水の里とのこと、素晴らしい精油が生まれるのは植物や空気だけでなく、水にも秘密がありそうです。

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【2018年4月/愛媛県今治市大三島】

ずっと数年訪れる機会を狙っていた、島香房ファーム。
念願叶って大三島ネーブルの摘蕾をして、ラボのアランビック(銅製蒸留器)で蒸留水を作らせていただきました。
ネーブルの蕾は他の柑橘の花よりも小さめ。摘蕾後は一日中、指先についた花の香りに包まれるという幸せを味わいました。

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【2018年7月/群馬県沼田市玉原高原】

冬はスキー場として営業している、たんばらラベンダーパーク。
精油の蒸留が行われているのに、お土産コーナーで買ったラベンダーパークラベルの精油には、なんと「フランス産」と表記が!
猛暑日に立ち上るラベンダーの強い香りで、気分が悪くなるという貴重な経験もしました。天然の香りでも「適量」は大事なことです。

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【2018年8月/愛媛県今治市大三島】

この年は西日本豪雨があり、四国地方は大きな打撃を受けました。
摘蕾させていただいた大三島ネーブルの畑が気になってしまい、再び島香房ファームへ。
豪雨の爪痕が残る島。苗木が流されて地面がえぐられた島香房ファームの畑の風景に、思わず黙り込んだ覚えがあります。
作業場には、無事だった畑から摘果されたばかりの青柑橘が置いてありました。ピーラーで一つ一つ手剥きした果皮から、青柑橘精油が生まれます。

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【2019年2月/北海道上川郡下川町】

北海道上川郡下川町の、フプの森にて。
マイナス15度の雪深い山の中で、人生で初めてトドマツの伐倒を経験したあと、蒸留を見学。
蒸留後、蒸気でまだ温かいトドマツの葉の山に足を入れてみたら、しばらくすると踵がツルツルになりました。
今、そこに生えている木を自分の手で伐ること。
その重みや意味を、ずっしりと味わった旅でもありました。

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【2019年4月/千葉県君津市久留里】

久留里の伝統工芸品・雨城楊枝の作り手である平田さん、調香師の古田さんと共に、森でクロモジ採取に。
平田さんのクロモジ楊枝作りの実演を間近で見せていただいたり、一緒にクロモジの花だけを選りすぐって蒸留するという贅沢体験も味わいました。

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【2019年5月/愛媛県今治市大三島】

3度目の島香房ファームへ。
この日は八朔(はっさく)の摘蕾をして、蒸留水とハンドメイドコスメづくりも体験。
もっと八朔と近づきたくなり、旅の終わりに現地で苗木を買い求め、新幹線で自宅まで運びました。

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【2019年5月/神奈川県小田原市

みかんの花咲く観光農園、あきさわ園へ。
温州みかんの花を摘み、様々な蒸留器で蒸留体験をさせていただきました。
温州みかんの花は八朔の花より花びらが薄く、摘んでいるとあっという間に酸化して茶色くなってしまいます。
摘んだそばからハチミツに浸けて、リップハニーも作りました。

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【2019年8月/白神山地

青森側から、白神山地のバッファゾーンへ入山。
白神アロマ研究所の収穫・蒸留体験に参加させていただきました。
葉の大きなオオバクロモジ。すっとした香りがします。
研究所の建物の中には、大きな温室がありました。その中に採取したニオイコブシとオオバクロモジの木を備蓄し、乾燥させているそうです。

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旅するうちに、変わってきたこと

全く植物には関心がなかった私ですが、実際に生産地に足を運ぶうちに、少しずつ興味が芽生えてきたのです。

「植物が育つ姿を見たら、もっと植物のことが分かるだろうか

そんな思いから、自宅の小さな庭にハーブの種をまき、分けていただいたベチバーの苗や、柑橘の苗を植えるようになりました。

まだまだ、私にとっては謎多き原料植物たち。
少しずつ距離を縮めていけるように、じわじわ接触中です。


今年(2020年)も、植物の生産地への旅を計画していました。
残念ながら社会的な事情で叶わなかった旅も、いくつかあります。

でもきっと、必要な時に旅のチャンスは巡ってくるはず。

そう信じて、まずは行けるところから旅をしようと思います。

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