見出し画像

IKEAの棚で3DプリンタBambuLab A1 Miniのエンクロージャーを作る

小奇麗な見た目と高性能な自動キャリブレーションで人気の3Dプリンタ、BambuLab A1 Mini の入れ物を、さっぱりデザインのIKEA家具で作ったらドンピシャだったので、作り方を含めてご紹介。防音・防振にも効果がありました。

ショーケース感ある

基礎情報

BambuLab A1 Mini + AMS Lite

A1 Mini は BambuLab から発売されている家庭用3Dプリンタです。

Bambu Lab A1 mini
https://jp.store.bambulab.com/products/a1-mini

特徴としては

  • 全自動キャリブレーション

  • AMS lite 併用で4色までマルチカラープリントが可能

  • 静音造形(サイレントモードで ≤48 dB)

  • 全金属レールシステム

  • 自動流量補正キャリブレーション

などなど、高性能で便利な機能がてんこもり。しかも組み立て・調整済みで発送されるため、購入後の手間も少なく、誰でも使えて、しかも安い。
SNS上でのユーザーもどんどん増えている印象です。

個人的にはベッドの自動キャリブレーションができること、リニアガイドを採用していること、コスト面が理由で購入に至りました。


エンクロージャー

3Dプリンターの筐体は開放型と密閉型に分けられます。A1 Mini は見てのとおり、造形エリアが外部に露出している開放型。一方、造形エリアをパネルなどで覆ってある密閉型もあります。BambuLabの製品ではP1Sなどが該当します。

BambuLab P1S
https://jp.store.bambulab.com/products/p1s

このような密閉型の3Dプリンターでは、

  • 造形エリアの温度を高く保つことで造形品質を安定させる
    (特にベッドからの剥がれ防止、反りの抑制)

  • 低騒音

  • 樹脂溶解時の匂いの抑制

などのメリットがあります。一方で、

  • コストが高い

  • サイズが大きくなる

  • メンテナンス性が悪い

といったデメリットもあり、高品質が要求されるような高価格帯のプリンターに導入されています。低価格が優先される家庭用プリンターは専ら開放型が多めです。

そうはいっても、購入したプリンターをパネルで囲うだけでちょっと造形品質が上がるなら、一度はやってみたくなるのが人情というもの。開放型プリンターを入れるための後付けエンクロージャーが市販されています。

そういった後付けエンクロージャーは一般的には簡素なポールとビニールカバーの組み合わせで、もはや3Dプリンター用のポップアップテントのような外見。お世辞にもスマートとは言えません。

もうちょっと見た目のかっこいいエンクロージャー、欲しくなりますよね?
シンプルデザインなのに低価格な家具で有名なIKEAの製品を使って作っていきましょう。


エンクロージャーを作る

必要な寸法は

さて、A1 Miniの大きさは下の通り。コミュニティにとてもわかりやすい図が掲載されていたため、引用させていただきます。

Dimensions of A1 mini with AMS lite

これを見ると、横幅600mm、奥行き400mm程度が必須条件となります。実際にはテーブルのケーブルが前後に動くため、奥行きは500mm程度欲しいところです。高さは500mmほど必要。
また、大量に購入したフィラメントの置き場所も何とかしたいところです。


IKEAで棚を買う

上記の通り、A1 Mini を収めるためには横幅600mm、奥行き500mmが必要。奥行きが500mmある製品となると、必然的にPLATSA(プラッツァ)という棚をベースにすることになります。これであれば奥行きは550mmが確保可能。

PLATSA プラッツァ
https://www.ikea.com/jp/ja/p/platsa-frame-white-60386259/

横幅は外寸が600mmのため、内寸で言えば570mm程度しか確保できませんが、A1 Mini本体とAMSとの間を詰めれば何とか入りそうです。
今回は高さが1200mmのものを選びました。

問題は扉選びです。今回は3Dプリンタの稼働状況を目視で確認したいので、ガラス扉はマストなのですが、なんとPLATSAにはガラス扉がラインナップされていません。
他を探すと、BESTÅ(ベストー)というシリーズの中にはGLASSVIK(グラスヴィーク)という製品があり、横幅はPLATSAと同じ600mm。
本来のPLATSAの扉ではないため、無理やりビス止めすれば何とか取付できるだろうと踏んで組み合わせることにしました。

あとは天板のSPILDRA、棚板のHJÄLPA、足のLÄTTHETも併せて購入。天板は無くても成り立ちますが、あると見た目が奇麗です。足の形状はお好みで。

お買い物リストは下の図のとおりです。

お買い物リスト

IKEAのWebショップのリストも作成していますので、こちらのリンクから確認していただくこともできます。IKEAから特にキックバックはありません。

お値段は15,800円なり。一つ一つが安いとはいえ、全部合算してカラーボックスと比べると高いですね。仕方ないのですが。


組み立てる

PLATSAの組み立てに関しては特に書くことはありません。あの取説の独特の作風の絵を読み解きながら、そのとおり組み立てるだけです。IKEAの家具はビスの先端が丸められているなど、怪我しにくい工夫が凝らされているのが印象的ですね。

ヒンジ組付け部

前述のとおり、GLASSVIKはPLATSAの扉ではありません。そのため、PLATSAのヒンジ取付用の下穴は使えません。適当に位置合わせをして、家に転がっていたM4のタッピングビスで固定しました。幸い、ヒンジには調整機構が備わっていて、角度や出代は調整が可能です。扉と本体の隙間はクッションテープで埋めることにしました。


明るくする

そのままでは内部が暗いので、照明を導入します。
Amazonで520mmの長さのLEDとUSBを購入。似たような製品はAmazonに沢山出品されているので、色や明るさ、調光の有無などお好みで。

届いたら天井にビスで固定します。
配線は裏面を通したかったので、PLATSAの背板に穴を開けました。電動リューターを使って、USBコネクタが通る大きさに四角くくりぬきます。

照明と配線

スイッチや電源も同様に、背板をくりぬいて通します。

電源ケーブル貫通部

3Dプリンタでブッシングを作りハメ込めば、穴の形状が少々荒くても見た目はスッキリします。既製品だとうまくサイズが合わなかったりしますが、3Dプリンタで作れば開けた穴の大きさに自在に合わせることができます。こういうところが3Dプリンタの良さですね。


防振する

PLATSAの棚板HJÄLPAは板金で出来ていて結構ペラペラ。そのまま載せると、PLATSA本体が結構揺れてしまいます。海外コミュニティなんかを見ると、石のタイルを敷いている人が多かったので、真似してみることにしました。

近所のホームセンターを覗いてみると、300mm角の石タイルが幾つか。普通の御影石もありましたが、ブルーストーンという品名で販売されているタイルを購入しました。厚みは2mmで、1枚550円程度と安価でした。重ささえあればいいので、基本的には入手性の良いもので問題ないと思います。

それから耐震ゲルと75mm角の溝付き防振ゴムも購入。

上から順に
A1 Mini → 耐震ゲル → ブルーストーン → 溝付き防振ゴム
という順番で重ねています。

振動対策後

耐震ゲルと防振ゴムで振動の吸収特性が違いそうだし、組み合わせた方が効果ありそうよね…って直感でこの組み合わせにしています。根拠はありません。


AMSの引き出しを作る

AMS Lite は A1 Mini に組み合わせる材料供給システムです。見てのとおり、フィラメントをAMSの側面から飛び出たスプールに差し込んで使います。つまり、AMSの側面に壁があるとフィラメント交換ができないのです。

AMS Lite
https://jp.store.bambulab.com/products/ams-lite

いちいちハウジングの中に手を突っ込んでAMSを取り出し、フィラメントの付け替えをするのは面倒。スライドレールを使ってAMSを引き出してこれるテーブルを作ります。

安心のスガツネ工業から長さ500mmのスライドレールを購入。本来は家具の引き出しとかキャビネットに使うものですね。3段引とか完全スライドとか書いているものは、スライドレールの長さが2倍に伸びるタイプです。 

ホームセンターで厚み9mmのメラミン化粧板を購入し、木材カットサービスで500mm×220mmに切ってもらいます。断面の部分は切りっぱなしだと見た目が悪いので、テープを張り付けて処理します。

スライドレール取付後

取付はビス止めで。棚板HJÄLPAは金属製なので、下穴を開けて打ちました。
かなりギリギリ設計でしたが、なんとか収めることができました。

スライドレールを引き出した状態

スライドレールは本来は立てて使うものだと思うのですが、重量も大したことないですし、シリコンチューブのせいで100%引き出すことはないので、大丈夫という事にします。

クリアランスはかなりギリギリ


完成

といった感じで、IKEAの棚を使ってA1 Miniのエンクロージャーを作ってみました。研究用のドラフトチャンバーみたいな雰囲気でいい感じじゃないでしょうか。

ドラフトチャンバーっぽい
内部は明るくてプリント品質の確認もしやすい

A1 Miniの下の空間にはタッパーに入れたフィラメントの保管スペースとして利用しています。

今回のエンクロージャーで実感できたメリットは

  • 防音
    一般的な3Dプリンタと比べてA1 Miniは十分静かなのですが、扉を閉めるとさらに音が小さくなることを実感できます。スマホの騒音計で測定すると、-5dB程度の差がありました。正面が密度の高いガラス扉というのが効いていそうです。
    扉の隙間をもっと詰めたり、ゴムも密度が高いものを使う、棚の裏板に防音材を張るなどすれば、さらに高い静音効果が得られるのかもしれません。

  • 雰囲気温度UP
    秋冬の寒い夜でも、エンクロージャーの庫内は35~40℃程度でプリントできます。いまのところ、ベッドからの浮きや反りに関する悩みはなし。ベッド温度が60℃なので、45℃以上に上がることはありません。

  • 湿度DOWN
    庫内の温度が上がると、相対的に湿度が下がります。雰囲気にもよりますが、秋冬だと庫内が40℃近くまで温度が上がれば、湿度は10%台になります。乾燥までは難しいでしょうが、プリント中の吸湿はかなり抑えられそうです。

  • 防振
    A1 Mini は置き場所が悪いと、自分のヘッドの動きの反動で本体が回り始めたりするのですが、石タイルと防振ゲルのお陰でそういったトラブルは発生しません。高速プリントであっても、棚が振動したり共振したりすることはありませんでした。

  • 整理整頓
    単純に3Dプリンタの部品や材料が1か所に整理され、まとまっているという状態は気持ちがいいものです。

ということで、結構色んなメリットがあります。最初は3Dプリントの品質向上が目当てでしたが、想定以上に防音と防振の効果が大きいという結果になりました。
エンクロージャーとしてだけではなく、騒音・振動にお困りの人のアイデアになれば幸いです。ではまた。


いいなと思ったら応援しよう!

fixsenia
もし記事がお役に立てればサポートをお願いします。 次の制作への励みになります。