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評価において大切なこと(その9)

前々回・前回と、2回にわたって「評価者の心理的エラー」について書きましたが、今回は「評価を受ける側のメンタリティー」について考えてみたいと思います。

「ポジティブ・イリュージョン」
という言葉をご存知でしょうか?

ちょっと聴き慣れない言葉かと思いますが、日本語に直訳すると「積極的幻想」とでもなるのでしょうか。
「自己高揚的動機に基づく様々な認知バイアスのことであり、実際に存在する物事を、自分に都合良く解釈したり想像したりする精神的イメージや概念」と定義されています(Taylor & Brown, 1988)。

簡単に言うと、人は自分自身のことを実際以上に高く評価する傾向がある、ということです。

弊社で行う管理職研修では、その場にいるメンバーでこのことを体験してもらっています。
まず、全員でゲームに取り組んでいただきます。一人に1枚ずつ絵を配り、他のメンバーに絵を見せずに言葉だけで絵の内容を互いに説明しあいながら、全ての絵をある順番で並べ替えるというゲームです。制限時間を設け、時間内に完成させることを目指してもらいます。(このゲーム自体は、チームビルディング研修で扱っているゲームです)

ここからが実験です。
課題を達成した後、みなさんに白紙のカードを配り、このようにお願いします。
「今のゲームでみなさんは見事に課題を達成しました。おめでとうございます。さて、チーム全体の成果を100としたとき、そのうち、自分自身がどれくらいチームに貢献したと思うか、数字をカードに記入して提出してください」
集まったカードの点数を集計します。本来ならば全体の合計は100点もしくはその前後にならなければいけないのですが、ほとんどの場合、合計点は200点を超えます。300点超となることも珍しくありません。

このように、人は自分のことを実際以上に過大評価するものなのです。

ポジティブ・イリュージョンは、ある程度の範囲であれば、日常生活においてはまったく問題ありません。自己肯定感の現れでもあり、困難に立ち向かったり新しいことに挑戦したりすることの原動力となるので、私たちにとって必要なものであるとも言えると思います。

しかし、評価の場面になると、これがイタズラすることがあります。
自己評価と会社からの評価に大きなギャップが生じ、評価に納得できなかったり、フィードバックを素直に受け入れられなかったりという事態を招く恐れがあるのです。
ですから、管理職のみなさんは、ポジティブ・イリュージョンというものがあるということを頭に入れて、日常のコミュニケーションや適切なフィードバックによってその差を埋めていくようにする必要があります。

逆に、被評価者の中には自己肯定感が著しく低い人もいます。
評価でそこそこの点数をつけたにもかかわらず、「いえいえ、私はとてもそんなに評価していただける能力もなければ実績もありません」などと恐縮したり、今後に向けての期待を伝えても、「私にはとてもできません」などと言って挑戦を避けるような人です。
こうした人に対しては、日頃から小さな達成感を味合わせて自信をつけさせ、自分自身を認め、挑戦する勇気を持たせるようなコミュニケーションが必要となります。

このように、相手の特性に応じて日常の支援やフィードバックのあり方を工夫することが大切です。

評価において大切なこと、
その9は「被評価者のメンタリティーに応じた支援やフィードバックを行う」です。

いかがでしたでしょうか?
次回は「評価者訓練の重要性」について書いてみたいと思います。

株式会社F&Lアソシエイツ
代表取締役 大竹哲郎
https://www.fl-a.co.jp/


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