冷静と情熱の間  江國香織

恋愛小説が苦手だった私が、とてもはまってしまった本です。

恋愛がうまくいかないことが多かった私には、素敵な話だと、落ち込んでしまうので恋愛小説は嫌煙していました。                              
読んでみようとはしても、途中で苦しくなって読み進めることを辞めてしまうことが多かったです。

この本も恋愛小説ですが、仲のいい先輩が「おすすめだよ」と、プレゼントしてくださり、とりあえず読んでみようと思えたので読む機会に恵まれました。本を贈っていただけることが、なんだか特別に嬉しかったです。

【あらすじ】穏やかな恋人と一緒に暮らす、静かで満ち足りた日々。これが本当の私の姿なのだろうか。誰もが羨む生活の中で、空いてしまった心が埋まらない。十年前の雨の日に、失ってしまったなにより大事な人、順正(じゅんせい)。熱く激しい思いをぶつけ合った私と彼は、誰よりも理解し合えたはずだった。けれど今はこの想いすら届かない。永遠に忘れられない恋を女性の視点から綴る、赤の物語。


読み終わりたくない、と思いながら大切に読み進めました。瑞々しい表現が随所にあり、小説の始まりから終わりまでずっと湿度がありました。
その湿度がとても心地よかったのです。                   そして主人公の「あおい」がとにかく魅力的でした。彼女の虜になってずっと読んでいたように思います。あおいは、美しく聡明で、寂しそうな強い女性。目の前で見ているかのように鮮明に、あおいの髪型や洋服、食べるもの、彼女がもつ簡単には近づけないような美しくも冷たい雰囲気が感じとれました。活字を追っている、のではなく、長い時間に渡ってそっと覗き見ている経験をしたような感覚がありました。

過去の恋人、経験、決断、に縛られながら異国の地で粛々と生きている女性。内に秘めた感情とともに丁寧に過ごす日常が淡々と描かれていました。過去にすれ違ってしまった恋人を想うストーリーです。決して明るいものではないのですが、過去を想う苦しさに抵抗することなく受け止めているように映りました、そしてその姿が潔くて悲しくてとても美しいのです。報われてほしくて目が離せなくなります。

冷静と情熱の間にある、どうしようもなくコントロールが効かないもの。
過去の後悔に縛れていて身動きがとれず苦しい時間。
忘れたくても忘れられない記憶をもっていることの幸福。

私はどこかで恋愛って作り物みたいに輝いているべきもの、だと思っていました。
だけどこの小説では。とても日常的に描かれていました。どうしようもない、大切な感情をもったまま日々を重ねていく、生活の側にあるもの。それでいいのかあ、、、と楽になったし、もっと自由でいいんだ、そんな風に写りました。

この小説のように運命の人に出会うことは、現実には中々起こりえないのかもしれません。みんなが報われる恋愛をしているわけではない、とも思います。
だけど、どう思っても自由で。その気持ちは自分だけのもの。ムリにどうにかしなくていいもの、うまくいってもいかなくても、大きな価値があるもの。

恋愛小説好きな方もそうでない方もぜひ。あおいを見届けてください。

影響され過ぎて30の誕生日にドゥオモ行きたかったです(^O^)

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