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「吸血鬼モノ」の良さを語りたい!!『ポーの一族』
みなさん、こんにちは。好きな作品を語りたいシリーズ、今回は、漫画作品から『ポーの一族』です。本作は、昭和47年(1972年)から『別冊少女コミック』にて2年連載し、平成28年(2016年)に『月刊フラワーズ』にて、連載再開しています。と書きましたが、当時をリアルタイムに知っているわけではなく、2年前ほどに出会い、「なんだこの面白い作品は⁉」となりファンになった者です。
本記事では、「吸血鬼モノ」が好きな筆者の、ツボに刺さった本作品の魅力を語っていこうと思います。構成としては、第4巻「エヴァンズの遺書」から3話、同名の「エヴァンズの遺書」・「ペニー・レイン」・「リデル・森の中」それぞれの話から、ワンポイントずつ「吸血鬼モノ」の魅力を語ります。趣味全開の調子ですので、温かい目でお読みください。では、どうぞ。(あらすじなどのネタバレを含みますので、そこはご注意!)
人の世に紛れながらも、”交わらない”異形さ
「エヴァンズの遺書」あらすじ
「吸血鬼」の少年、エドガー。彼は、”家族”と合流する最中、馬車の滑落に巻き込まれ、大怪我を負い意識を失ってしまう。その後、その土地の伯爵に拾われ介抱をうけるが、なんと彼は記憶を失い、自身が吸血鬼であることすらも、名前以外、何もかも忘れてしまったのである。その後、彼を迎えに、妹のメリーベルがその家に潜入するのだが……。
「吸血鬼モノ」として、ここがイイ!
このお話でのグッとくるのが、エドガーとメリーベルの兄妹の、自身たちだけで完結した世界がまったく揺らがない点です。作中で、記憶喪失の間、エドガーは伯爵やその使用人の方に世話になるわけです。メリーベルも、潜入の際に伯爵の親戚の子たちと仲良くなることで、うまく入り込みます。その少年に心を寄せられたりもします。しかし、いざ、エドガーの記憶が戻るとさっさと二人とも、何の感慨もなく去っていってしまいます。人の世界に紛れていても、そこに心寄せたりはしないという描写が、彼らが人ではないことを表しているようでした。
「こども」の形をした異形の能力と残酷性
「ペニー・レイン」あらすじ
新たに仲間にした少年、アランを連れて、こっそりと別邸に身を寄せるエドガー。吸血鬼として身体をつくりかえている最中のアランは、眠り続けていた。その時、村には盗賊が出たことで、騒ぎが起こる。そこで、彼らに予期せぬ事態が起こることに……。
「吸血鬼モノ」として、ここがいい!
このお話の中で、出ている”彼ら”の特性は、「吸血鬼」に備わる特殊能力や、残酷性です。作中で彼らは、二度、盗賊とでくわすことになるのですが、血を吸い取ることで、簡単に人を殺めることができる彼らには、たいした障害にはなりません。また、大怪我を負ってもしばらくすれば、治ってしまいます。また、作中終盤、その村を通りかかった旅行中の夫妻を、馬車を手に入れるためか、血を得るためにか、簡単に殺してしまいます。「こども」の形をしながらも、異形なものであることが際立つエピソードでした。この際に拾った、夫妻の一人娘が次回につながっていくのです。
心を寄せても、越えられない”現実”の悲哀
「リデル・森の中」あらすじ
前回の物語の最後で、拾われた少女、リデル。彼女は、物心ついたときには、二人の少年と、森から森へ旅をする生活を送っていた。「リデル人形」と呼ばれ育てられた、彼女は、外の世界のことは何も知らなかった。彼女にとって、世界は二人の少年だけだったのだ。そんなある日、10歳なった頃、馬車で連れて行かれたのは、大きな屋敷の前。そこには、祖母と名乗る人物が。振り返ると、もう彼らは……。
「吸血鬼モノ」としてここがいい!
本話では、人間の少女、リデル視点で語られます。エドガーとアランという「吸血鬼」の少年たちに育てられた彼女。最も読者に訴えかけてくるのは、祖母の下に返されてからの、心の動きです。彼女は、ある時、気付いてしまいます。育ての親たちが、自分が成長する中でも、まったく年をとらなかったことに。ここで、彼女のセリフを引用しましょう。
彼らはそのままなのだ
わたしだけが年ごとに年をとり
だから彼らはわたしを見はなしたのだ
その晩から、彼女は毎晩、窓を開けて寝るようになります。彼らが迎えに来てくれることを願って……。それでも、月日は流れ、彼女も大人になり、妻になり、母になり、最後のシーン、年老いた彼女は、夫に語りかけます。自らの思い出にだけ残る、二人の育ての親と過ごした日々を。
語るのは大野暮なので、感想だけ。もう最高な読後感でした!!
以上、『ポーの一族』のすばらしさを「吸血鬼モノ」という目線で語ってみました。「異形と人との関わり」を描く作品が好きな方、「吸血鬼」系が好きな方に是非、お勧めな本作。何十年前に描かれた作品であっても、色褪せない面白さが、ここにあります!ここまでお読みくださりありがとうございました。