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vol.3 真実はいつも一つとは限らない~腕利きの探偵が必要になった時に聴く音声~

探偵小沢 覆面太郎弁護士 サウザーの白熱教室
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※試聴版。オリジナル版(01:00:35)は購入後に視聴可能。

第三話(全六話)
「見た目はオッサン、中身もオッサン。探偵小沢です。」

このキャッチフレーズを聞いた人も居るかと思う。YouTubeやX(旧Twitter)で発信を続けている私立探偵の小沢さんが今回のゲストだ。

探偵ーーこの単語を耳にした時、多くの人は赤い蝶ネクタイの少年が頭に浮かぶ。もしくは彼の仲間(?)たるチョビ髭のオッちゃんとか、ジッちゃんの名誉を大事にする孫とか、はたまたパイプ煙草を咥えた英国紳士あたりだろうか…著名な「探偵」とは。これらの探偵像によって私達には、探偵イコール事件解決、推理のエキスパート、といったイメージが展開される。では本作のメイン講師である小沢さんも「探偵」なので、そのような活動をされているのだろうか?

否、リアルな探偵は全くそんなことはなく、主にやっている仕事は「浮気調査」だ。

謎の密室殺人、不可解な変死、科学技術を用いたトリック等を解き明かすことはない。ラブホに入っていく男女のツーショットを激写して、その写真を依頼主へ仔細な状況報告書とともに提出する。それがリアルな「探偵」の業務、サービスなのである。

まず、このことからお話ししておきたかったのは「探偵」は決してファンタジーな存在ではないということをお伝えしたかったからだ。先述の通り、我々は「探偵」と聞くと赤い蝶ネクタイが浮かんできてしまう。そのため謎にまみれた殺人事件や、華麗なる怪盗が宝石や美術品を盗むみたいなイメージもまた連想される。しかし、そのような事件はまず発生しないので、全てフィクション、つまり探偵という存在もまたフィクションであると思いがちだ。あたかも、ウルトラマンが巨大な怪獣と戦っていることがフィクションだとわかりきっているかのように。ゆえに探偵も、もしかしたら過去にはモデルとなった人物がいたのかもしれないが、現代の日本にはもう居ないのだと、フィクションなのだと思う人も多いかと思う。しかしその職業はリアルな世界の片隅に、確実に存在してきた。そしてもちろん今なお、現実に存在している。それが本作のゲスト、探偵小沢さんなのだ。

現代の探偵ーーいや、現実世界に存在している探偵は、殺人事件の現場には居ない。その多くは、私人の間で発生するトラブル、民事事件の争いに際して必要な証拠を集めるべく暗躍している。間諜として、いわば現代の忍者として、日常生活の裏側をひた走っているのである。

私人の間の争い。数多くあるケースはいわゆる「浮気調査」だ。夫や妻、配偶者が不貞行為をしているのではないか。なんだか様子がおかしい、怪しい言動がある、帰りが遅い。そのような時、事実を知るために繰り出される諜報員がそう、探偵なのである。

このような、配偶者に疑いを持っている状況にあるとき、人にはいくつかの選択肢がある。まずは怒りと悲しみに任せて、激情のまま問い詰める方法だ。しかしながら冷静になって考えてみると、「お前は浮気をしているのか?」と問い詰められれて「はい、しました」などと答える者は皆無であろう。逆ギレしたり、ごまかされたり、証拠を隠蔽されるのがオチだ。こうして感情をぶちまけることは、その場はちょっと気が済むかもしれないが、その後の相手は閉じた貝の如く用心深くなって、証拠を簡単には出さないようになるだろう。これでは何の目的も達成できない。そのためこのような直情的な方式は取らず、一歩踏みとどまる者が多いかと思う。

しかしながらその次に、ではどうするか?と考える。…しかし処方が見つからない。相手のスマホを盗み見ることができれば進展があるかもしれないが、ガードが固くて隙がない。自分で尾行するにしても、うまくやれる自信もない。GPS発信機をつけて行動をモニターすることもできるかもしれないが、証拠としてはちょっと弱いか…誤動作と言われたらそこまでだ。そう思った時に、自分でできることには限界があると気がつく。そうして諦めて泣き寝入りして、その壊れかけた、ヒビだらけの日常生活を、なんとか自分の感情を殺して繋ぎ止めていく日々もまた、地獄であろう。

現在の日本の法律は、離婚することが難しい。もちろん双方の同意があれば、互いに判を押して離婚届を提出して終わりなのであるが、そうはならないから皆、苦労をする。片方が離婚を望み、それを拒否する相手に受理させるには相手を「有責配偶者」にすることが確実だ。そして離婚を成立させるだけでなく、慰謝料と財産分与等の交渉を有利に進めていくこともできる。離婚とは、単なる男女が別れるという意味だけでなく、法的な契約の解消に近いーーというかそのものであるから、感情だけでなく、このような醒めた部分での冷静さが求められる。

そしていざ、自分が離婚闘争という盤面の前に立ち、相手と対局をしていくのであれば、どうすれば自軍にとって最適な解を得られるのか、腕組みをして真剣に考えていかねばならぬ。そうしてみると、上述の「激情に任せて相手を問い詰める」という一手は、悪手であるということもわかる。リスクの割に、得られる実利がほぼ無い。

どのように組み立てれば、相手の不誠実を、客観的に見て証明できるのか?

どのような証拠があれば、それを確実に証明できるのか?

あたかも詰将棋のように、相手の言い訳や逃げ道を塞いで、自分の思うがままの方向へ展開を導いていくのか。この思考に至った時に必要なのが、まず軍師として弁護士。そして優秀な実行部隊、斥候ーーつまり「探偵」だ。

本作は、主に3種類のリスナーを想定して作られた。

1つ目は、相手の不貞を白日の下に晒すため、探偵を使いたいと検討している人。

2つ目は、それをやられそうになっていて対策をしたいと思っている人。

3つ目は、職業としての探偵に興味があり、そのリアルな情報を求める人、および知的好奇心のある人。

作中では、この3つのリスナー像を想定したと明言されている。しかし現代の世を生きる強い男子、もしくはこれからそう成ろうと、そう在ろうとしている男子には法律に対する知見というものは必須だ。法律に対する理解と、そこを基点とする組み立てがなければ、不貞がどうという前に、社会や他人から搾取されやすくなるし、有事の際に戦う術がなくなってしまう。この法治国家で損をしないためのエッセンスが、本作にはある。

探偵という職業を切り口に、その一端を覗いてみよう。

つづく

ヤコバシ著

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