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競馬場の風景論(2)
キャサリン・ヘプバーンとシャラメ――
ボブ・ディランの役をティモシー・シャラメが演るという。ディランより線が細いし美しすぎると思うけど、公開されてる動画を見るとディランの雰囲気がある。
シャラメを「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」で観たとき、これぞ心に描いていたローリーだ、と思ったものだ。ちなみにジョー・マーチはなんといっても1933年公開の「若草物語」のキャサリン・ヘプバーンなのだが、2人を並べてみると笑えないくらいにミスマッチ。80年くらいの時の流れがあるとしても。単独で観ると若きヘプバーンは永遠のジョー・マーチだし、シャラメもやっと巡りあったローリーなのだが。やはりミスマッチ、ミスキャスト?
ミスキャストといえば、昔、ミスキャストという名前の馬がいた。サンデーサイレンスとノースフライトの子で良血なので期待されたが、5勝して重賞勝ちなし。それでも良血なので種牡馬になったが、種牡馬成績もかんばしくなかった。
が、2012年の春の天皇賞、三冠馬オルフェーブルを打ち負かしたのが、ミスキャストの子であっといわせた。その名はビートブラック。単勝は159倍、大万馬券だった。ビートブラックは重賞はこのGⅠの天皇賞のみ、6勝して引退した。
競馬にはときどき、あっと驚くことがある。古くは有馬記念のダイユウサク、マツリダゴッホなど。最近は血統も環境も高度に平準化されて、あっと驚くことはなくなった。サウジカップのパンサラッサの爆走とその1,000万ドルという賞金くらいか。
ミスキャスト―ビートブラックの系譜は絶えたが、キャーと叫んで馬券が飛び散った忘れられない一瞬だった。