東京幽霊
東京の街では、僕は見えていないのかもしれない。
きっと、誰の目にも映らず、誰の意識にも残らない幽霊。
それが嫌なら、道を踏み外す。
悪い事をするか、マナー違反をするか、極端に汚らしくなるか。
そう、怪物になるしかない。
この街では、一部の成功者や有名人以外はみんな、幽霊か怪物だ。
だから、あなたも僕も幽霊だ。
誰にも知られる事はない。
もしかしたら、SNSの方がまだ、人として見られているかもしれない。
だから、SNSの身だしなみだけ整えておけばいいんじゃないの。
普段は幽霊だし、誰にも見えてないよ。
存在を知っている者にしか見えないんだから。
月の話をしようか。
月は人気者で色んな人から見られる存在だ。
いつだって、自分の仕事を全うしている月のような存在であっても、地球から少しずつ離れて行っている。
やっぱり、本当は逃げ出したいんだよ。
誰にも注目されずにただ、幽霊のように居たかっただけなのに、一度、注目を集めてしまったら、それも叶わなくなるんだから。
僕らだってそうだ。
一度、注目を集めてしまったら、もうその前の生活には戻れない。
いつか戻りたくなっても。
だから、僕はこの街で幽霊に徹する。
誰にも見えていない存在でいい。
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