レストランウィークの始まり、調べ始めました
ニューヨーク市は今、レストランウィークの真っ最中です。レストランウィークとは、参加するレストランが一定期間、全店に共通の一定額で特別メニューを提供し、各店の魅力をアピールする、というイベントです。ニューヨーク市では毎年、ニューヨーク市観光会議局によって夏と冬とに各1ヶ月間ほど開催され、オフシーズンの街を彩っています。今年の夏は600店を超えるレストランが集まり、30ドル・45ドル・60ドルで如何に個性あるランチやディナーのコースを提供するか、工夫を凝らしています。
Wikipediaによると、ニューヨーク市でレストランウィークが始まったのは1992年、発起人はティム=ザガット (Tim Zagat) 氏とジョー=バウム (Joe Baum) 氏だそうです。その試みが称賛されて巨大なスポンサーが付くようになったため、恒例の大規模なイベントへと成長した、とのことです。
なぜその年に始まったのか。両氏は何者なのか。レストランウィークが現在に至るまで続けられている背景には、スポンサーの獲得による運営基盤の安定、以外にも何か理由があるのか。百科事典を読んでみたら分からないことが増えるのはよくあることですが、暇なので少し詳しく調べてみることにしました。
すると意外にも、レストランウィークについて、Wikipediaより詳細な情報を端的にまとめてくれている本や記事が中々見つかりません。単に私の調べ方が下手だからかもしれませんが、いずれにせよレストランウィークにまつわる諸事を一口に説明することは難しそうです。
そこで今回は、主に雑誌や新聞でのレストランウィークについての記述から、その発端や発展の経緯について見ていこうと思います。ここで調べきれなかった疑問に関しては、もし新たな資料にアクセスすることができれば、次回以降の記事で解決したいと思っています。という訳で、願わくば前菜となる本記事、楽しんでいただけましたら幸いです。
おもてなしから、恒例行事へ。気概と苦労
1992年は、ニューヨーク市で民主党全国大会が開かれた年でした。民主党全国大会とは、アメリカ大統領選挙のある年に開かれ、民主党の大統領候補および副大統領候補を指名し、綱領を策定する大会です。そこへ集まる大勢の報道関係者をもてなすために企画されたのが、レストランウィークの始まりだった、とザガット氏は書いています。
1992年7月8日付のThe New York Timesには、私の数え違いでなければ94店、このイベントに参加するレストランの名前が列挙されています。当時はレストランウィークという呼称が付いていなかったようで、19.92ドルの特別なランチメニューを提供するバーゲン企画である、と説明されています。中には、通常なら45ドルかかるメニューを提供する店もあったそうです。
翌年7月7日付の同紙には、"Restaurant Week" という呼称が見え、NY93 Summer in the Cityというイベントの一環であることがわかります。このイベントは料理に限らず文化芸術や演劇の振興を目指すバーゲン企画だったらしく、その主宰者もまたザガット氏でした。
その後、ニューヨーク市立図書館を通してアクセスできるデータベースで検索した限り、レストランウィークは毎年欠かさず開催されていたようです。2001年2月4日付のThe New York Timesの記事によると、ニューヨーク市観光会議局 (New York City Tourism + Conventions) の前身、NYC & Company がこのイベントを主催し始めたのは1994年、また冬にも開催し始めたのは2000年のことだったそうです。
上に引用した記事では、消費者が格安で料理を味わえる代わりに、レストランの従業員の時給が減っている、という問題が指摘されています。また、アメリカ同時多発テロ事件の直後には、冬のレストランウィークで特別メニューを頼む客が冷遇された例が報告される等、余裕のない中で割引を強いられるレストランの苦難が垣間見えます。
消費者に熱く支持される一方で、運営側の課題も見えてきたレストランウィーク。それでもこのイベントを続ける意義はどこにあるのか。発案者たちの理念はどのようにあったのか。まだまだ疑問は尽きませんが、残念ながら1週間ではまとめきれませんでしたので、今回はここまで。ティム=ザガット氏やジョー=バウム氏について、またレストランウィークの今後については、次回以降の記事で調べ、考えていきたいと思います。私たちが実際に期間中に食べたメニューなんかも、ちょこっと紹介したいですね。
それではまた。
Today's Keyword (もとい、こぼれ話)
Restaurant Week : 日本でもダイナースクラブ特別協賛のフランスレストランウィークが今や年中行事になっているようです。こちらは、2010年にフランスで開催されたレストランウィークが日本へ進出したものだそう。
Churrasco : シュラスコ。ブラジル版の食べ放題焼肉。1週目に勇んで店へ行ったものの、うっかりしたことに土曜日でした。レストランウィークのメニューは土曜日だけ対象外。ただ結果から言えば、煩わしい制限なく好きなだけ焼きたてのお肉を食べられたので、たいへん満足できました。事前に配られた札でお知らせしない限り、次から次へと串刺しの大きな焼肉塊が運ばれてきます。まさに肉林。