漫画「リアル」よりリアルな観戦体験ー車椅子バスケットボール天皇杯ー
たまにはサッカーではないスポーツ観戦も楽しい。
日本のJリーグがオフシーズンなのもあって、スタジアムでのスポーツ観戦に飢えている。
先週の土曜日、友人がハマっている車椅子バスケットボールの天皇杯があるというので、東京体育館へ行ってきた。
今回開催された車いすバスケットボールの天皇杯は3年半ぶりの開催になったらしい。
前回大会は2019年の5月に開催されたが、以降は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開催されなかった。車いすバスケットボールファン待ちに待った大会だったということだ。
2021年には東京パラリンピックがあり、日本代表が活躍した。私は残念ながらテレビでも試合をフルでは見ていない。だけど銀メダルを獲得し、日本中に感動を与えたことは知っている。この日東京体育館にも東京パラリンピックの日本代表のパネルや写真など多く展示してあった。
■日本代表というフック
この日、3位決定戦(埼玉ライオンズvs千葉ホークス)と決勝(NO EXCUSEvsパラ神奈川SC)を観たのだが、2試合とも東京パラリンピックの時の日本代表選手がいた。
(日本代表選手についているキャッチコピーがクスリと笑いたくなるようなところもいい)。
どの選手もパワフルでスピーディで迫力抜群なのだが、やはり日本代表の選手は特に目を奪われる。単純にうまいというのもあるけど、「あのパラリンピックの時の!」と思うとつい観てしまう。
カタールW杯の後、しばらくリーグ戦がなかったが、間も無く2023年のシーズンが始まる。多くの選手たちは海外でプレーしているので日本国内のスタジアムで実際のプレーを目にすることが少ない。
長友選手、山根選手、権田選手、酒井宏樹選手、町野選手は日本でも観られる。この日、私が車椅子バスケットボールの日本代表の選手に魅了されたように、こういった選手たち目当てでスタジアムに足を運ぶ人たちがJリーグの、サッカーの魅力の虜になったらいいな、と思った。
■大事なことは漫画が教えてくれた
この日車椅子バスケットボールの試合を見るのが初めてだった。だけど、私は大まかなルールを知ってた。なぜか?スラムダンクの作者井上雄彦先生の書いた「リアル」という漫画を読んでいたからだ。
連載が休止しているイメージだったが、2019年に連載再開しているらしい。今回改めて調べた時に、1巻の発売が2001年3月というのを見て震えた。久保建英選手は生まれていない。そんなに前から車椅子バスケットボールを題材にしていた井上雄彦先生すごさたるや!
あと、現車椅子バスケットボール日本代表ヘッドコーチの京谷和幸さんの存在もあったので、車椅子バスケットボールという競技には興味があった。事故でJリーガーとしてのキャリアを絶たれたが、車椅子バスケットボールで日本代表に昇り詰めるってそれこそ漫画か小説のようなストーリーだ。
リアルを読んでいたので、各選手の持ち点数で出場選手を検討しないといけないこと、車椅子は決まったものではなく個々人のカスタマイズであることなどは知っていた。
バスケットボールのルールもスラムダンクを読んでいたのでバッチリだ。
会場ではサントリーが作っていたこの動画が流れていて、とてもわかりやすかった。
競技に詳しくない人でも敷居を高く感じないようにする工夫があったと思う。
■いろんなものを飛び越えて同じピッチに立つパラスポーツの面白さ
試合を観ていてメンバーに女性がいることに気づいた。借りた選手名鑑をみたら「健常者」と書かれている選手もいる。
男女、障がいの有無問わずに同じ試合に出ることができるのだ。
そういえばブラインドサッカー(パラリンピックだと5人制サッカー)もそうだった。日本代表は男女別れているが、クラブごとの戦いだと別れていない。障がいの有無も問わない。
こういう所がパラスポーツの面白さの1つだな、と思う。
■音楽とスポーツ
試合中ノリのいい音楽がずっとかかっていて、スポーツとしての面白さと盛り上がりのエンターテイメントを両立するような空間だった。
行った事ないけど、Bリーグとかもそんな感じのイメージがある。
カタールW杯の時も試合の前・ハーフタイムを盛り上げるDJがいた。
音楽とスポーツは相性がいい。
映画やアニメで使われているスラムダンクの曲が流れると会場がより湧いた印象だった。
新型コロナウイルスの影響でまだ声を出した応援ができない。そんな中でも音楽で盛り上げたり、ハリセンを配布して一体感を作る工夫をしたり、会場をわかせて選手の気持ちを高めようとする雰囲気が作られていた。
■トーナメントの面白さ
3位決定戦と決勝しか観ていないのでそれまでの戦いがどんなものだったか分からないが、3年半ぶりの天皇杯は波乱の結果だったようだ。
11連覇(!!)していた宮城MAXが初戦で敗退した。世代交代もあって、絶対王者がその座を退くことになった。
大会展望によると優勝したパラ神奈川SCは台風の目になれるか?といったところで優勝の大本命ではなかったらしい。
サッカーの天皇杯も2022年の王者はJ2のヴァンフォーレ甲府だったし、全国高校サッカー選手権大会は大会前に優勝候補に上がっていなかった岡山学芸館が優勝した。
トーナメントは一発勝負なので、何が起こるかわからない。
3位決定戦も途中まで、千葉がリードしていたが、3Q以降に埼玉が流れを変えて逆転勝利した。
優勝候補が必ずしも優勝争いをするわけではない。トーナメントの面白さはそこだと思っている。
■優勝セレモニーと商品
天皇杯なので、表彰式もあった。サントリー、三菱電機、日本生命、ヤマト運輸とスポンサーも豪華だ。
3年半ぶりの大会だったからか、優勝セレモニーの運営も戸惑っているように見えた。レッドカーペットを体育館の床に敷くのだが、一度貼った後に、再度貼り直す姿が見られた。表彰をする側にも車椅子ユーザーがいる。そういう配慮もあって、カーペットに車輪がとられないようにする配慮も必要だからかな、と思った。
豪華なスポンサーからは賞品も供出されていた。飲み物系は定番かなと思いつつ、一番気になったのは炊飯器とお米。
米2俵(120kg)のビジュアルは圧巻だ。アスリートにとって食事は基本だから、とてもいい賞品だと思う。数台を想像していたので、どうやって分けるのかな、じゃんけんとかかな?奪い合い?と思ったら「選手とスタッフ全員分」だとアナウンスされていた。
勝手に心配したけど、みんなの分、ちゃんとあってよかった。
■やっぱり現地で観るのが一番だ
この日、BS日テレで放送されていた中継を録画したものを、試合後ご飯を食べに行った友人のお店で見た。
なんか違う。
車椅子バスケットボールの魅力の1つであるスピード感が思った以上にない。
同じ試合を見ているはずなのにテレビと体育館では全然違う。
今回、スタンド席ではなく、アリーナ席で観ていたことも大きかったのかもしれない。
臨場感が半端なかった。
解説があるのはテレビの良さだが、それを差し引いてもやっぱり現地で観るのが一番だ。
また機会を見つけて観に行きたい。