陸自ヘリ事故・墜落のニュースについて
陸自ヘリ墜落のニュースが流れてSNS界隈が騒がしくなっております
ナイショですが今回墜落したH-60にちょっとだけ乗ったことがあるので、僕の知識と今出ている情報の範囲で説明できるところを少し書いてみます。
H-60 ヘリコプターについて
H-60シリーズは日本だけでなく海外でも使われている優秀なヘリ。
非常にパワフルで機動性も高く、カスタマイズ次第で様々な用途に使える多目的汎用ヘリコプター。
一般的には映画ブラックホークダウンでの知名度が高いと思う。H-60の愛称が「ブラックホーク」。
日本では自衛隊(陸海空ぜんぶ)が運用している。それぞれ用途別にカスタマイズがされており、名前が微妙に変わる。
陸:UH-60JA:多用途ヘリコプター
海:SH-60K:哨戒ヘリコプター
空:UH-60J:救難ヘリコプター
この他にもいろいろあるが割愛。
車で言えば、ハイパワーSUVみたいな立ち位置だろうか。改造しだいで高速走行もできるし、オフロードも走らせられるし、高級ハイヤーにも使えるみたいな。
と、ここまで簡単なH-60についての予備知識。
事故か攻撃か
これについては不明だし、一般人が推測で語るのもあんまり意味がないと思っている。
中国が関わってるかどうかもわからない。
事故調査の続報を待とう。
ネットの意見について説明
憶測で色々語っている人が多いので、目についたものに少し突っ込む。
消息不明・レーダーから消えたのが変
「消息不明」とか「レーダーから消えた」ということで不審に思っている人が多い。が、墜落したら普通にレーダーから消えるし、見つかるまでは消息不明になる。
たまたま、機体の損傷が軽く、搭乗員が無線を使える状態でのみ「現在の状況が伝わる」ので、それ以外は消息不明だ。特に洋上に落ちた場合は消息不明がデフォ。
バミューダ・トライアングルに入って消えたとか、都市伝説的な話ではない。
事故を起こすわけがない?
離陸後10分で、しかも上級幹部まで搭乗しているのに、事故るのはおかしい!的な意見も多い。
回答としては「ヘリはすぐ落ちるよ」である。
航空機はだいたいそうだが、特にヘリコプターなんてそもそも飛んでいる方がおかしい。落ちるのが自然の摂理。
テクノロジーとパイロットのスキルによって奇跡的に安全に飛行しているようなものだ。だから、ちょっとしたトラブルがあったら簡単に落ちる。
ちなみに僕の同期に相当する人も既に1人亡くなっている。
燃料搭載量の件
これはツイートのまま。
音信不通直後は落ちたのか、どこかで飛んでいるのはわからない。
時間経過により「搭載燃料的に飛んでいる可能性はない」ので、事故扱いとなった。
エマージェンシーコール・緊急脱出
>故障で墜落したのなら墜落までの時間があり、緊急ボタンか無線で緊急通報し脱出もできる。
故障の内容による。2発のエンジンのうち片方が死んだくらいなら余裕があるが、操作系に関わるトラブルであればそんな余裕はない。
そもそもヘリコプターには緊急脱出という概念はない。緊急脱出(ベールアウト)できるのは戦闘機だけだ。
アンコントロールな状態で機体の外に出たら、ローターに巻き込まれて死ぬ。
エンジン2基だからエンジントラブルによる墜落は考えづらい
その通り。
重量にもよるが、エンジン1発生きていればなんとかなるように設計されているのが航空機だ。
鳥の群れに突っ込むなどしたら、エンジン2基とも一気に死ぬ可能性はあるが、普通の(軍隊の)パイロットは鳥の群れは目視で気づいて避けられる。
オートローテーションについて
一般的にはあまり知られていないかもしれないが、ヘリコプターはエンジンが全て停止しても着陸できるオートローテーションという技術がある。
詳しく知りたい人はググってほしいが、超ざっくり説明すると次。
エンジン止まる
エンジンとローターを切り離す
落下のエネルギーでローターを風車みたいに回す
着陸直前にローターのピッチを変更して、回転エネルギーを一時的な揚力に変換して、うまいことフワッと着陸する
難しい技術だし、実際にエンジン止めて練習できるもんでもないので、ほぼぶっつけ本番になる。が、一応ライセンス取得のカリキュラムに含まれているし、シミュレートでの練習はするので、たぶんギリ死なない程度のオートローテーションはヘリパイの皆はできるはず。
と言っても、あくまでもエンジン(動力)だけ停止して、コントロール系統は正常に生きているケースの話。操作系のトラブルも重なったら墜落するしかない。
捜索・救出について
洋上であれば海上自衛隊と航空自衛隊が速攻で出動しているはず。
捜索にはU-125が出てると思う。
救出に向かうヘリは墜落したヘリと同型のUH-60J(救難ヘリ)だ。
ちなみに洋上でのホバリングは鬼難しい。
事故調査が進むのを待つのみ
こういうのは外野や素人があれこれいうものじゃない。
航空事故調査のプロフェッショナルが調査結果を出してくれるのを待ちましょう。
※僕自身も外野なので、問題あれば当記事を削除する可能性もあります。
もし質問あればTwitterへどうぞ @warimizu
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