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バリア・ブンタウ省の集落観光(コミュニティーツーリズム):そう簡単な話ではない②

きょうも引き続き、七年前、2018年10月に、バリア・ブンタウ省ベトナム共産党党部機関紙バリア・ブンタウ報に掲載された集落滞在観光記事の続きを読み、さいごに2024.8.07付けバリア・ブンタウ省人民委員会公文第11162号(Công văn số 11162/UBND-VP)「バリア・ブンタウ省2025-2030年段階集落観光商品開発計画」添付付録の主要集落観光事業名簿を付す。

集落観光(コミュニティーツーリズム):そう簡単な話ではない(2):適切な投資の必要性

Phát triển du lịch cộng đồng: Không hề dễ! - Bài 2: Cần được đầu tư.
2018.10.25付けバリア・ブンタウ報記事.

適切な投資の必要性
集落観光(コミュニティーツーリズム)は世界じゅうの国々や都市・農村において成長傾向にある。バリア・ブンタウ省において集落観光が持続的に発展するためには、政府・自治体が投資誘致に向けた方向性を示し、計画を立て、系統立った戦略を立てる必要がある。情熱だけでは十分ではない(訳者注:6年後の2024.10.30、ベトナム文化体育観光省が「ベトナムにおける集落観光開発スキームの承認に関する決定2024年第3222号を発出し、国としての集落観光(コミュニティーツーリズム)開発戦略が示された。日本の観光庁も、集落観光を視野に入れた今後の取組みや、自然保護と観光の両立に関するロードマップを発出している)。
Quyết định 3222/QĐ-BVHTTDL.
Approval of the Scheme for community tourism

トゥーフオン・タッダオ(the Seven Islands)
前回記事(集落観光:そう簡単な話ではない(1))で紹介したトゥーフオン・タッダオ(Tứ Phương Thất Đảo-四方七島, the Seven Islands)飲食・生態観光区の投資者であるグエン・ティー・トゥー/阮氏賜女史の本業は医師である。彼女はバリア市ロンフオク社フオクヒュウ/福有村に3ヘクタールほどの土地を購入し、2004 年いらい、もともと植えてあった木や果樹に加え、多くの種類の木をその土地に植えた。彼女は都会の人々の間に田園で休息する需要があることに気付き、自身の購入した土地に生態観光(エコツーリズム)の用地となりえる空き地が多くあったことから、そのうち1ヘクタールの土地を改修し、より多くの果樹を植え、タッダオ(七島)をつくり、各島に観光客が食事や休憩を楽しめる小屋を建てた。また、観光客がボートや釣りなどを体験できるように、七島の周囲に長さ800メートルほどの人工の川を設計し、掘削した。2016年末、トゥーフオン・タッダオが開園した当初、ここは人気のある観光施設だった。トゥー女史は本業で忙しかったため、その管理を彼女の子供たちに任せたが、子供たちもまた本業で多忙、かつ管理能力が足りず、経営から撤退した。彼女は2018年以降この施設をほかの運営企業に家賃を取って貸し出しているが、新たな責任者たちは改修やメンテナンスに適切な注意を払わず、既存の土地と施設を最大限に利用するにとどまる。そのため、施設はますます劣化し、トゥーフオン・タッダオは徐々に顧客を失いつつある。「家賃収入が月2000万ドン(1000万ドン≒6.2万円として約12.4万円)あるので、わたしたち家族はまだ快適に暮らせている。しかし、わたしの中にはいまも、この土地をよりよいエコツーリズムの場所にしたいという願望がある。いまになって、情熱だけでは十分ではないと気づいた。エコツーリズムを適切に行うには、知識、諮問、計画が必要だ」とトゥー女史はいう。現在、トゥー女史は医師業から引退しており、観光業に専念する時間ができた。 「先月、わたしはカムラン/橄榔とフークオク/富国島でエコツーリズムのアイデア提供を専門とする経営諮問グループと会い地形に基づいたエコツーリズムのモデルについて相談し、設計を依頼した。適切なアイデアを見出し、同じ考えを持つ投資家たちに協力を呼び掛けていきたい」とトゥー女史はいう。

トゥーフオン・タッダオ(the Seven Islands)飲食・生態観光区の島の小屋での食事風景。

ダバク噴水(Silver Stone Fountain)
チャウドゥク県ダバク社ソンホア/山和村のダバク噴水(Giếng Phun Đá Bạc, Silver Stone Fountain)の投資者であるクエッタン/決勝公司の代表レー・ティー・カム・ヴァン/黎氏錦雲女史は、電気、水道、通信接続のための技術基盤が未整備のため、困難に直面している。この観光施設は、開園(2016年7月)以来、現在に至るまで、近隣の煉瓦工場から分けてもらっている電力に依存している。正規の電気料金請求書がないため、運営企業は支払った電気料金を経費として計上することができない。また、クエッタン公司は日々業務で使用する水を確保するために、地下浄水器の購入に4億ドン(1億ドン≒62万円として約250万円)を費やした。クエッタン公司はチャウドゥク県当局に電気、水道、通信基盤の整備支援を要請したが、住民向け需要ではないので、当該地域での民生用基盤整備計画はないとの回答を得た(訳者注:たとえ民生用の技術基盤があったとしても、それを営業用に使えるとは限らない)。クエッタン公司は自力で投資する必要がある。変電施設、電柱、送電線の設置にかかる推定費用は約10億ドン(≒620万円)である。 「適切に投資すれば、観光施設は多くの観光客を迎え入れられると信じたい。しかし、電力設備の自力整備にかかる費用は企業の能力に対して大きすぎる。また、わたしたちの施設はアクセス道路もあまりよくない状態なので観光客送迎用の道路改修にも再投資しなければならない。わたしたちにとって観光施設の運営は現時点(当記事の掲載は2018年10月である)では「適切な時期ではない」とヴァン女史はいう。

政府・自治体からの支援が必要
バリア・ブンタウ省観光局長チン・ハン/鄭行氏はいう:「バリア・ブンタウ省の集落観光はまだ始まったばかりで、自然発生的であり、住民共同体というより住民個人がそれぞれ行なっていて、真の意味での集落観光ではない。いまのところ、それらの経営効果は高くなく、観光資源じたいがもつ潜在能力に見合っていない。また、観光施設に対しても、関連する技術産業基盤に対しても投資が少ないうえ、両者の連携が取れていない。多くの農村地域では、依然として、電気、上水道、通信・インターネット基盤などが不足しており、集落観光に投資することじたいが、魅力のないものになってしまっている。 一部の観光農園では、施設を運営する農家は観光サービスや外国語、適切な宣伝についての知識がないまま、事業を開始してしまっている。観光客に定期的かつ専門的にサービスを提供するためのツアーやルートを作成するための緑化専門家・庭師・旅行代理店・伝統工芸村間のつながりも不足している、この集落観光を拡大し、効果的に促進していくためには、政府・自治体の様々なレベルの担当部門の参加が必要だ」。

先住民族チャウローとの連携:集落観光に向けたチャウドゥク/州徳県の意気込み
このように、集落観光(コミュニティーツーリズム)は、難しい点も多い新しい取組みであるが、実践しながら学ぶという精神のもと、一部の地域では集落観光の発展可能性に着目し始めている。チャウドゥック県人民委員会副委員長グエン・タン・バン/阮晋本氏はいう:「チャウドゥク県における集落観光開発上の特別な利点は、先住民族チャウローの人口が比較的多いことだ(訳者注:ベトナム中部高原・中部南端と東南部の境界山間部に住むチャウロー約3万人、バリア・ブンタウ省約8,000人のうち、その半数以上がチャウドゥク県に住む:県人口157,816人中の4,454人、約2.8%。CHÂU ĐỨC 30 NĂM XÂY DỰNG VÀ PHÁT TRIỂN, 2024, page 66)。チャウローの文化的価値を保存するバウチン民族文化館は比較的広々とした改修と拡張を完了したばかりである。チャウドゥク県はチャウローの人々と連携し、その文化的価値を活用して観光業を発展させることも目指している。チャウドゥク県を訪れる観光客が、チャウローの人々と交流し、その独特の文化を体験し、その優れた特産品を楽しむ機会を得られるようにしたい。県として、旅行代理店やトラベル・オペレータと連携し、チャウローのバウチン(泡征)民族文化館、ベトナム戦争中の歴史的遺跡群、そしてハイテク農場における観光開発可能性を調査し、観光客を県に呼び込むツアーを企画したいと考えている。早ければ2020年までに、チャウドゥク県として文化、精神、環境、リゾート観様々な光の開発に着手したい。わがチャウドゥク県は体験観光への投資も呼びかけている。チャウドゥク県の潜在力、強み、発展の方向性を紹介するため、県人民委員会として、きたる2018年11月に「観光投資誘致セミナー」を開催する予定である」。

チャウドゥク県はチャウローの人々と連携し、その文化的価値を活用して観光業を発展させる。

果樹園観光を後押しするスエンモク/川木県
2017年以来、スエンモク県農民会は会員に対し観光客を迎えるために農園を開放するよう奨励してきた。それは青ざぼん(青皮紅柚)農園から始まり、みかん/蜜柑、たちばな/橘、竜眼、マンゴー、ジャックフルーツ農園へ拡大し、現在までに10名の会員が観光客を受け入れ、農園内で観光客に狩り物や買い物を楽しんもらっている。一部の世帯は、農民会の仲介で、手洗い所、受付、宿泊室、駐車場などの施設に投資するための優遇融資を受け、また顧客サービススキル、プレゼンテーション、ツアー企画のトレーニングなどを受けている。農産物は、観光客が園内で購入してくれる場合、卸売りよりもよい価格になる。「わたしたち農民会は、他の多くの農家たちも巻き込んで、農業観光サービスを発展させていきたい」と、スエンモック県農民会主席チャン・ヴァン・フオン/陳文芳氏はいう。

スエンモク県農民会・青ざぼん(青皮紅柚)農園の Farm Tour

バリア・ブンタウ省観光局による集落観光(コミュニティーツーリズム)調査計画
バリア・ブンタウ省の自然、文化、遺跡群、伝統・地場産業の潜在力と利点を俯瞰できるよう、バリア・ブンタウ省観光局は省全体の集落観光開発のための調査とその実施計画を策定し、2018年中に省人民委員会から承認が得られるよう省内の各部局に意見を求めている。この計画では、省内のどの県や市が集落観光への投資を誘致可能かをさぐる。バリア・ブンタウ省はまた、集落観光に参加する個人や世帯への投資を奨励するための投資誘致方針、支援資金源、インセンティブ・メカニズムや、観光客へのサービス提供に必要な初期設備、知識・スキル、専門技術、基準の研修を支援する政策を策定中である。 「観光商品の宣伝や広告、旅行代理店との連携によるツアーの企画などを支援し、観光客を呼び戻したい」とチン・ハン局長は意気込む。観光局による調査の初歩結果によれば、集落観光開発に適した有望な地域には、ブンタウ市ロンソン社の建築群、ロンソン村の養殖場、ブンタウ第11坊と第12坊の竜眼栽培地域、バリア市ロンフオン坊とキムディン坊の観賞用花卉(かき)栽培、春雨の製造、ハイテク農業、ロンダット県アンガイ村でのバインチャーン(ライスペーパー)作り、青銅鋳造、フオクティン、ロンハイ、フオクフンの漁業、チャウドゥク県のチャウロー民族に関する文化活動とバウチン民族文化館、ベトナム戦争中のバウセン遺跡群、ハイテク農園、などがある(記事ココマデ)。

バリア・ブンタウ省2025-2030年段階集落観光商品開発計画草案(事業名簿)

2024.8.20付けバリア・ブンタウ省人民委員会観光局公文第2458号(Công văn số 2458-CV/SDL-QLPTDL )

拝啓(kính gửi-敬寄)、
バリア・ブンタウ省人民委員会観光局は、省人民委員会の指導的要求に基づいて、「バリア・ブンタウ省における2015-2030年段階の集落観光商品開発計画草案」(訳者注:ここでいう集落観光商品は、お土産品でだけでなく、観光サービス全体を指す)への、内容の調整・補充に関する初歩的研究を完成した。観光局は、草案改善の基礎とするために、また省人民委員会による施行のための参謀となすために、貴機関・単位に対し、2024年8月25日までに、バリア・ブンタウ省地盤上のそれぞれの地方における集落観光事業名簿が規定どおりに実現されているかどうかの確認と、それが直面する諸問題の列挙について、調整し、補充・見直し意見を提出をするよう求める。特に各地方自治体に対しては、添付付録に記載された各事業が適切かどうかの確認と、適切かつ規定どおりに活動している各事業の追加的な紹介意見を提出するよう切に求める。観光局が、その割り当てられた任務を完成するために、関心と調整を賜るよう、貴機関・単位に要請する(添付付録:主要集落観光事業名簿)。
敬具(trân trọng-珍重)。
バリア・ブンタウ省人民委員会観光局副局長、ドー・フオク・チュン(Đỗ Phước Trung-杜福忠)(翻訳ココマデ)。以上。

「バリア・ブンタウ省2025-2030年段階集落観光商品開発計画」草案付録の主要集落観光事業名簿
チャウドゥク県クアンタイン社、OCA 有機カカオ農園の Farm Tour

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