あの日、あの人は何を言おうと思ったのだろう 2回
彼女は児童書の黙々と仕事を続けていた。彼女の先輩社員は2人と契約社員1人。全員女性。先輩社員のリーダーは頼りがいがあり優しく後輩から慕われていた。2番手の社員は感情の起伏が激しくすぐ怒りだすとこれまた手に負えない人。契約社員はそんな2人の緩衝材なような性格だった。
彼女は持ち前の明るさですぐその仲間に溶け込んでいった。でも心の中は僕と同じでこの仕事を好んでいたわけではない。と言うのも元々、書店に就職したかった訳ではなく出版社に入りたかったが全て落ちてウチの会社に来ることになったからだ。
つまり僕と彼女は仕事に対してやる気があったわけではなかったのだ。
ただ忙しくて目が回り、ひたすら仕事をこなす毎日だった。
そんな2人は仕事終わりに食事に行くことだけが楽しみになっていった。会社の近くにある駅ビルにハングリータイガーというハンバーグの美味しい店があり何かあるとそこに行って愚痴を言ってメシを食うのだ。そこで今日あった出来事や先輩社員とのコミュニケーションを皮肉と笑いを交えながら毒を吐く。
それが2人の関係が深くなっていく最初だった。
続く