fishbowl クリエイターインタビュー MV監督×ヤマモトショウ(中編)
ヤマモト:新体制fishbowlのライブをご覧になられて、どうでしたか?(※この対談は3/20の新体制初ワンマンライブの、ライブ直後に行なわれています)
いしい:ちょっと言葉にならないくらい良かった。
もちろん声の圧が上がったというのはあるけれど、2人が加わったことで既存のメンバーもしっかり底上げされていて、相乗効果でfishbowl全体としてのクオリティが大きく上がったなと思って。
すごく響きました。なんか「いけるな」って思いましたね。
ヤマモト:いしいさんはLittle Glee Monsterのライブなども撮られていたり、色々大きいライブも観てらっしゃるんで。尚且つ、fishbowlの歴史も知っている人にそうやって感じてもらえると、期待感が高まりますね。
いしい:もちろんずっと期待はしてたんですよ。「もっといける」とは前々から思っていたんだけど、今日のライブに関してはなんか一気に行ったな感があるというか。想定外というか、ちょっと言葉にならないんですけど、それぐらいよかった。
――fishbowlのお仕事やチームというのは、いしいさんにとってどういうものといいますか、どういう気持ちで臨んでいるというのはありますか? もちろん、どのお仕事も思い入れはあると思うんですが。
いしい:語弊が出ないようにしたいんですけど、難しいな…。
一番好きな仕事…仕事って言い方はあまり好きじゃないんですけど。個人的にはやってて一番やりがいがある仕事だなと感じてます。比べるものじゃないですけど。
ショウさんも(前編で)言ってたけれど、1つのアーティストを1人の監督がずっとやり続けるのって、そうあることじゃないですし。でもそれをやらせてもらっているからこそ見える部分や、作れるものがあると思っていて。自分的にはそれがやれていることがすごく嬉しい。
ヤマモト:なかなか説明しづらいと思いますよ。この関係が本当に比較のしようがないというか、他に無いから。
でも僕はfishbowlってそういうプロジェクトだと思っていて。
僕は基本的にぜんぶの曲を作っているので、よく「アイデアなくなったりしないんですか?」って聞かれるんですよ。でも、こういう形での人との関わり方をしていたら、絶対になくならない。みんなが僕にいろんな話をしてくれるから。応援企業もそうです。だから常にアイデアに溢れた状態で仕事に臨めている。
それで言うと、映像のところからアイデアをくれるのが いしいさんや映像チーム。
――私から見ても「fishbowl」というプロジェクトチームの一員というイメージでしかなくて。
ヤマモト:それはもう、もちろんそうです。
――曲を作ってる担当、映像を作ってる担当みたいなイメージです。いしいさん以外がMVを作ることが想像できないというか。
ヤマモト:でも、ずっと同じことをやっていればいいと思っているわけではなくて、チャレンジはしていきたい。
fishbowlに新メンバーが入って変わっていったのもそうですし。
例えば「一雨」ではfishbowlで初めて僕じゃないアレンジとして、宮野くん(※宮野弦士さん)が入っている。他にも今回、槙田紗子さんに初めて全体の振りをお願いしていたり、新しいことにチャレンジはしていきたいんです。
でも、だとしても いしいさんには相談したい。それはもちろん、映像の中でも いしいさんが得意なものとそうでないものもあるじゃないですか。僕だってそうです、僕じゃない誰かがアレンジした方がいい曲というのも、実際ある。今回は敢えてそういうものを作ろうともしました。
その上で、それでも尚、相談できる存在というのが大事。
「今回は別のことを試したいから、あの人には話せないな」ではなくて、話した上で「どうします?」と相談できるのが、僕としての仲間。
いしい:それはそのまま同感で、やっぱり1人の監督から出せるものに限りはあるから。今後出てくるショウさんの曲に対して、自分より他の人の方がいいものを作れそうだなと思ったらそっちの方が良いと僕も思う。
ただ、それが誰でも良いわけではなくて。やっぱりそこは自分が信頼できる人にお願いしたいというのは思っていたんです。なので、今ショウさんがそう言ってくれて嬉しい。
そして今回は、たまたまそれが ももちゃん(いしださん)になった。
それに、実際撮影を経て、ももちゃん(いしださん)で良かったなと思った部分もあるんですよ。
多分僕だったら出なかった、ももちゃん(いしださん)だからこそ出た演出があったり。
「メンバー、こういうこともできるんだ」みたいな感情というか、ちょっと悔しくもあったんですけど。
ヤマモト:なるほどね。
いしい:そういう意味でも「一雨」は本当に新しいものになるんじゃないかなと思いますね。
それがまた僕の刺激にもなります。もしまた次、自分がやれるとしたら活かせるかもな、と思ったり。
ヤマモト:僕も今回アレンジをお願いして「やっぱ宮野すげえな、俺にはできねえ」みたいな気持ちはあります。やっぱりクリエイターというか、作る人にとってそういうのは必要ですよね。素直にすげえやつを認めつつも「いや、でもな…!」みたいな。
いしい:そうですね、ほんとうに。「いや、でもな…!」って思いもありつつ。
ヤマモト:それで自分も、もっと頑張れる。
fishbowlなんて、僕が全部作っちゃって、それで完結しようとすればできちゃう。それでもいいっちゃいいんだけど、そこで踏み出してみて変わるものがある。でも、やっぱり誰でもいいわけじゃない。
いしい:そうなんですよ!
ヤマモト:そこが大事で、それはこれまで積み重ねてきたものがあるので。
別に「安心したいから」というよりかは、チャレンジするために安心すべきところはしておきたい。
そういうのが、今回の「一雨」ではあらゆるクリエイティブの場面であるんですよ。衣装にしても、依頼しているのはずっと作ってくれている岩津さんなんだけど、今までにない真っ青な衣装。fishbowlって実は青のイメージがずっとありつつ、どう使うかは悩んでいたので、今回はそこもチャレンジです。
ヤマモト:もちろん、新メンバーを入れるっていうのが最大の変化の部分。当然ネガティブに受け取る人もいるじゃないですか。
元々やっていた4人だって「なんで?」みたいな思いがなくはない。そりゃあないわけがないんです、人なので。「なんで変化させるんですか?」と思うのは当然だろう。
でもなんか、普通に変化するじゃないですか、人って。
普通に生きてたら変化する。だったらそれを肯定的に、前向きにするためにこそ、自分から変化していった方がいいと僕は思っている。
「なんかいつのまにか変わっちゃったよね」って思われるよりその方がいいじゃないですか。
キープって実はないんです。常にずっと一緒でいられることなんて絶対あり得ないから。
「良く変わる」か「悪く変わる」か。だったら努力できるなら努力して、 良く変わりたい。
でもそのためには、やっぱりいろんな土台が必要で。それが信頼だったりする。
fishbowlはそういう作業をしているんです、常に信頼できる仲間を増やしつつ変わっていく。
いしい:改めて、ショウさんの存在がやっぱりめちゃくちゃ大きいです。
ヤマモト:言ってもプロデューサーですからね。一応、全権責任者なので、僕の存在が大きくなかったら、それはそれでまずいんですけど。
――こんなにファンが多いプロデューサーも中々いないですけどね。
ヤマモト:それは作曲家だから。曲のファンです。でも、もっと僕の名前を超えていってほしいんです。僕、今日のライブはメンバーがそういうのを超えていけるかも、と思った。
いしい:わかるかもしれない。
ヤマモト:それが一番大事じゃないですか。
fishbowlって聞いたときに最初に出てくるのが「ヤマモトショウ」じゃなくて、なんかもっとでかいものが来てほしいんです。もちろん、それはそれでありがたいんですけど。それはあくまで一側面であって、僕は音楽やクリエイティブ面の保証はするけど、それをもっと超えて「このプロジェクトすげえな」みたいになってほしい。
そのためには、もっと色んな要素が必要だし、やっぱりメンバーはその中ですごく重要なポジションなんですけど、なんか「そういうライブやれるかも」みたいなものをちょっと今日は感じた。
いしい:これは語弊がないようにしたいんですけど、やっぱり今まではずっと「ヤマモトショウがプロデュースしてるfishbowl」だった気がしていて。
けれど、それが「fishbowlのプロデューサーは、実はヤマモトショウ」みたいなことになっていくんじゃないかなって思えました。それが少なくとも僕たちだけでも感じているわけだし、見てる人も感じたんじゃないかな。
ヤマモト:実際、プロデューサーはそんなに目立っちゃダメなんですよ。プロデューサーに限らず、クリエイターは。
なのでこれからが楽しみですね。早く超えてくれって思っています。
いしい:ちょっと寂しくはないんですか?
ヤマモト:いやあ、ないです。早くいってほしいって思っています。
理想はクリエイターも含め、みんなが上がっていくのが一番いい。だけどいずれにしろ主役ではないよね、僕らは。
いしい:うん、そうですね。
ヤマモト:「この人たちすごいからもっとこういうの作りたいな!」って思われなくなったら終わりじゃないですか。
いしいさんにとってのそれを、僕だけが担っていたらやばいわけです。
「ヤマモトショウがまたいい曲作ってるからいい映像作ろう」だけじゃなくて、「メンバーこんなライブできるんだ、まじでやべえ」と。
いしいさんだけじゃなくて、スタッフも含めて関係者の「今回いいっすね」みたいな、そういうのが全部大事で。
それが「よし、次ももっとやるぞ」となる。循環するんです。
循環、「一雨」のテーマのここに帰ってきましたね。
全く同じままで戻ってくるわけじゃないんです。
だけど、 そうやってどんどん回りながら積んでいく。
「一雨」はまさにそういう曲なんです。
いしい:今回、fishbowlにとってすごく大事なタイミングで、しかも「循環」がテーマであるこの曲に携わらせてもらえたことは、今の自分にとってもすごく意味のあることだと感じています。
ショウさんはもちろん、声をかけてくれたももちゃん(いしださん)にも感謝しかないです。
この作品を自分にとっての復帰作として、これからまた頑張っていきます。
今後も、ぜひfishbowlの映像まわり含めて楽しんでもらえたら嬉しいです。
後編につづく