夢日記: 冷酷になるには
2021年5月4日にみた夢 :
私たちは駅のホームにいる。私の交際相手は他の友人らとホームへ先に向かっている。
エスカレーターには、何故か裸足の、派手な髪色をした男が立っている。それを警戒した私の女友達が、物騒で不安だからと突然私の手を握る。その手は暖かくて柔らかく、私の手の表面を溶かしてしまう。溶着した手はなかなか振り解くことができない。仕方ないので、皆に見えないように身体の向きを変えてそれを隠す。
その一連の出来事をどこかで見ていたのだろうか、彼女から送られてきた「この後暇だから会おう」というメッセージだけが取り消されている。
いつのまにか振り解けていた手にも気づかず、私は彼女の乗る電車に駆け込む。私は彼女の顔を見るが、表情は驚くほど飄然としている。
情景が変わり、ファストフード店のフロアがそのままバスになっている。
私はどの席に座るか決めかね、結局端にある誰もいない2人用のソファに腰掛ける。突然私の後輩が話しかけてくる。何を言ってるか分からないが、とにかく私は会釈する。
席の向こうでは別の若い男女が痴話喧嘩をしている。無論、皆私が知っている人間だ。
いつのまにか私の隣に座っていた後輩の表情からして、どうやら三角関係のようだ。
男と女が何かを静かに言い合い、2人は私の隣に座った後輩を見る。突然フロアに沈黙が流れる。
後輩は下を俯いて、1人でグズりだす。慰めのつもりでその女の肩をポンと叩いたのが凶、女が突然私に勢いをつけて寄りかかってくる。そしてまた不幸にも、彼女がそれをフロアの向こうから見ていたのだ。
何も説明もできない状況で一種の諦めに達していると、彼女は横に座っていた男に襲い掛かるように抱きつく。その刹那、私たちは少しばかり目が合う。彼女の目線には全ての情報が詰まっていた。そして彼女は男と熱い接吻を交わす。
私は全身の酸素が抜けるくらいの大きなため息をつく。大切なものを守るために、冷徹になって他の何かを突き放すことが出来なかったことを心底後悔する。
「こんなこと、昔から分かっていたことじゃあないか」と私は自分に説教を始める。車窓から見える、険しい山上の雲で霞んだ白と緑の織りなす美しい景色に相まって、私はもっとやるせない気持ちになる。
「幸せを享受するには、もっと残酷にならないとダメなんだなあ」と、朝から来たもう1人の私がつぶやく。