意識低い系転職ジャケ絵

vol.5 意識低い系転職のススメ~これが資本家成りに続く偉大なる道の第一歩目となる~

ヤコバシくん サウザーの白熱教室
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※試聴版。オリジナル版(01:02:59)は購入後に視聴可能。

第五話(最終話)

意識低い系転職は、単に「無気力な労働者」になることではない。その真髄は、自分が提供する「労働力」という商品の単価を最大化しようとする試みである。自分が売る労働力ーーー気力・体力・時間と、その対価である賃金。その交換効率に注目し、妥協を許さず高め続ける試みが、意識低い系転職の正体である。そこには「成長」「やりがい」「アットホーム」といった意識高い、精神的な要素は加味しない。ゆえに意識は低いのである。

安い賃金で長時間拘束され消耗しているブラック労働者は当然として、そこそこマトモな環境にある人こそ、労働力の交換効率を今一度、検証してほしい。たとえ年収1,000万円でも1日8時間みっちり仕事しているなら時間効率は低い。出勤日数240日×8時間=1,920時間、時給換算で5,208円だ。もちろん年収500万なら時給は2,604円となる。サビ残があれば、ますます時給換算は落ちる。時給換算で1万円が目標だ。ちなみにヤコバシくんはゆるふわ勤務で約8,000円であるから、彼もまだ道半ばであり、改善の余地がある。

勤め人という身分においては、報酬である年収は爆発的には増えない。これは枠組みの設計上、致し方のないことでもある。ゆえに勤め人にできることは、いかに労力と賃金の換金効率を高めるかーーー時給を高めるかということだけだ。先述の時給計算にあたり、ヤコバシくんの実労働時間は3時間/日。これで時給約8,000円。これをもし2.25時間にまで削減できたら、時給1万円を超える計算になる。つまり1日あたりあと45分を削減していくのが、彼の次なる課題だ。

こうして振り返ると、1日2~3時間の実労働とは、とんでもなく少ない。勤め人として8時間を雇用されているのに1日3時間の実労働とは、つまり5時間分の時給を雇用主から盗んでいることに相違ない。真の意味で給料泥棒と言える。そんなことが取り締まられずに看過される職場は、この日本にはほとんど存在しないであろう。ゆえにそれが通用する「儲かっている・化学メーカー・営業職」という特殊な環境は、まさに秘匿されし黄金郷―――エルドラドなのだ。

こうしてヤコバシくんは、時給の良い安住の地を見つけた。わずかな労力で多めの収穫が得られる豊穣なる大地。周りの人々は毎日ゆるふわな雰囲気でそこそこに働き、そこそこにお金をもらって、歳をとってーーー円満に定年退職を迎えている。18時から同僚と飲みに行ったり、土日にはゴルフをしたり、不測の事態には御家人として働く…そこには安息なサラリーマンライフが約束されていた。かつての中流階級の生活が、今なお息づいていた。限りなく安全なぬるま湯の温泉郷に、彼は辿り着いていた。あと30年ここにいれば、気楽なサラリーマン生活を送れる可能性は高い。満員電車は少々つらいけど、仕方あるまい。これが凡人の、”普通の”生き方なんだーーーそんな諦観に彼の心はゆっくりと塗りつぶされていった。このぬるま湯は居心地がとても良く、思考放棄して生きていくには十分な性能を備えていた。

さらなる年収アップ転職を目論んだこともある。しかし、現職以上にゆるふわで、かつ換金効率の優れた仕事は見つからなかった。「儲かっている化学メーカー営業職」は”ガチらない勤め人”としては最高峰の換金効率であり、現状の自分にとっての最適解なのだと理解した。あと30年、ここでそこそこに働けばいいじゃないか、年功序列である程度まで給料は上がるようだし、十分じゃないかーーー胸に少々のわだかまりを感じながらも、その正体はわからなかった。そんな折、インターネットという大海の潮騒を掻き分け、耳に届く声があった。

「自分の力で経済的独立をして、ニートになりたい」

ぬるま湯に肩まで浸かっていたヤコバシくんは、ハッとした。それはかつて自分も、少年の日に思いを馳せたユメではなかったか。そんな童心の夢想を忘れ、生活の安定、世間体や見栄に躍起になっていくうちに、いつしか棄ててしまった遠き日のユメ。しかしその青雲の誓いを失うことなく胸に燃やし続け、ついには勤め人を卒業した一人の男がいた。

聖帝サウザーと名乗るその男は、顔出しせず正体不明の、匿名の配信者だった。彼の話に、何故こうも惹かれてしまうのかーーーしばらくラジオを聴くうちに気が付いた。彼は青臭いほどに正直で、純粋なのだと。自らが苦しんだ、残酷な資本主義経済の真実を、偽りなく述べているのだと。20代最後の年、ヤコバシくんがそれまで漠然と感じていたわだかまりの正体を、その匿名の男は教えてくれたのだ。

労働力を売る”勤め人”である限り、真の自由は得られない。

そのことは、知識としては知っていた。『金持ち父さん 貧乏父さん』を読み、ラットレースの存在を知ってはいたのだ。ただーーーそこから脱するという「覚悟」と「手法」が伴っていなかった。そこに現れた男ーーー聖帝は、自身と同じく勤め人の境遇から、苦闘の末に卒業を果たしていた。聖帝の軌跡はまさに手本とすべきロールモデルであり、その姿は彼に「覚悟」を授けてくれた。その独立への萌芽の種は、ヤコバシくんだけでなく日本各地に蒔かれていた。

その種を授けられた者ーーー精鋭達は再び立ち上がる。彼らがまだ勤め人でもなく、就活生でもなく、ただの少年だった頃に抱いていたユメを胸に宿らせて。あの頃の胸の高鳴りだけを取り戻し、聖帝の背中を追いかける。この先には困難があろう。難題があろう。だがやることはもう決まっている。聖帝が示した「オリジナルの商品を作って売る」という道。この道をただ突き進むのみ。近道はない。一歩、さらに一歩。ただひたすらに繰り返す。積み重ねればいずれ必ず、あの遥か遠き背中にも追いつけるはずなのだ。

意識低い系転職はゴールではない。これを読む精鋭諸君には、次のステージが用意されている。

勤め人仕事は意識低く、自分の人生は意識高く。資本家成りに続く偉大なる道に、勇気を持って踏み出そう。

をはり。

著:ヤコバシ



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只今、聖帝・ヤコバシともに多数のお問い合わせを頂いています。個別に対応することは難しいため、質問を募り、多く共通する質問について白熱教室「アンサー編」を検討しています。下記URLにて質問用メアドを公開しますので質問がある方はどうぞ。

パスワード:ヤコバシくんが婿養子になりかかったのは○○○○農家(ひらがな)。

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【オーディオブックの正しい使い方を伝授する】
1.集中して聴かない。オーディオを聴くための時間をわざわざ取らない。スキマ時間や作業時間に『ながら』で聴くのが正しい使い方である。
2.ぼけーっと繰り返し聴く。聴き返すたびに毎回聴こえ方が違うぞ、とか、刺さる言葉が違うぞ、と思ったならそれは良い聴き方。一回で全部吸収してやろう、と言うのは悪い聴き方。
3.PCのnote.muサイトからMP3ファイルをダウンロードする。itunesその他で、スマホに同期する。電車や車での移動中、家事の最中に聴くのが良いと思う。ストリーミング再生で聴くのはあんまりおすすめしないかな。

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