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猿博打×かるがも団地 合同企画 三匹と三羽 vol.2『WWW.』上演台本

はじめに

当公演は仲良し劇団・猿博打との合同企画のvol2でございました。

公演フライヤー(製作:古戸森陽乃(かるがも団地))

猿博打については、そろそろ一から説明しなくても「どこかで聞いたことある!」ってなりませでんしょうか!演劇ウォッチャーの皆さま…!
私の所属する劇団・かるがも団地とほぼ同期劇団として、なんだかんだ3年以上の付き合いになる劇団。
村上さん・板場くん・河村さん の3人による、かっちょよビジュアルとくそデカい声、キレのよい身のこなし、強心臓から次々繰り出されるギャグなどなど、八百万の魅力にあふれたエンターテイナー集団です。

2020年以降、全員かるがも団地の本公演に客演として出演していただきました。最近ではかるがも団地の劇団員・宮野が、猿博打の公演で制作スタッフを務めさせていただくこともしばしば。

かるがも団地のnoteにて、劇団員の古戸森がさらに愛を綴っているので、よかったらこちらもみてみてください。

わたしたちと猿博打(=三匹と三羽)のこと|かるがも団地|note

三匹と三羽 集合写真。猿博打の華に便乗させていただきながら。 撮影:稲垣隼さま

三匹と三羽というのは、かるがも団地と猿博打によるがっつり癒着企画。
2021年12月にvol.1 『野良犬』という作品を上演いたしました。
終わって割とすぐに、猿博打からvol.2やりましょうやとお誘いいただき、
ならば次は下北いっちゃおうと気合入れて小屋を抑えたのが大体一年前。

前回に引き続き後味の悪いお話をつくろうということだけは決まりつつ、実際2022年末のチラシ写真撮影の段階では、具体的な構想は殆どみえていなかったのが実情です。『WWW.』というタイトルは、『野良犬』を考えていたころ、もしまた同じような機会があったらそんなタイトルがいいかも、と空想していたのですが、こんなに早く実現するとは。

インターネット。もはや空気のように当たり前に存在するものに、割と正面から手をのばしてみました。手探りのままネットの海を泳ぎ始めたのですが、つくり終えてみると、個人的に随分と遠いところまで流れ着いたな、
という感じがしております。そして自分(の世代)が過去経験してきたことと、今直面していることを、丸ごと入れ込んだような作品になりました。


今回も実力派の客演さんを3名お迎えし、
ひ弱な台本をがっちりと立体化・彩りを加えていただきました。
さらに信頼と実績のスタッフさん、ご来場いただいたお客様、
いつも気にかけてくださっている皆様の支えにより、
なんとかこの作品を完成させ、無事最後まで走り抜けることができました。
厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。


そして、今回も伴走してくれた猿と鴨のゴレンジャー。
現在進行形で迷惑かけ続けてしまっておりますが、
いつもいつも謝謝です。
坂本裕二さんはね、『一番最初に思い出す人達が集まってるのが家族だよ』って台詞を書いたのね。じゃあ今一番最初に思い出す人達って誰なんだろって、ね、私は最近思うんだけども。ね。


さて、当公演の配信版の視聴が2023/04/02(日)よりスタートいたしました。
一度購入していただると2023/4/30(日)まで何度もご視聴できます。
ぜひぜひご検討ください。

 購入ページ
WWW.【三匹と三羽】 | オンライン (teket.jp)

この上演台本をご購入していただいた皆様にも、改めて感謝申し上げます。配信版と合わせてこの台本をお読みいただくのも一興かなと思います。
どこかで感想をいただけたら嬉しいです。
(よかったら配信版をお知り合いの方に勧めていただけたらもっともっと嬉しいです!あのーほんとに!ちょっとね!ロマンとソロバンのつり合いとるのって、大変だよねって話です…!苦笑)

書いている時に考えていたことなどは、記事後半の制作後記に記していこうと思います。

※制作後記は、本記事内に追記の形で2023年4月中に掲載予定です。
配信版をご視聴いただきながら気長にお待ちいただけますと幸いです。


猿博打×かるがも団地 合同企画 三匹と三羽 vol.2『WWW.』上演台本

※本記事後半部分より、PDF版データのダウンロードが可能です。

作中の表現につきまして
◆本作には、東北地方太平洋沖地震の発生時を描いたシーンがございます。
また、作中の話題として東日本大震災について触れるシーンがございます。
◆本作には、セクシュアルハラスメントの描写がございます。

当日パンフレット あいさつ
本日はご来場ありがとうございます。三匹と三羽、です。
明るい劇が主軸の2団体が、暗い話をする合同企画です。
それ、微妙にとっつきづらいのではないか!?
果たして正しいブランディングだったのか!?と迷う時もありますが、
自分が(心から)やってみたかったことであるのは間違いないです。

vol.2の今回はネットからはじまる話です。
私は中学高校の頃は携帯電話を持っていなかったので、
友達などとやり取りをする際は、webメールが主たるツールでした。
今もそのアドレスは私用で使い続けていて、
履歴を辿ると一番古いもので2012年、高2の私がどんな様子だったかが分かります。恥ずかしい。
でも本当に恥ずかしいものというのは、残しておくことすら憚られるものでして、かつてあった08~11年の履歴は完全に削除してしまったわけですね。
そういう、なかったことにしようとしている過去が、私には他にも幾つもある気がしてなりません。

手を伸ばしても届かないくらい、深い穴の奥底に沈めてしまったことを思いながらつくりました。
あまり楽しい時間ではないかもしれませんが、お楽しみいただければ幸いです。

かるがも団地 藤田恭輔

登場人物
大家美知留(おおや みちる・28)…… 村上弦(猿博打)
土浦(つちうら・28)…… 後関貴大
岩井(いわい・35) …… 板場充樹(猿博打)
益子(ましこ・32) …… 小関えりか
堂島(どうじま・36)…… 河村凌(猿博打)
飛雄(とびお・29)…… てっぺい右利き(パ萬)

1.

○回想・美知留の実家(夜)

   2010年。
   実家の部屋で勉強をしている中3の大家美知留。
   風呂から出た美知留の母親、髪をタオルで拭きながら。

母 (ドアをノックする)こんこん
美知留 もう寝る
母 1時やぞ
美知留 わかってるって
母 いくら受験あるからって。授業中寝てたら本末転倒でしょ―
美知留 わかった、わかってるから
母 お母さん明日早いんだから寝坊しても車で送っていかないからね

   母、去っていく。
   美知留、布団に入り、寝たふりをする。

   しばしの間。

   こっそり起きて、布団から出る美知留。
   パソコンを立ち上げ、ブログを開く。
   クリック音。

   (回想終わり)

○オフィス

   瞬間、場所はオフィスに変わる。
   2024年1月。
   大家美知留(28)の勤めるネット広告代理店。
   顧客の化粧品会社とのWebミーティング。
   パワーポイントの資料を提示し、広告の運用実績を報告している。

チーフ にぇ~前月対比ですと保湿クリーム系は、横ばいでして、全体のCPAが目標対比102%、件数は95ですね。Instaよりもgoogleとyahooでのリスティングの方が購入に繋がっておりますので、さらに配信強化して件数取りにいければと
顧客 リスティング?なんだっけ
美知留 あ、あのリスティングは、検索ワードに応じて出る広告ですね
顧客 あ~ね!
美知留 はい、以上が2023年12月分実績の報告です、今後の運用何かご希望あれば伺えればと思うのですがいかがでしょう
顧客 (ぶつぶつ喋っているがミュートになっている)
美知留 あ、あ、えっと、ミュートなってますね
顧客 (喋りに身振り手振りが追加される)
美知留 あ、すみません、ミュートです
顧客 (超表情豊かで、動きも過剰に大きい。しかし何の動きをしているのか全く分からない)
美知留 ミュートなってます!ミュート
顧客 (はっと気が付いてミュートを解除する)や恥ずかしい、フハ、フハ、フハハハハハハハハハ
美知留 ……あ、はい、で、すみません次月の運用に関していかがでしょう
顧客 フハハハッハハハハハ、クックックック……
美知留 ……じゃこのままでいきますね

   時間経過。MTG後。

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