「副業先が反社会的勢力だった」就業規則違反で懲戒処分に。副業にも求められる反社チェック。
システム会社で正社員としてエンジニアの採用担当業務をしているDさんは、副業で消費者金融会社のITコンサルタント業務を受託しました。副業開始から半年ほど経って、副業先の消費者金融会社は「半グレ」と取引がある反社会的勢力であることが判明。Dさんは本業の就業規則違反で懲戒処分を受けることになりました。取引先だけでなく、社員の副業先にも「反社チェック」が求められます。
「反社会的勢力」とは知らずに副業を引き受けてしまった
Dさんは比較的小規模のシステム開発会社で、エンジニアの採用担当をしています。
Dさん自身はエンジニアではありませんが、採用候補者を適切に見極めるために、システム開発やSaaS運用、DX推進などに関連するIT知識を豊富に身につけていました。
エンジニア採用担当しての知識を活用し、自身のキャリアアップをすることを目的に2019年2月から9月まで、知人に紹介してもらった消費者金融会社のITコンサルタントとして、Webサイトの構築や社内のITツールの導入を支援する業務を委託します。契約形態は「業務委託契約」です。
本業では副業は「届出制」でした。事前に届出をし、本業承認のもと、Dさんは副業を開始しました。
Dさんが副業を開始して半年ほどたった頃、Dさんの副業先である消費者金融会社が、債権の回収に反社会的勢力いわゆる「半グレ」を活用しており、密接な関係であったことが本業の法務部の調査により発覚します。本業のシステム会社は、Dさんに、速やかに副業先の会社との契約解除を命令。しかし、Dさんは自身の個人情報を副業先に握られていることもあり、報復を恐れ、なかなか契約解除を申し出ることができない時期が続いてしまいました。
結果として、Dさんは就業規則違反で自宅謹慎の「懲戒処分」を受けることになります。元副業先の消費者金融会社とは、直接トラブルを起こしたわけではありませんが、半ば契約を強引に打ち切ってしまったため「報復を受けるのではないか」と今でも怯える日々を過ごしています。
本業での副業「届出制度」が完全に形骸化していたことが問題
消費者金融会社は、反社会的勢力とのつながりが多い傾向のある業界の1つでです。Dさん自身の反社チェックの意識が低かったのが今回のトラブルの原因の1つではありますが、本業の副業「届出制度」が機能していなかったことも大きな問題です。
結果として、副業開始から半年経って反社との関わりに気付くことができましたが、社員の副業先の「反社チェック」のリスク回避することができませんでした。
2018年1月の厚生労働省がモデル就業規則で「副業」を原則禁止から、原則容認にしたことで、Dさんの本業先も副業を原則容認にし「届出制」にしました。
しかし、その実態は見た目だけでの制度。副業先の反社チェック、利益相反でないか、本業労務への影響、情報漏洩リスクなどの適切な管理機能や運用体制が備わっていませんでした。
副業を容認し、届出制にしたところで、その制度が正しく機能していなければ、会社も社員も守ることはできません。
「反社チェック」や「届出制度」を正しく機能させ、社員を守る
このようなトラブルを未然に防ぐには、副業の届出制度を正しく機能させることが必要です。繰り返しの強調になってしまいますが、大事なことですのでここでも確認します。
副業の「届出制度」ではモデル就業規則68条の4箇条がとても重要になります。これは副業の事前申請後に、以下の4つの項目を定期的に確認します。
・労務提供上の支障がある場合
・企業秘密が漏洩する場合
・企業の名誉や信用を損う行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
・競業により、企業の利益を害する場合
フクスケでは、副業の届出制度を実際の制度としてワークさせる副業クラウドサービスを提供しています。
ガイドラインに沿って反社チェックの他に、労務、競業、利益相反、懸念事項を1営業日以内に自動チェックができます。フクスケが判定した事前リスクを元に本業の管理者と社員間で事前のリスクを時系列にログ化します。改変は不可能になっており、トラブルの原因を事前に潰す事ができます。取引開始時は反社認定されなかった潜在企業・個人とのつながりも事後対処の証明になります。
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取材・執筆: 石塚 健朗 (いしづか たけろう)
学生時代よりVC等でスタートアップや大手企業の新規事業創出支援。面白法人カヤックを経てマーケティングブティック「KIUAS」創業。サウナと北欧が心の故郷。
Twitter: @Takeroishi