パーソナルトレーナーが提案する食事指導の曖昧さ|栄養学
こんにちは!AEGYM髙田です。
この note では主に「独学でパーソナルトレーナーになる」をテーマに、今回は「お客様への食事指導」について考えていこうと思います。
教科書などでは直接的にあまり書かれていないニッチな部分を紹介しています。
今回の内容は分類的には「栄養学」の内容です。
別にパーソナルトレーナーは目指してないけど…
という方も、ダイエット、健康管理、日々トレーニングをされている方であれば、多少なりとも気づきを得られる内容かと思います。
今回の内容は結論から言えば…
パーソナルトレーナーがお客様に提案する食事指導は、決して唯一無二の正解では無く、指導をする側&受ける側も変化を考慮した継続トライが必要です!
という内容です。
こんな様な場合、色んな理由はあるでしょうが、端的に言ってしまえば数値が違うからでしょう。
これは少し語弊がある表現かもしれませんが、決してトレーナーは食事指導ができない、そんな能力はない、と言う話ではなく、指導側が医師であっても、管理栄養士であっても、一方的に百発百中の完璧な食事指導は不可能ではないか、という事です。
食事指導のスタート点
トレーナーがお客様の食事管理をする時に、まず初めに行う事が「現状把握」と「目標設定」かと思います。
おそらく基本的に全トレーナーがこれらを初めに整理すると思います。
(でなければ指導の方向性が分からないので…)
もしお客様側で、これらを確認されずに食事指導をされている方がいらっしゃったら…ヤバイと思って下さい(笑)
そこから、食べられない物やアレルギー、処方されている薬の有無なども確認する流れかと思います。
これらお客様の情報をもとに、トレーナーは食事の提案を行っていく訳ですが、提案の土台となる部分、ベースとなる部分がカロリーの収支です。
かなりよく聞かれるフレーズですが、基本的にそんな物は無く、全てを支配している大原則は「カロリー収支」です。
例え話ですが、
お金は給料や稼いだ分より使えば減っていきます。
使う分より給料や稼ぎがあれば増えていきます。
・新しい服を買ったらダメですか?
・手取りが20万円ですが貯金は増えますか?
と聞かれているのと全く同じで、新しい服を買う事と、手取り20万円な事は、お金の増減とは直接的には関係がありません。
手取りが20万円でも、生活コストが月10万円であれば、8万円分の新しい服を買っても2万円は貯金としてお金が増えます。
仮に手取りが20億円でも、生活コストが月15億円で、8億円分の新しい服を買ってしまえばお金は減ります。
話しを戻しますと、この収支のバランスを考える事がまずやるべき事であり、何を食べるかは次の話です。
食品カロリーの曖昧さ
この「収支のバランスを考える事」が、まず真っ先にやるべき事なのですが、しかし既にこの部分に曖昧さが含まれています。
人間のカロリー収支を考える上で「収」と「支」はそれぞれ…
・収 ➡ 食べ物のカロリー
・支 ➡ 基礎代謝や活動で使ったカロリー
となる訳ですが、どちらも完璧に把握する事が困難な数値です。
食べ物に含まれるカロリーは、実際は測りようがありません。
屁理屈を言うようですが、同じグラム数のトマトを2つ用意したとしても、両者に含まれる水分量や糖分糖度の含有量でカロリーは異なります。
上記、カロリーSlism(スリズム)さんの情報では165gのトマト1個当たりカロリーは33kcalとの事ですが、これは恐らく調査した1個体のカロリーなのか、数十、数百、数千、数万個調査した結果の中央値なのだと思います。
消費者庁の発信する情報で食品表示は…
とされているため、条件を整えて出荷された物に関しても±20%の誤差は含まれる事になります。
全く同じ165gのトマトと言えど、26kcal程度のものから40kcal近い物もあるという事です。
また、食べた人にとってトマト1個は本当に33kcalなのかという点も全く観測のしようがありません。
仮に「熱力学的に1個33kcalだ」という事が完全に保証されているトマトが存在したとして、それを摂取したとしても体内で本当に33kcal分の働きをするか、は全く分かりません。
人によっては、トマトに含まれる成分のうち対応できる酵素や腸内細菌が少なく、思ったより栄養として摂取できない方もいれば、ある程度の食物繊維も分解してしまうスーパー酵素&細菌を所持・飼育している超人類の方は、思った以上に栄養摂取できてしまう場合もあると考えます。
・食品のカロリーも曖昧
・体内での吸収量も曖昧
食事を摂る事だけ考えてもかなり曖昧です。
トマト1個を例に考えると、多少のカロリー誤差では?と感じてしまいますが、1日通して1,500~2,000kcal以上、1週間では10,000~14,000kcal以上の食事と考えると真実はかなり曖昧であると思います。
消費カロリーの曖昧さ
次はカロリー収支で言う「支」の部分を考えてみます。
・支 ➡ 基礎代謝や活動で使うカロリー
これもよくよく考えると正確に把握する事が大変困難です。
食べ物のカロリーと一緒で、実際値を測りようがありません。
一般的に人間の消費カロリーの内訳は…
基礎代謝:60%程度
活動消費:30%程度
食事消費:10%程度
と言われております。
「基礎代謝」は言わずと知れた、システム維持のための身体におけるランニングコスト・固定費のようなものです。
この固定費に「筋肉」が含まれるため、トレーナーは政策演説の如く「筋肉をつけて痩せやすいカラダに!」的な事を言い散らかしている訳です。
(決して嘘ではなく全くその通りだと思います)
「活動消費」は、言葉の通り動く事で消費されるカロリーの事。
これもまた「筋肉」が多い程、一挙手一投足にかかる消費カロリーが多くなるため、トレーナーは政策演説の如く…(以下略)
「食事誘発性熱産生」は、あまり聞き慣れない言葉ですが、食事を摂る事で消化・吸収・エネルギー分配の際に消費されるカロリーの事です。
要は、食事を摂った事で動くハメになった内臓たちの人件費です。
話しを戻しますが、これら全ての消費活動において、どの程度カロリーを消費したのかを正確に数値で把握する事は大変困難です。
基礎代謝は、性別、年齢、身長、体重、体組成などから求める「計算式」が複数存在しますが、結局のところ近似値です。
高性能な体組成計で表示される数値も、これら「計算式」をデジタル化したに過ぎません。
・駅まで歩く消費カロリー
➡ 正確には不明です。
・筋トレによる消費カロリー
➡ 正確には不明です。
食事誘発性熱産生は、食品カロリーの所でお伝えしたように、これまた正確には不明です。
結論、カロリー収支を考えましょう、と言ってみたものの「収」も「支」も正確に計測不可能でした!という感じです(笑)
食事管理の解決策
しかし食事管理は意味が無い訳ではありません。
繰り返しているように「正確には不明」というだけで「大よその見当をつける」事は充分可能です。
むしろそれ以外できない、と思います…。
トレーナーがお客様に行うべき食事管理は、ストラックアウト的な1箇所狙いではなく、ボールにならないようにストライクゾーンを継続的に見極める事です。
もちろん経験と感が鋭い敏腕トレーナーは、バシッと決まるストライク剛速球を初手から繰り出せる場合もあると思います。
が、しかし大半の場合は統計的、確率的にボールにならなそうな領域を、まずは提案してみる、という事になるでしょう。
ここから言える事は、初手でドストライクを出す事は容易ではない、という事で、指導をする側&受ける側も、食事指導によって起きた反応をデータとして蓄積し継続的に試行錯誤しなければならない、という事です。
よく、1回だけパーソナルと受けたい、1ヶ月で効果を出したい、というお客様もいらっしゃいますが、やはりドストライクを出せる確率は低くなります。
それはトレーナー側の知識、経験、質の問題でしょうが!
というご意見も至極その通りですが、やはり成功確率が下がる事は否めないと思います。
トレーナーがベースとなる摂取カロリーを設定する上で、絶対に目標値(体重など)をクリアしたい、と考える場合、上記の誤差や不明確な領域を加味しても結果に影響が無いレベルのオーバーな設定を提案すれば、目標達成自体は可能でしょう。
例えば、上記のような目測で1日の消費カロリーを2,000kcalと”仮に設定”した場合。
お客様が「体重を落としたい」という目標で、1日の摂取カロリーを500kcalまで、と設定すれば、健康的とは思えませんが目標達成自体は可能かと思います。
では健康を考慮して1,800kcal/日までと設定し、毎食、測りながら食事を摂っていただいても、前述の通り、食品カロリー誤差で、実は2,000kcalを超えている場合もあれば、消費カロリーがそもそも2,000kcalでない場合もあります。
結果として、思ったより体重が落ちる事もあるでしょうし、まったく変わらない、むしろ増えてしまった、という場合もあると思います。
実際の食事管理はここからがスタートです。
例えば、1ヶ月の経過データだとして…
・1,800kcalの食事で体重が変わらない
➡ 消費カロリーが思ったより低いか、食品誤差も含め食べている食事内容では過剰または吸収し過ぎてしまう可能性がある
こう言った結果データを蓄積して、修正しながらドストライクを探る作業が本当の意味での「食事指導」だと思います。
豚バラではなく鶏むね肉を食べて下さい!
食物繊維をプラスで摂りましょう!
白米の代わりにお豆腐を食べましょう!
みたいな事も大切ですが、パーソナルトレーナーがやるべき食事管理は、そんな方法論的なものではなく、「パーソナル」と言うだけあって、もう少し歩み寄った長期的な提案が必要だな、と思います。