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GFXとSigma Art:85mm F1.4 DG HSM
85mmは35mmフルサイズでは中望遠レンズの花形です。メーカーを問わず様々な性能のレンズがラインナップされています。
一方、120フィルムの中判カメラでは標準域のレンズ。中判らしい余裕のある写りを作る立役者となっています。
では、35mmフルサイズより大きく、120フィルムより小さなフォーマットを持つGFX(44mm×33mm)において、85mmはどんな立ち位置になるのでしょうか?
ポートレートレンズでもなく、標準レンズでもなく、どっちつかずのキャラクターなのか?または両方のいいとこどりなのか?確認してみたいと思います。
諸元
Sigma Art 85mm F1.4 DG HSM
まずはおさらいです。Sigma Art 85mm F1.4 DG HSMのスペックから始めたいと思います。
Artライン基準の卓越した光学性能。究極の85mm F1.4の誕生
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/a016_85_14/
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https://www.sigma-global.com/jp/lenses/a016_85_14/
実物のレンズを持ってみると、「意外と大きい」というのが第一印象になります。
Artライン単焦点の中で比較すると、最大径が一番大きいのは105mm F1.4、続いて2番目が85mm F1.4となります。135mm F1.8と比較すると、85mm F1.4は重量が1130gで同じにも関わらず、最大径・全長がどちらも一回り大きくなっています。大きいレンズには比較的見慣れていますが、それでもデカいなという印象を持たざるを得ません。
フィルター径も86mmと微妙に大きいのですが、私はステップダウンリングを使って82mmにサイズダウンしています。周辺減光が強くなっているかもしれませんが、ケラレになる程ではありません。むしろブラックミストなどのフィルターを他のレンズと共用できるメリットが大きいです。
ちなみに、フードの方もGFXでケラレ無しに使用可能。
光学系は12群14枚とギッシリ。最短撮影距離は多くの中望遠レンズ同様、すこし長めの85cmとなっています。ピントリングは過剰なほどに幅広く、太さも相まって扱いやすいです。
カメラとマウントアダプタ
いつも通りカメラはFujifilm GFX100S、マウントアダプタはFringer EF-GFXを使用します。AE・AF・Exif等の互換性には問題なし。
絞りを開くと周辺減光はありますが、F4~F5.6あたりでそれほど気にならなくなります。FringerのVignetting Correctionも効きますし、絞りによる解像度の変化も少ないので、個人的には絞りを開けてガンガン使いたいところ。
絞ってじっくり撮りたいなら、純正や中判用レンズがありますから、そういったシチュエーションでは席を譲りましょう。
作例
今回はトランジットでイスタンブールを訪れた際の写真です。今回もKANIのブラックミストフィルター(シネマディフュージョン)#0.25を付けっぱなしにしています。本来そういったフィルターを使わないのが正式なレビュー記事だとは思いますが、実際そんなお堅い記事を期待している人は居ないと思いますので、考慮せず載せちゃいます。
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イスタンブールって凡庸な日本人が想像するエキゾチックさが詰まっている街です。キリスト教とイスラム世界が複雑に交差し、極東の島国の対極の歴史が詰まっています。
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イスラムのモスクを見ても、キリスト教の教会を見ても、入口が低く、天井が高い造りになっているのは共通です。見上げるという動作を通じて、荘厳さを作り出すための一種のギミックなのだと感じます。
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それから猫の多い街でもありました。いたるところに猫が走り回り、生活を共にしていました。カメラを持っているとついつい追いかけてしまうんですよね…
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解像度チェック
イスタンブールを撮るのが楽しすぎてすっかりレビューを忘れてしまいそうになりますね。空の写真を見れば分かる通り、すこし周辺減光は強め、周辺部の解像度も中央に比べると少し落ちます。
折角なのでちゃんと解像度の確認もしていきましょう。こちらはモスクの内部の写真。F値はF2.0です。
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GFXはフルサイズより一回り大きいイメージセンサですので、画面左下は本来の使用範囲外となりますが、十分な解像度を保っていることが分かります。画面中央の解像度は申し分なし。模様どころか壁の質感すら伝わってきます。画面内に電球を入れていますが、特に悪影響は見られません。
こちらはF4まで絞った逆光の写真。こちらはRAWから現像しているのでハイライトが抑えられていますが、かなりキツイ逆光のシチュエーションです。中央部の欄干と、右端の釣り竿の切り出しも掲載します。
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中央部の欄干に若干マゼンタの色付きがあります。また、右端の釣り竿は像が少し流れていることが分かると思います。実はこのレンズ、Artラインの他の高解像レンズ(135mmや40mm)と比べると、少し像の流れや色収差が強めな印象があります。
そうはいっても、これだけ厳しい状況でレンズを虐めて、等倍で見てこのレベルの収差ですので、実用上影響することは少ないでしょう。どちらかと言えば、比較対象に挙げた135mmや40mmの性能が高すぎるだけなのかもしれません。
まとめ
作例の項で分かる通り、GFXでも中望遠らしい切り取り感は健在です。しっかり中望遠で撮ったな!と思わせる画面のスッキリ感が見て取れます。
一方で、実際の撮影中の感覚は標準域のレンズに近いです。135mmや105mmなどの本格的な中望遠を使っているときは、少し目を細めて構図を探し、意図的に射線を捉える必要があります。85mmの場合はそこまで考える必要は無く、標準レンズのようにパッと構えてパッと撮れる感覚。
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以前フルサイズを使っていた時も85mmは好きなレンズでしたが、GFXと組み合わせるとより気楽に扱えるのです。カメラを指に引っ掛けながら、イスタンブールのようなスナップが楽しい場所を歩くのは大正解。すこし重くても、それを超える楽しさがあるレンズだったりします。
この記事でArtライン単焦点は望遠側が勢揃いしました。残るは35mmと28mmのみになります。時間があるときに少しずつ記事を書きたいと思います。ではまた。
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