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High-Bio

今はもう昔の話になりますが、もう10年近く前にHigh-Bioという京都大学理学部の大学院生により作られた有志団体がありました。団体結成の目的は、「高校の自然科学系の研究活動を支援して、次世代シークエンサーの普及に貢献する」というものでした。ちょっとした縁があって、支援を受けることになりました。団体自体は早々になくなったのですが、代表の方とは学会友達みたいになっています。

次世代シークエンサー

シークエンス(sequence)は、直訳すると“順序”という意味になりますが、生物ではDNAの塩基配列のことを指します。その塩基配列を解読する装置がシークエンサーになります。現在では、次世代シークエンサーの利用も一般的になっているようですが、それ以前もサンガーシークエンスという方法で塩基配列の解読は行われていました。ただし、特定のDNA分子の解析しかできませんでした。一方、次世代シークエンサーでは、数千〜数百万ものDNA分子を同時に配列決定することが可能になりました。このコロナ禍においては、ウイルスの塩基配列を解読するなど、その性能の高さが発揮されていますが、私がはじめて次世代シークエンサーのことを紹介されたときは、スペックの高さに驚き、何ができるのかと戸惑いました。

次世代シークエンサー.png

DNA解析を用いた寄生虫研究

日本の寄生虫研究は、東京大学医学部でどのような動物にどのような寄生虫がいるかを調べるところから始まっています。現在の動物分類に近いと思います。当然ながら、DNA解析は用いられておらず、形態学的な特徴での分類になります。日本では、五島淸太郎山口左仲ら先人の偉業により、多くの寄生虫が記載されています。しかし、形態学的な特徴での分類には専門的な技術や知識が必要です。言い換えれば、標本作製や精度の高いスケッチをするために修行が必要です。そのため、1960年以降体系的な寄生虫の分類の研究がなされていないことから、DNA解析を取り入れた寄生虫研究の前例が少なく、何をすればよいかわかりませんでした。(*2000年前後からDNA解析を取り入れた寄生虫研究はされていますが、当時論文の入手方法が限られており知りませんでした。)

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始めてから悩もう

私がなかなか研究計画を立てられなかったことから、High-Bioの方が次世代シークエンサーを使ってオヤニラミの吸虫の塩基配列を調べることを提案してくれました。種同定の困難な吸虫の種類がわかっているところに、まだわかっていない塩基配列情報を加えれば、学会で発表できるくらいの成果にはなるのではないかという考えもありました。ただ、私としては体を動かして、できることを増やしていけば、いい案が浮かぶかと思っていました。
RNA抽出系統解析ソフトの使用法プライマーの設計PCR法に必要な資材集めなど多くのことを教えてもらいました。なかなか難しく、生徒と一緒にレクチャーを受けましたが、一番理解が遅かったです。勉強不足、理解不足な質問もかなりしていました。今思うと、知識でしか知らないことをよく偉そうに授業で話をしていたなと…。しかし、だんだんと自分でできることが増えてくると、自分のライフワークとしていたMicrocotyle属単生類の分類学上の課題をこのDNA解析を使って解決できるのではないかと考えるようになりました。


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