生きてるだけで、愛。 本谷有希子

本谷有希子さんの「生きてるだけで、愛。」の感想です。



あらすじ

あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ。25歳の寧子(やすこ)は、津奈木(つなき)と同棲して三年になる。鬱から来る過眠症で引きこもり気味の生活に割り込んできたのは、津奈木の元恋人。その女は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るが……。誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代の、新しい“愛"の姿。芥川賞候補の表題作の他、その前日譚である短編「あの明け方の」を収録。



感想


たまに、重たい話を体の中に入れたくなることがあります。

なんだかすごく、落ち着きます。

全ての力を抜いて、ゆっくり底の方まで沈んでいく感覚が心地よくて。

暗くて重たい話なのに、読み終えるとすっきりした気持ちで、不思議と気持ちが軽くなっていました。

 

鬱と躁を繰り返し、過眠の症状の為に、日中を布団の中で過ごす寧子(やすこ)。本当は起きて、働いて。多くの人が送っているような生活がしたいし、他人に迷惑をかけたくない。だけど、みんなが出来ることができない。些細なことで感情は振り切ってしまい、恋人の津奈木にあたってしまう。

 

分かってほしい、のに、分かってもらえない。恋人の津奈木でさえ、自分を分かろうともしてこない。腹正しくて仕方ない。

 

「誰か 自分を 分かってほしい。」という、痛いほどのまっすぐな欲求に共感しました。

そして、「一瞬でも分かり合えたら、それでよくない?」という、救いのある物語に気持ちがほぐれます。

 

一気に読み終えたました。こんなに共感してしまうのは、私だけなのでは。。。という少しの怖さが残り、レビューを見ていたのですが。映画にもなっているこの小説。本も映画も、評価がとても高くて驚きました。

 

鬱という危うい不安定さをもつ寧子ですが、病気ではない、健康的な人でも。思い当たる部分や共感できる感情は、この小説の中に多くあるのではないかなと思います。出会えてよかった本です。書いてくれた本谷有紀子さんに感謝を込めて。



コロナ渦で、閉塞的な空気ですよね。私は人付き合いが多い方ではないし、自粛といっても影響はそんなにないよなあと思っていましたが、じわじわと寂しさが込み上げていることを感じることがあります。昔は起こっていなかったような残酷な事件も多発していて、孤独を感じやすい環境になっているのかなと思います。

 

疲れてもいいから、人込みに埋もれたい。

うるさいくらい賑わう飲食店で、誰かと話がしたい。

知らない人であっても、マスクを外して顔を見せ合いたい。

 

 

少しずつ募る、不満や寂しさに、誰も飲み込まれせんように。


そんなことは大切じゃない、と。楽観的にいられますように。

 

暗くなっちゃったけど、あなたの気持ち、わかります!
寄り添ってくれる本や何かがあると思います!と。言いたかったです(;O;)!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?