閃亜鉛鉱の発光

閃亜鉛鉱(ZnS)の不純物添加によって発光色が変わる仕組みは、不純物準位(ドーパント準位)とバンド構造の変化に関連しています。以下にその詳細を説明します。

1. バンド構造と不純物準位

ZnSは直接遷移型半導体で、価電子帯(VB)と伝導帯(CB)の間にバンドギャップ(約3.6 eV)があります。不純物(ドーパント)を添加すると、不純物特有の電子エネルギー準位がバンドギャップ内に形成されます。

電子の移動経路:

1. 光励起や熱エネルギーによって、電子が価電子帯(VB)から伝導帯(CB)や不純物準位に励起されます。

2. 電子が不純物準位にトラップされ、ゆっくりと基底状態に戻る際に光を放出します。

3. この放出光のエネルギー(波長)が発光色を決定します。

2. 不純物の種類と発光色

不純物の種類によって形成される準位の位置が異なるため、発光する光の波長(色)が変わります。以下はZnSに添加される代表的な不純物とその発光色です。

3. フォトルミネッセンスと発光色

不純物による準位形成は、ZnSのフォトルミネッセンス(光による発光)の特性を大きく変えます。

純粋なZnS: 紫外線(UV)を吸収して青~紫色の発光。

不純物添加ZnS: 不純物準位を経由した低エネルギーの光(緑、黄色など)を発光。

4. 欠陥との相互作用

不純物だけでなく、ZnS内の格子欠陥(亜鉛空孔や硫黄空孔)も発光特性に影響を与えます。例えば、不純物準位と格子欠陥準位が相互作用すると、発光効率や発光波長がさらに変化します。

まとめ

ZnSに不純物を添加すると、

不純物準位がバンドギャップ内に形成される。

電子が不純物準位を経由して基底状態に戻る際の光放出エネルギーが変わり、発光色が異なる。

これにより、ZnSの発光特性が制御され、蛍光体や蓄光材料として応用されています。




いいなと思ったら応援しよう!