水野瑠見『十四歳日和』〔2020年首都圏中学入試頻出作品/背景説明・短編あらすじ×4/無料/筋がすべて分かるから読んで楽しみたい子には不向き〕
水野瑠見『十四歳日和』講談社
この作品は2020年に
・学習院女子中等科
・暁星中学校
・慶應義塾湘南藤沢中等部
・帝京大学中学校
・桐蔭学園中等教育学校
で出題されました。
★背景説明
この本は短編集です。一冊のなかに四つの短いお話があります。どの話も主人公も十四歳の中学二年生で、みな同じクラスですから、前の話に出てきたわき役が次の話の主人公になっていたり、前の話の主人公が次の話ではわき役になっていたりします。みなそれぞれの人生では主人公ということですね。
★あらすじ
第一話「ボーダーレスガール」
佐古葉子〔さこ ようこ〕は小学四年生のころから瀬川しおり〔せがわ しおり〕と親友同士でした。二人はどちらも絵が好きで、どちらも自分は地味で目立たないと思っていました。しかし、葉子は中学生になるとクラスでも目立つグループにさそわれます。そのため、本当は美術部に入りたかったのに、周りから地味だと思われているから入らず、しおりとも話さなくなってしまいます。しおりも、目立つ子たちと仲良くなった葉子には声をかけず、一人だけで美術部に入ります。
中学二年生の体育祭で、葉子としおりは応援旗係に選ばれます。同じ係には葉子の今の友だちの宮永朱里〔みやなが あかり〕もいました。朱里は目立たないしおりのことを馬鹿にしています。あるとき、仕上がりかけの応援旗の青い空の部分に赤いペンキが飛び散ってしまいます。朱里はいつもさぼってばかりなのに、うっかりペンキを飛ばしてしまった子を非難します。葉子は勇気を出して朱里に抗議し、前のようにしおりと仲良くなり、好きな美術部に入ることを決めます。
第二話「夏色プール」
新島たける〔にいじま たける〕と牧野芙美〔まきの ふみ〕は小学生のころ同じスイミングスクールに通っていた仲の良い幼なじみです。たけるは芙美の泳ぎの速さが好きで尊敬していました。中学二年生になったとき、芙美は新任の数学の染谷先生を好きになります。夏休み前の水泳大会でクラス上位五人をリレーの選手に選ぶとき、芙美はわざと手を抜いて七位になります。たけるがなぜそんなことをしたのかと聞くと、芙美は息継ぎをするときのみっともない顔を染谷先生に見られたくないからだと答えます。たけるはそんな芙美に腹が立ちました。それからしばらくして芙美の誕生日があり、たけるは母といっしょに芙美たち母子と食事をすることになります。そこで、たけるは母親たちのうわさ話で、染谷先生が英語の若い女性教師とデートしていたという話を聞きます。芙美もそのことを知っているようでした。たけるは芙美をなぐさめようとしますが、かえって怒らせてしまいます。そうして迎えた水泳大会の当日、女子の選手の一人がリレーに出られなくなってしまいます。代わりを決めようともめているところで、思いがけず芙美が代理に立候補しました。芙美は大会ですばらしい泳ぎをみせます。帰り道、たけると芙美は久しぶりに仲良く話をします。
第三話「十四歳エスケープ」
田端律〔たばた りつ〕はクラスでも目立つグループの女の子です。中学二年生の夏休みの直前、律は同じグループの朱里たちといっしょにアイドルグループのオーディションに写真を送ります。すると律だけが一次審査に合格していました。律は朱里たちにはそのことを隠し、SNSの写真投稿サイトのアカウントを作ってそこにだけ一次審査合格のことを書きます。そうしてできるだけはなやかな写真を投稿すると、思いがけないほど沢山のほめ言葉が集まりました。律は投稿に夢中になります。二学期の中間テストの前、律は写真を撮るためだけに電車に乗って、朱里といっしょに行こうと約束していた話題のパンケーキを食べにいきますが、一人では楽しいとは思えませんでした。律はやはり朱里といっしょのほうがいいと思い直して写真投稿をやめます。
第四話「星光る」
矢代大地〔やしろ だいち〕はテストではいつも学年二位です。一位がだれなのかは長いことだれも知りませんでしたが、大地は中二の五月に偶然知ってしまいます。それは目立たなくて家が貧しそうな百井〔ももい〕でした。百井は自分の成績のことを一言も自慢しません。大地はそのために苛立ちを感じています。クラスでドッチボールをしたとき、大地は運動の苦手な百井を「足手まといだ」と責めます。それをきっかけに、百井はクラスでいじめられるようになってしまいます。それでも百井の成績は一位のままでした。十二月の初め、期末テストが終わった後で、百井は成績が悪いと思っているいじめの首謀者たちが成績表を無理やりみようとします。大地は止めに入りますが、みながもみ合いになり、百井がたおれてけがをしてしまいます。しかし、百井は先生にいじめのことを話しませんでした。それをきっかけにいじめがやみます。それ以降、大地がわざと人のいるところで百井に難しい問題について尋ねていたため、百井が学年一位の成績であることがみなに知られ始めます。大地と百井は仲良くなりますが、中学二年の終わりの四月に百井は引っ越してしまいます。大地はいつか大人になったらまた百井と会いたいと願います。
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