獣になれない私たち 1話2話

今期は毎週『獣になれない私たち』を楽しみにしている。1話と2話の感想を、3話の前に駆け込みで書きました。視聴している人向けです。

1話が終わった後、あまりにも辛い…という声がちらほらSNSでみかけられた。あまりにもリアルに肉薄した表現に、皆さんボコボコにされていたと思う。これを書いている私自身も多分にもれず、知ってるこれ…現実でみたことある……と思って観ていた。
でも、この私たちに伝わりすぎるほど伝わる切実な辛さは、このドラマが私たちにとって必要なドラマであることの証明に他ならない! と思いドキドキもした。
当たり前のことだが、この1話は『けもなれ』のスタート地点なので、この辛い現状との関係性がこれからどう変化していくのかを、私たちはこれからこのドラマから受け取ることができる。それは、私たちが切実に求める生きるためのヒントに他ならない可能性がとても高い。創作物の価値が実用的か否かに左右されるということはないが、非常に雑な言い方をすると『けもなれ』を見ることは、その視聴者にとって利益になることだと思った。

この辛い晶(新垣結衣)の現状に対して、会社をやめればいいのに、という感想もあったが、これは会社をやめられない晶、つまり「獣になれない」晶の物語だ。きっとこのドラマで言うところの獣である呉羽(菊地凛子)があの立場ならば、仕事なんてさっさとやめているだろう(というか、だからこそ呉羽は会社の上に立つ人なのだろう)。だけど晶はやめられない。それがこのドラマのメインテーマだと思う。

そして2話を観て、面白いと思ったのは根元さん(松田龍平)も獣になれない側にいるということだ。
取引先の厭なおじさんに土下座をする晶と、そういう土下座を嫌う根元。自分の悪口を聞いても笑顔を作る晶とその笑顔が嫌いな根元。
こう考えると会社を辞められそうなタイプの根元だが、晶と2人で呉羽のことを話しながら、獣になれないと言っている。3話の予告を見て根元の獣になれない部分が細かく描かれそうだと思ったので、これから彼がその事実とどう向き合うことになるのかが楽しみだ。

というか、根元と晶だけではなく、このドラマには獣になれない人がいると思う。へっぽこ部下の上野(犬飼貴丈)や優しさ故に元カノを追い出せない京谷(田中圭)も、どっちつかずで決められない人だ。
上野くんは会社に行きたくないけど、働かないと食えないから、仕事を辞めることはしない。だから会社に行ってもプレッシャーから逃げてしまう。
京谷は晶のことを大事にしていないわけではないが、元カノを無下にすることもできない。どちらかに決めなければならないが、どちらかに決めることはできない。そういう思い切りの悪さは獣になれなさだろうと思う。

晶のようになんでもできる人だけではなくて、へっぽこな上野くんも含めて「獣になれない」人々がどう生きるかということが、描かれていくのが楽しみです。

#エッセイ #テレビドラマ #けもなれ #獣になれない私たち #野木亜紀子

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