おばさんは良く笑う
勝負服
おば友は服装は侮れないと思っている。大概、TPOをわきまえながら自分の評価をあげる服を着ている人は人間力も高い。お主出来るなっていう感じである。そして、更に服装上級者ともなると洋服を使って、人の心まで操るらしい。
何時もはグレーを基調にした服装をしているB子が、このところ、時折、赤いワンピースを着て職場に現れる。
「あ、本当に赤い服着てる。しかし、とんでもない存在感ね。若い子が貴女がチーバくんみたいな赤い服着て仕事してるけど、何かあったのかって探りを入れてきたわよ」とおばさんH子。
「チーバくんて千葉県のキャラクターのあれ?これはイッセイミヤケの赤ですから。課長ミーテング用の勝負服。課長にお黙り頂くために着てきてるの」とB子。目力のあるB子が赤いワンピースを着ると、101匹ワンちゃんのクルエラを彷彿させる。
「でも、赤なんか着たらかえってエキサイトしちゃうんじゃない。そんなんでネチネチメガネが黙るの?」
「効果絶大よ。ほら、私って課長に嫌われてるじゃない。この服着てると、課長、いつもより更に苛立つらしくって、会議で同席すると私の顔を見るなり課長の顔が一変に曇って、不快感が丸出しになるの。あのメガネが私のせいで不快になっただけでも、爽快な気分になるんだけど、課長、私と1分でも長くいたくないという態度をありありと見せて、会議がテキパキと終わるのよ。一挙両得」とクールにB子が言い放つ。敵に回すと1番厄介なおばさんだ。
「えー、なんか凄ごすぎる」
笑、笑、笑。
「もしも課長をどうしても許せない事があった時は、この服を着て、わざと課長の隣をキープするの。そして、鼻歌歌いそうなぐらいの上機嫌そうな顔をしながら、課長の方を時折横目で見て、課長がイライラして血圧がジリジリと上がっていくのを楽しむの」
「サイコすぎる、メガネ可哀想」
笑、笑、笑。
「ただ、人間ってやっぱり慣れちゃうでしょう。だから、赤い服の効果がなくなったら、次はピンクのフリフリの服を勝負服にしてやろうと思うけど、どう思う?」と真面目な顔で言うB子。
B子の闘魂は誰にも止められない。ただ、ピンクのフリル服を着て鏡を見てみれば、それがいかに無謀な事なのかB子にも直ぐにわかるだろう。まだ、ふなっしーの方が良いんじゃなかろうかと言いたい気持ちを抑え、おば友はそれも良いかもと軽く話を合わせて笑、笑、笑。
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