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僕ヤバの深読み【Karte.5 僕は遭遇した】僕の心のヤバいやつ

Karte.5 市川が山田に「冷める」回

一貫して山田に惚れ続けていた市川だったが、この回で山田に冷めてしまう。

裏を返せば、市川が山田の何に惹かれていたのか、というのを対比的に示す重要な回。
筆者この回大好きです。

市川は、ファッション誌を家で開き、モデルとして掲載されている山田を探すが・・・

市川(わー…縁のない世界だ)
市川(……あれ?)
市川(いないぞ?)

はっ

市川(これ…だな…)
市川(スルーしてしまいそうになった)
市川(違和感がない)
市川(ちゃんとしてる)

普通、自分が意識している女子を見落とすはずはない。
(街中だって、似ている女性が視界に入ったら目で追うだろう)

つまり、市川の中の「山田像」とファッション誌の山田があまりにもかけ離れていた、ということだ。

そして極めつけはコレ。

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普通「女の人」というのは、「子供が年上の女性」を指す言葉だ。

同い年の女子に「女の人」とは言わないだろう。

市川はここで山田を「大人の女性」と強く意識させられ、衝撃を受け、冷めてしまう。

市川(なんだかくだらない感情を持っていた気がする)
市川(僕と山田はまったく違う世界の人間だというのに)

もちろん、本人の意識通り、「分不相応の相手を意識していた」というのもあるだろう。
(のちの話で、「手に入らないと解っているものは嫌いになる理由が欲しくなる」と独白している)

何より、市川の惹かれた「山田像」は「図書室で菓子を頬張りながらゴリラみたいな歌を歌うやつ」であって、「大人の服に身をまとった女の人」ではない。

その現実を突きつけられてショックを受けた、という図だ。

とはいえ、これは普通の男子(例えば足立とか)からしてみれば逆だ。

山田の容姿に惹かれた大多数の男子なら、ファッション誌の素敵な山田を見たらテンション爆上げ間違いなしである。
そして、山田の本性=「図書室で菓子を頬張りながらゴリラみたいな歌を歌うやつ」を目撃したら・・・冷めるだろう。

市川は逆なのだ。

この差は市川(と市川が山田に対して魅力と思う部分)が特別だから起き得た化学反応だ。

市川は大人が嫌い

明確に表現されていないが、恐らく市川は大人が嫌いだ。

Karte.13「僕は捗った」の下ネタ心理テストの時、

市川(ゲス大人が考えたに違いない)

と卑下したり、
Karte.16「僕は心の病」で

市川(そんな病(恋愛)のせいで人生しくじる輩の多いこと…)

と達観する市川が想像しているのは、大人の世界だ。
さらに、Karte.42「僕は利用された」で山田に対し、

市川(嘘 偽りで人を傷つける汚い大人と変わらないのでは)

と誤解するあたり、「大人」に対してかなり斜に構えていることが伺える。

中二病を生むコンテンツは、「正義の若者と邪悪な大人」という構図が多く、そこから「大人は汚い連中」という先入観があるのかもしれない。

それとも市川の過去に何かあったのか。

いずれにせよ、「大人」に対してネガティブな市川が、ファッション誌に写る「大人の山田」に対して冷めるのは当然だろう。


この回を起点に、市川はなぜ山田に惹かれたのか、惹かれてしまうのかというのを自意識せずにはいられなくなっていく。

前半の山田の奇行に持っていかれがちだが、市川の心理変化が強烈で、印象的な回!

この後、自転車事件を持ってくるあたり、ニクイなぁと思う。

前回 > 僕ヤバの深読み【Karte.4 僕は渡した】

次回 > 僕ヤバの深読み【Karte.6 僕は嫌だ】


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