ベトナムのインターネット管理とデータの置き場:バリア・ブンタウ省チャウドゥク県の35トリリオンドン(約1200億円)のデータ・ストレージ・センター整備計画を支える企業DCH公司
2024年8月7日、ベトナム公安省HPにおいて、「国の機関の情報システムに対するインターネット・セキュリティに関するTCVN(ベトナム国家標準規格)(第1次草案)」が公示され、公衆意見(パブリックコメント)聴取が始まった。ベトナム・ビジネスにおけるインターネット・セキュリティ問題はけっこう深刻だが、政府批判等の表現規制にかかわるものはそのごく一部分だ。セキュリティがしっかりしている企業や官庁で仕事をしていると困惑するのは、ベトナムの官公庁や企業の公式ウェブサイト(HP)がセキュリティホールだらけであること。社内LANとはつながっていない、なかばスタンドアローンのような「ベトナム国内HP閲覧専用ラップトップ」を一、二台ぐらい社内各課においておきたい。経験的には1/3~1/4ぐらいのベトナム官庁・企業HPが、それを見ようとすると「危険です!」という警告が発せられてしまい、「リスク/危険を承知で閲覧する」ボタンを押さないと閲覧できない。その点で、今回のTCVN(ベトナム国家標準規格)草案は遅きに失したぐらいである。いまのベトナムのインターネット管理は比較的おだやかで、表現規制のためにフェイスブックなどのSNSサービスが閲覧できないなどということはまったくない。日本人などの外国人ビジネスマンがベトナムでやむをえず仮想プライベートネットワーク(VPN)を使用するのは、英国政府の親越政策とは裏腹に、ベトナム政府批判を繰り返してベトナムでは遮断されているBBC(英国放送協会)のビジネス関係ページを閲覧するか、海外の動画提供サービス(アマゾンプライムの日本、韓国、米国契約版)を見るためぐらいなのではないだろうか。
*アセアン科学技術ニュース(2024.12)「セキュリティの脆弱性から個人・組織データを守る取り組み ベトナム政府」
さて、現行の2018年ベトナム・サイバーセキュリティ―法(施行細則は2022年)が明確に禁止するのは以下の4つ行為:①反国家活動の扇動等(政府に対する建設的な批判や提言はここには含まれないと理解される)、②虚偽情報(フェイクニュース)の発信、③歴史の歪曲と、④売春活動、に関してである。これらの行為は一般的な外国企業には無関係だが、2018年ベトナム・サイバーセキュリティ―法は、顧客等の企業情報や個人情報をインターネットを使用して収集し開拓する国内および外国企業に対し、そのベトナムでの活動中、そのデータをベトナム国内に置くこと(phải được lưu trữ dữ liệu này tại Việt Nam)を求めている。また、外国企業に対しては、ベトナム支社またはベトナム駐在事務所を置くこと(phải đặt chi nhánh/văn phòng đại diện ở Việt Nam)を求めている。
*2024年国の機関の情報システムに対するインタネーット・セキュリティーに関するTCVN(ベトナム国家標準規格)(第1次草案)(越文)
*JETRO(2022)「2018年サイバーセキュリティー法の施行細則が発効」
バリア・ブンタウ省チャウドゥク県でデータセンター・光海底ケーブル案件が展開しており、Viet Jo 2024.12.18記事などがある。以下、2024.12.21づけ越字紙「マーケット・タイムズ」(ニップソン・ティーチュオン報)から総合電子通信頁「カフェ・エフ」への転載記事(元記事は12.25現在閲覧できない)を訳出する:
バリア・ブンタウ省チャウドゥク県の35トリリオンドン(約1200億円)のデータセンターを支えるビジネス
越字紙「ティエンフォン報」(前鋒報)によれば、2024年12月11日、バリア・ブンタウ省人民委員会庁舎で、ハノイ市ドンダー区に本社を置くDCH建設投資股分公司(DCH)が、「デジタルハブ・スーパーデータセンター事業」と海底光ケーブル事業の実施計画を発表した。現在計画中のデジタルハブ・スーパーデータセンターは、5つのデータセンタービル(データセンターホール)を含む、バリア・ブンタウ省チャウドゥク県の100ヘクタールの面積に建設される。各データセンターホールの合計容量は20MW、5つのDCホールすべての合計容量は最大6,000 rack からなり、その平均容量 は15kW/rack である。これに先立ち、省政府はチャウドゥック県の立地を調査し、両事業の投資計画作成方針をすでに承認済みである。
このデジタルハブ・スーパーデータセンター事業の総投資資本は最大35トリリオンドン(35兆ドン≒2100億円))と見積もられており、DCH公司にとっての最重要事業とみなされている。このセンターは、現行ベトナムで最も高い国際基準である TIA-942-C Rated 4 に従って設計される。デジタルハブ・スーパーデータセンターは、ベトナム全国及び東南部地域において最も大容量のデータセンターになることが期待されている。工事は2つのフェーズからなる。フェーズ 1は2025 ~ 2028 年、フェーズ 2は2028 年以降である。
DCH公司は2008 年 4 月 7 日設立。本社住所はハノイ市ドンダー区オーチョズア坊ヴォーヴァンズン通り58Aにある。現在の企業法定代表者は1974 年生まれのグエン ヴァン タン氏。2021年1月に同社は現行社名に改称し、定款資本を1,200億ドンから6,000億ドンに増加させたところである(記事ココマデ)。
この記事の元記事が「マーケット・タイムズ」HPから削除されているらしいのは、何か理由があるだろうか。他紙記事と異なり、イメージ図が付されていて興味深い。ベトナムのインターネット管理とデータの置き場として、このバリア・ブンタウ省チャウドゥク県のほか、ホーチミンシティー・クチ県においても、同様の計画が進んでいる。以上。