人生を描くこと

最近『ビフォア・サンライズ』や『6才のボクが大人になるまで。』などのリチャード・リンクレイター監督の作品をたくさん観て、日常を正直に描くと人生が見えてくるんだ、と思いました。それらの作品をまとめてざっくり紹介します。

リンクレイター監督の作品の舞台はテキサスとか、アメリカ南部のあたりが多い。
ジャンルは結構色々で、酒とクスリとセックスの嵐なのにどこか爽やかで切ない青春映画とか、恋愛ものとか、『6才のボクが、大人になるまで。』という言葉通りの6才の少年が18才になるまでの映画など……。
あとは、いつも音楽が最高です。

各作品共通の特徴としてよく言われるのは独特な時間表現。大学が始まる前の3日間だけを描くとか、夏休みに入る日の昼から1夜を描くとか。
他にも『6才の〜』では夏の撮影を1年ごとに6年間続けて撮っている。1本の映画の中で少年は別の役者に変わることなく、6才から18才までゆっくり年を取っていく。周囲の家族や友人もみんなそうだ。
『ビフォア・シリーズ』と呼ばれる作品群だと、1作目から9年後に2作目が作られ、主人公たちも9年分年をとっている。現実と作品がシンクロしているのだ。3作目もおなじように9年後に作られ、若々しかった主人公たちは中年になっていく(これも俳優さん変わりません)。

それにプラスアルファして特徴的なのは、明確なストーリーラインがないことだ。起承転結のようなお膳立てはなく、事実が単に事実として存在する。
例えば『バッド・チューニング』というドタバタ青春映画は、街の高校生たちがあっちこっちで遊んでいるのを、カメラがそれぞれ切り取って観せてくれる。そこに何かの達成というようなカタルシスのようなものはない。みんながお酒を飲んだりお喋りをするだけだ。

その2つを通してリンクレイターの作品を見ると、人生という長い数直線の一部を無作為に切り取ったのがそれぞれの映画だと感じる。
起承転結や始まりと終わりはなく、ただ人生から切り取ってくるのだ。そのかけら1つだけを映画にして、3日間だけを描く映画にすることもあれば、かけらを6つくらい合わせて『6才の〜』を作ってみたり、かけらをシリーズ化して『ビフォア・シリーズ』にしてみたり。

だから、リンクレイターの作品を観ていくと人生の走馬灯を観ているような気持ちになる。あっ学生時代。あっ、私の運命の恋愛。そして子供、そして離婚、そして再婚。みたいな感じでびゅんびゅんと人生が吹きつけてくる。

実はリンクレイターのメジャー作品で最大のヒット作『スクール・オブ・ロック』は思ったように作れなかったのか、そういう特徴はあまりなく、起承転結のストーリーががっちり組んである。
なので、走馬灯を感じたい人は是非『6才のボクが、大人になるまで。』を観て!と思います。
単にエンタメとしてどんちゃん楽しい映画観たいよ!というのであれば『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』や『バッド・チューニング』を。
男と女ってなかなかうまくいかないけど、こんなものだよね。時間がたてばたつほど、と感じるのは『ビフォア・シリーズ』です。
全部見ると完璧な走馬灯です。

ぜひ、壮大な人生を感じてみてください。

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