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私はずっと空っぽだった | 五味未知子

「自分のことをゴミみたいだと思ったので、五味です。」

ミスiDにエントリーした少女の名前の由来はあまりにも衝撃だった。

夢も趣味もありません。
自らを空っぽだと言って憚らない彼女を突き動かすものは何なのか。

知れば知るほどわからなくなる、だけどいつだってナチュラルでつかめない彼女は、部屋を訪れてさっそくくつろいでいる。

だから、いつもよりゆっくりと話を聞ける気がした。

みちこ4


五味未知子/女優、アイドル
女優としてミュージックビデオやドラマへ出演。
自身が手掛けるアイドルグループ『きっと誰かの秘密兵器』としても活動中。

SNSはこちらからチェック
五味未知子:https://twitter.com/gomimichiko
きっと誰かの秘密兵器:https://twitter.com/_himitsu_info


五味未知子さん、ようこそ

五味未知子(以下、五味):フリーの女優とアイドルとして活動している五味未知子です。よろしくお願いします。

── 未知子との出会いは、アイドルとして最初に活動したグループの『なんキニ!』で、僕は作詞家として関わっていたグループだったんだよね。そこで挨拶をしたっていうのが最初の出会いのタイミングだったね。

作家として関わっていたタイミングでは挨拶くらいで、深く話しをするタイミングもなかったので今回この部屋に来てもらいました。

最初に人前に出る活動をはじめたきっかけはなんだった?

五味:きっかけは『ミスiD』のオーディションを受けたことです。

── その前は夢があったけど特に活動はしていなかった?

五味:夢は無かったです。

── あ、そうだ!オーディションの時も「夢も趣味もなにも無い」ってエントリーしてた。

五味:そう、何も無くて。インターネットは観るだけで、そこに顔をだすっていうこと自体したことがなくて。
オーディションに参加した頃に短大を休学しちゃって。そもそもずっと不登校で、高校は通信制のところに行って。そんなひとがいきなり全日制の学校に行けるわけないじゃないですか。

── たしかに…!

みちこ5

五味:それで学校に行けなくてめっちゃ病んでて。
将来やりたいこともないし、死ぬしかないなみたいな感情になってたんですけど、それと同時になんでも挑戦できちゃうみたいな無敵の気持ちになっていたんですよ。
それで「ミスiD受けちゃおっかな」みたいな感じでエントリーをしたんです。

── ちなみにそのエントリーをした時の名前って『五味』だったけど、ミスiDを受賞した時の名前って『五味未知子』になってるよね?

五味:そうなんです。最初は自分のことを社会のゴミみたいっていう気持ちだったから「五味」にしました。

── その名前の由来も初めて聞いた時衝撃だったていうのはもちろんあるんだけど、最終の結果が『五味未知子』になっていたことに気づいたんだけど、心境の変化とかあったの?

五味:授賞式の日にいきなり「改名します」って言って変えたんですよ。
ミスiDの期間にいろいろな出会いがあったり、お仕事をもらえることがあったりして。こういう道で仕事をしていくのも良いなって思ったんです。
そういう中で、名字だけっていうのが変かもって。名字も名前もあったほうが良いなと思って、自分への期待を込めて「未知の子」で未知子にしました。

── その変化がミスiDの佳境というか、最終選考のタイミングだったんだ。
しかも、最終選考の写真のイメージとエントリーのタイミングの映像って雰囲気が全然違うよね。エントリーの時はかなり素朴で。

最悪のスタートだったオーディション

── ミスiDってオーディションとしてはけっこう長い期間だと思うんだけど、それにしても未知子は変化がすごいよね。別人っていうくらい。

五味:それはすごい言われます(笑)

── それはミスiDの期間で何か変化があった?

五味:そもそも、エントリーの動画のタイミングで大学デビューしたくて、パーマかけたら失敗して…それを引きずってたんですよ。

── 単純にベストの状態じゃなかったんだ!

五味:最悪の状態からのスタートでした。むしろよく書類が通ったなと。

── オーディションの中で心境の変化とかがあったというよりは、最終審査のタイミングで本来の姿に戻ったって感じだったんだ。

五味:一回選択をミスってから、オーディション期間中に軌道修正をして、本来のベストに到達しました。

みちこ7

── エントリー時点の動画と、プロフィールに書いてある「夢も趣味も無い」っていうのが絶妙にマッチしているなと思っちゃってたんだよね。でも最後の写真ですごくかわいくなっていたから、オーディション期間中にすごい変化があったのかと思ってた。
今の話を聞いて謎が解けた感じ。

五味:めっちゃがんばった大賞ですよね。

── 半年っていう期間でできる変化の中ではかなりのレベルだと思ったよ。

五味:ミスiDがはじまって、そのタイミングで撮られるようになって、見られるとかそういうことを意識しはじめたっていうのはあるかもしれないです。

同じくエントリーしている子に初めて写真を撮ってもらって。そこで「写真を撮られる」って活動を知ったっていう感じでしたね。

── 今も続けている「写真を撮られる」って活動は、その最初の時点でもう自分の中でしっくり来た?

五味:楽しかったですね。

── そういえば、初めて会った時の印象は、ミスiDの各審査員の方が書かれている通りだったな。

五味:審査員のみなさんがすごく褒めてくれていたので、今でもそのページを見て自己肯定感を高めてます。

知らないことだらけのアイドル活動

── ミスiDを受賞して、その後『なんキニ!』というアイドルグループに所属したよね。
そこで僕はメイキング映像のカメラマンとして参加していた。

緊張していたのはすごい覚えているけど、カメラに緊張しているというよりは、まわりに大人がいっぱいいるっていう現場の緊張を感じていたよね。

五味:人が多すぎて「なんだここは!?」っていう感じでした。
そういう機会がなかったから流石に緊張しましたよ。

── ミスiDがインターネットだとしたら、アイドル活動はお客さんが目の前にいるリアルの世界に突然飛び出したっていうイメージなんだけど、そこでの気持ち的な変化はあった?

五味:「うわぁ〜〜〜」っていう感じでした。自分が思っていたよりすごいことになっているなと思いながら活動をしてました。
個人で活動していた時より、関わる方の人数が増えたので「がんばらなきゃ」っていう気持ちが大きかったです。

みちこ3

── 歌ったり踊ったりすることについてはどうだった?

五味:それまでは未体験でしたね。アイドルに憧れることはあったけど、自分でやるとなると「全然できないんだなぁ…」って打ちのめされました。

── それは活動が始まってすぐ?ずっと打ちのめされてた?

五味:ずっとでしたね。でも活動自体は楽しかったです。

── 活動中、で楽しかったこととか大変だった思い出はある?

五味:今となっては全部楽しかったですね。
当時はコロナとかもなくて、ライブもたくさん出れていたし。気づいたらお客さんもたくさんいて、広いステージにも立たせてもらって。
あとは夢眠ねむさんに会えたっていうのは大きかったです。

── ずっと好きだったもんね。夢眠ねむさんに会えたのはどんなタイミングだった?

五味:夏のフェスに出たのってどのタイミングでしたっけ?

── グループに入って数ヶ月だね。だから…秒で会えたってことか。

五味:秒で会えてしまった。

── アイドルの活動で「自分が好きなアイドルに会える」とか同じステージに立てるって、大きいモチベーションのひとつになり得るよね。
逆にそれをすぐに達成できてしまった後は次のモチベーションになるようなことはあったの?それとも、ライブをしてるその瞬間が楽しいみたいなモードだった?

五味:その瞬間もだし、アイドルの活動をしているすべてが私は楽しくて。
歌も踊りもそうだし、「今日はどの曲ができるのかな」とか。あとはお客さんに会うのが好きだったんですよ。
ライブ中のお客さんを観るのが好きで。自分もオタクだったので、声を出したりジャンプしたり、そういうカルチャーがすごい好きなんですよ。だからライブをしていて常におもしろかったり楽しかった。

── 今、ライブの現場が好きっていう話を前に聞いたことがあったんだけど、それは自分の活動を通して感じた?それよりも前から好きだった?

五味:活動をはじめるまではライブハウスにも行ったことがなかったし、だから活動を始めていろいろなライブハウスに行けたり、新曲を歌うことができたりとか。修学旅行以外で地方に行ったことも無かったからライブで行けるのがすごく楽しかった。

みちこ2

── その頃の活動が、今やっているグループの『きっと誰かの秘密兵器』にも活かされてるし、当時の活動を振り返って思ったりすることもあるのかな?

五味:恵まれてたなとは思いましたね。あとは良い時期に活動できていたなとは思います。

── たしかに、当時は感染症対策とかも無かったし、会場いっぱいにお客さんが入っているっていう環境だったもんね。
当時は10代だったけど、20代に入って自分がメインになって活動しているグループの話を聞いたときに、目線とか考えていることとかが「大人になってるな」と思ったのはすごい覚えてる。

五味:大人になりましたね(笑)当時は赤ちゃんって感じだったので。

── 当時の収録の時は現場に大きい熊のぬいぐるみを持ってきたりしてたもんね。

五味:やりたい放題というか、自由な感じでしたね。

ターニングポイントになった就職活動

── 映画への出演とか、女優業をはじめるきっかけは何かあったの?

五味:ミスiDの期間中に、MVへの出演とかが少しあったんですよ。前のアイドルグループを卒業してから、映画やMVへの出演とか、あとは洋服のモデルをさせてもらったりも増えましたね。

── 女優業をするようになって大変だなと思ったこととかあった?

五味:朝早いとか…?あ、でもみんなそうか。

── フィジカル的なところね(笑)
ちなみに夢が無いっていうところからスタートしていると思うんだけど、女優として活動をしたいと思ったタイミングはあったの?

五味:最初は流れで始まったかんじでした。
アイドルを卒業した年が、大学に復学して就活をするってタイミングだったんです。
最終面接までもいって、採用の連絡をもらって「ありがとうございます!」と思って。でも電話を切った瞬間に、「本当に私は就職をしたいのか?」っていう自問自答があって。
人生は一度きりだし、就職をしたくない、女優をやりたいって思ったんです。

── たしかに、就活の悩みを話していたね!

五味:社会に出るか否かっていうタイミングで。

── 就活を通して、リアルな社会の中にいる自分を想像して、ターニングポイントになったんだ。
アイドルだったり、MV出演や女優の活動を通して、今だからこそ「今後やってみたい」みたいなことはできた?

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五味:制作とか裏方のことにも興味が出てきました。
できることが増えて、周りの方の力にもなれると良いなと思ってきたんです。それって自分自身の力にもなっていくじゃないですか。

── 情報としてはなかなか入ってこないかもしれないけど、現場での経験っていうものは活動を通して増えていったよね。裏方に興味を持っていったのはそういう場面を通して?

五味:まず友達ができてきて。

── オーディションエントリー時からするとそれは大きな変化だよね!

五味:仕事を通して知り合ったり、遊んだりする機会が増えて。
周りにはフリーランスの子が多くて、自分自身もそうだし。活動をしていると「助けてほしいな」と思うタイミングがあったり、誰かが助けてくれたり。
そういう時に私も周りのみんなの力になれると良いなと思ったんです。

── 現場を見て制作に興味を持ったっていうよりも、一緒に活動していく仲間との関係の中で、自分が力になれる場面を増やしたいっていう角度だったんだ。

五味:飽き性なので、将来が不安になったっていうのもあります。
同じことを続けるっていうことが苦手で、新しいことに挑戦していかなくちゃっていう気持ちがあって。

責任を負いたかった

── どんどん新しいことに興味がわいていく?

五味:今までやったことが無いことに挑戦してみたくて。
今度は自分がメインになって活動するアイドルグループに挑戦しているところですけど、自分の無力さに打ちひしがれてます。

ひとりでの活動ってある意味すべてが自分次第じゃないですか。
責任を負いたいなって思ったんですよね。それでグループに挑戦しました。

── 「責任を負いたい」っていう理由は意外だしすごいことだね。

五味:変わるきっかけが欲しかったんですよ。
実際に活動を始めてみて、一緒に活動するメンバーとか関わってくれるスタッフの方の人生を預かっているなって自覚したら「めっちゃ頑張らなくちゃいけないな」と改めて感じましたね。
そういう部分も、前よりちょっと大人になれてきたかなとは感じます。

── ここ数年でかなり大人っぽくなったなと感じたのはそういう理由だったんだね。
関わる人が増えたり、友達ができたりで気持ち的な変化はあった?

五味:良いことも悪いことも体験しましたね。義務教育でそういう経験をしないでここまできたので。だけど精神的に強くなったっていうのはあります。人間って信じて大丈夫なんだってこととか。
あとは視野が広がりましたね。地元では同じ趣味の子がいなかったので話がなかなか合わなくて。
東京で活動を始めたら趣味が合うひともいるし、仕事をきっかけに知り合って遊びにいける人も増えたし。

元気になりました。

『やりたいことリスト』に書いた写真展。

── 今年になって、写真展の開催と、写真集『ENDROLL』の制作をしたよね。
それが実現するまではどういう経緯だったの?

五味:元々は、noteに「今年1年の目標」を書いたことがあって、2020年の目標に『写真展をやる』っていうのがあったんですよ。だけどコロナの影響とかでそもそも写真をあまり撮れなかったりして。
2021年に写真展をやりたいなと思ったときに自分が写真を撮られていて、宇佐美亮さんっていうカメラマンの方の写真が好きだったので、一緒に写真展をやりたいですって言ったら実現しました。

── 思ったことを実現するパワーがすごいよね?

五味:周りの方にすごく恵まれているんですよ。そういうのって活動だけ見ているとなかなか伝わりづらい部分だと思うんですけど、優しいひとが多くて助けてくれて。
私自身には何の力もなくて、今でも自分のことをゴミだなって思うことがあるんですけど。周りのみなさんに助けられています。甘やかされてるくらいかも。

── だけど、思ったことをちゃんと形にしていってる。

五味:「こういうことをやりたいです!」っていうのは得意だと思います。

── それもすごい大きな変化だよね。自分の思いに対して動いてくれる周りの方がいるっていうこと。
オーディションにエントリーした時とは真逆くらいの状況になってる。

五味:そういう助けてくれる方がすごく多いから、自分も誰かの力になれるような裏方のこともできたらかっこいいなって思うんです。

── プレイヤーとしての活動を通して、それにまつわる制作に興味を持ったというよりは、自分のスキルとかパワーを上げて、誰かの役に立ちたいっていう思いから裏方にも興味を持ったっていう順番だったんだね。

五味:自分がしてもらったことを、誰かに返せるといいなっていう思いですね。

アイドルとしての夢

五味:女優としての活動は、五味未知子に出てほしいって思ってもらえると良いなっていうのはありますね。アイドルとしては恵比寿のLIQUIDROOMでライブをしたいです。

── なんでLIQUIDROOM?

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