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僕ヤバの深読み【Karte.11 僕は突破した】僕の心のヤバいやつ

Karte.11のテーマ:市川と山田の感性

初めてこの回を読んだ時、お互いの家の距離が話題になって市川が恥ずかしくなるドキドキ回かなーとサラッと読んでしまった。

何回か読み返す内、この時期の山田は市川に対して「優しい子だな」くらいの感覚を持っていると気づいた頃(読み返し4回目くらい)、この回の隠れた魅力に気付いた。

山田の市川に対する印象の変化

後半、山田のグループに追いつこうと市川は教室を通り抜けする。
通り抜けた市川は山田に見つかるが、山田は市川を以前とは明らかに違う眼差しで見つめる。

市川は直前回のKarte.10「僕は死んだ」で原さんを庇ったりと、山田は市川の陰徳に気付いて、好印象を持っている。

「好き」という感情というよりは「優しい子」を見ている感じだ。

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このコマの市川、めっちゃ可愛くないですか。

市川が面白いなら…

山田「面白かった?」
市川「え…まぁ… 結構…」(見てない)
 教室に入っていく山田
市川「え…」
山田「わぁ すごい」

市川に鉢合わせした山田は、市川が通り抜けたクラスの出し物は「面白かったか」と問う。

もちろん出し物を見ていない市川は、「え…まぁ… 結構…」と歯切れの悪いものの「面白かった」と取れる返答をする。

それを聞いて教室に入る山田。「え…」と驚く市川。

このクラス(2年1組)の出し物「ぼくらの町の80年前」は「めっちゃつまんなそう」である。

冒頭で文化祭を「所詮中学なので研究発表だったりがメインのしょぼいイベント」と市川が評しているので、売店などは無いんだろう。
とはいえ市川のクラスがお化け屋敷を企画するくらいだから、ある程度バラエティ系の出し物はある思われる。

その中でも「ぼくらの町の80年前」は、「町内の昔の地図を作る」というバラエティもエンタメもクソもない出し物だ。

事実文化祭当日も1組のクラスメイトは出払っており、当番と思われる女子2人がトランプで暇つぶしをしているという閑古鳥っぷりだ。

それでも山田が見に入ったのは「市川が面白いと思ったなら、面白いはずだ」と思ったからだ。
(それに市川も驚いた)

まあ市川は本当に面白いかどうかは知らなかったのだが、結果山田はお気に召したようで、「なかなかやるなあ」と感想を言う。

自転車事件以降、市川とのコミュニケーションを重ね「好き」ではないけど「優しい子だな」と思うようになった山田は、市川との感性の近さを感じている。

実は小林も

山田「みんな見てよ すごいでしょ」
小林「あ ホント」

最後のコマで小林も「ぼくらの町の80年前」の出し物が面白いと感じている。

最初は適当に話を合わせてるだけかな、と思ったけど結構本心っぽそう。
市川山田小林の3人は意外と似ていると所が多いと思う。


この微妙の距離の縮まり方の表現、凄い素敵。
それを丸一回使って表現するこの回、筆者のお気に入り回の一つです。

保健室の回で山田が視線を感じて目を開けたとき、ガン見していた市川に向かって「知らない人じゃなくてよかった」と市川への警戒心が薄くなっていく様子が本当に細かく表現されている。

この頃の2人の心理的な距離感も本当に美しい。(語彙力)



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