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ピラニア 炎の欠片

炎の欠片

クロエがハンドガンを手に爆破のために豪雨に打たれながら慎重に進むとそこにあるのは密林に設けられた小さな倉庫だった。小さくてボロボロなアパートが乱立しているかのような光景。無機質なコンクリートが嫌と言うほど冷たい。一見不似合いな薄汚く不清潔な建物だ。作戦は現地調達が基本である。

「基本的な物は作れるが…」

初期装備以外は自分で作るか敵から奪うしかない。これは武器だけではなく食料品や医薬品も同じだ。このような倉庫を見つけたら中身を拝借するのも良い時がある。こちらとしても、武器庫は特に重要な補給源だ。倉庫などの補給基地をこちらも利用させてもらうのは以前の戦線でもそれは良く体験した。

「フィリピンの時のようにはいかんぞ」
クロエは過去に経験したフィリピン諸島のジャングル戦での記憶を回想した。東南アジアの作戦では補給線が延びきるとどういう事態が発生するのか良く知ることになった。アメリカ軍部隊から切り離されたクロエは補給を後回しにされた。切り捨てられる手駒よりも大多数の師団を重要とした軍上層部の判断だった。所詮クロエのような特殊部隊兵士は都合が悪くなると痕跡を抹消される運命にあるのだ。存在そのものを消されるのである。

「コロンビアは隅々まで知り尽くしている。」

常に消耗品には気を使うべきだ。嫌な記憶を振り払う。まずは中身を見る。早速手近な倉庫に近づいた。
「使えるものはないか」
クロエは一番近くの倉庫の扉を静かに開けて中を確認した。やはり中には武器弾薬や食料品が山ほど備蓄してある。ここはここら辺一帯のエリアの補給基地でもあるようだ。側には常にトラックが停車してあり泥を掻き分けるように無数のタイヤの跡が残っていた。中には真新しいタイヤの跡もあった。もしや人がいるのでは。

クロエは警戒した。無駄な戦闘は避けたい。それに爆破をするとなっては音も大きい。もし人がいるのでは真っ先に気づかれるだろう。それに必要な物資も調達したい。場合によっては無力化してからの爆破になる。確認が必要だろう。最終的な判断はそれからだ。クロエは身を屈めて倉庫群の奥へ進む。見る限りさきほど倉庫に入ったような形跡がある。ここは酒を保管する倉庫のようだ。周囲に人の気配がする。いるのは間違いないだろう。その証拠にブーツの足跡がクッキリ残っていた。クロエは息を殺し一番奥の建物に近づいた。その予想通り奥から声がする。詰所があるようだ。壁際に移動し近づく。
「排除した方が良さそうだな。数は5人程か。」
中には男達が5人おり酒に酔いながら話しに花を咲かせていた。酔いは相当回っているようだ。屈強な男が5人いる皆筋肉の鎧を見にまとっていた。下品な顔立ちをしている。武器は銃とナイフのようだった。ロシア製の装備だ。

「アサルトライフルとナイフか。たいして問題はない。しかし…」

しかし、屈強な男は厄介そうだ。どう対処するか。勿論クロエには答えは知れていた。一人づつ仕留める。アマゾンの原住民は狩りをするとき確実に獲物を仕留める。サバイバル技術は高いのだ。それを応用して対応する。倉庫の後ろは草むらだ、隠れるのは容易い。自分のテリトリーに誘いだし一人一人相手にせず賢く倒す。そしてクロエは詰め所の屋根に注目した。

「ここに上れば死角を作れるな」

クロエは屋根に上がる方法を確認した。これは使える。人間は分散させてしまえば制圧しやすくなる。それにこの基地にある無線機器などから敵の情報も欲しかった。このような潜入任務では情報収集も行う必要性がある。やることは一つ。陽動して誘き出す。一人づつならば対処は簡単。ハンドガンとナイフを同時に構えられるよう腰に納めると、クロエは壁を数回強くノックして静かに立ち去った。

etc.....

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