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秋が旬!カマス!

秋が旬の魚といえば、名前にも秋が入っている“秋刀魚”ではないでしょうか?最近は、不漁による価格高騰なども話題になっています。他にも、サケサバなど秋が旬の魚がありますが、ここではサンマやサケには知名度で負けてしまうカマスの紹介をします。私の研究テーマの魚の1つでもあるので、これから頑張るぞ!という自戒の念も込めています。

このカマスはアカカマスです。表紙のカマスは多分ヤマトカマスです。


カマスとは

カマスは、スズキ目サバ亜目カマス科に属する唯一の属であるカマス属の総称です。沿岸部で群れを作って活発に泳ぎ回ります。世界では21種報告されており、そのほとんどが釣りもしくは食用になっています。ただ、肉は白身で淡白です。加えて、生では水っぽいため刺身では食べられません。干物塩焼きなど味付けが必要です。私の住んでいる近くでは、京都北部の宮津や伊根がアカカマスを名物にしています。確かに淡白ですが、脂がのっていて美味しいです。

宮津市栗田漁港の浜売りの横。この地域では、魚の仕分けをしている横で直接魚を購入する浜売りが一般的です。この時は、感染症予防の観点から1名しか入れませんでした。魚博士に任せて私たちは海を眺めていました。

南の魚?

2013年に出版された日本に生息する全魚種を載せている日本産魚類検索図鑑には、日本ではカマス属魚類が9種いるとされていました。その後、2018年にトラカマス、2019年にタツカマスが確認されたことから、現在では11種が生息しています。瀬戸内海や日本海周辺の地域では、カマスといえばアカカマスヤマトカマスを思い浮かべると思います。残りの9種は太平洋、特に和歌山、高知、鹿児島、沖縄(あと伊豆半島?)からの報告です。今年(2022年)、土佐清水市で調査をした時には、漁港でアカカマスやヤマトカマスが水揚げされているのも見ましたが、現地の方から「タイワンカマスイブリカマスが欲しければ地元のスーパーに行ってみて」と言われたので、南方には多くのカマス属魚類がいるみたいです。

以布利漁港で購入したタイワンカマスです。50cmはあると思われる大きな個体を入手できました。

食べ比べ!

2021年は、アカカマスとヤマトカマスに寄生する単生類について調べていたので、調査のたびに大量のカマスが手元にのこりました。検査し終わった魚は基本的に食べるので、干物塩焼き煮付けなど多様な調理法で食べました。悪いイメージを持たせてしまうかもしれませんが、正直な感想をいうと淡白と言われるだけあり、しっかりとした味付けが必要でした。特に、塩焼きでアカカマス(宮津産)とヤマトカマス(太平洋産)を食べ比べると、ヤマトカマスの水っぽさが目立ちました。一方、宮津のアカカマスは脂がのっていて美味しかったです。ヤマトカマスを購入された場合は、煮付けや唐揚げのようにしっかり味付けをすることをオススメします。一応、アカカマスとヤマトカマスの区別の仕方を図解しておきます。参考にすることはあるのでしょうか?

相変わらず手書きですいません。区別する場所は鰓蓋の棘と、背鰭と腹鰭の生えている位置です。アカカマスは鰓蓋に棘があり、背鰭が後ろにあります。一方、ヤマトカマスは鰓蓋が丸く、背鰭が少し前にあります。

カマス属魚類の単生類

知り合いの研究者からカマス属魚類に寄生していた単生類の標本をもらったことが、私がカマス属魚類の単生類に興味を持った理由です。この時、オオメカマス, アカカマス, ヤマトカマス, タイワンカマスの単生類の標本をもらい、オオメカマスの単生類については日本新記録&新宿主として日本動物分類学会の英文誌にて報告しました。

他3魚種に寄生していた単生類も、オオメカマスの単生類と形態がよく似ていたことから、同種と考えていましたが、塩基配列が異なっていました。よく形態を観察し直すと微妙な違いがあったことから、オオメカマスの単生類の近縁種と考えられます。
カマス属魚類の単生類は2つの点で興味深いです。1つ目は、オオメカマスの単生類はChauhaneidae科というグループに属する寄生虫です。先述した私の論文でも述べているのですが、Chauhaneidae科と近縁な科で系統樹を作成すると多系統群になります。これは、Chauhaneidae科の単生類と近縁な科の単生類との間で分子系統学的な分類で混乱が起きているということです。解決するためにもっと研究する必要があります。
2つ目は、カマス属魚類にはそれぞれ異なるChauhaneidae科の単生類が寄生していることです。これ自体も珍しいことなのですが、私は共進化が起きているのではないかと思います(注:あくまでも私の想像です)。私が何を考えているのは、「昔々、カマス属魚類の祖先の魚Aがいました、その魚のエラにある単生類Aがいました。長い年月をかけてカマスの祖先の魚が、祖先Bと祖先Cという2種類に分かれました。すると、寄生している単生類もしだいに進化して、祖先Bには単生類bが、祖先Cには単生類cが寄生するようになる。」というものです。
しかし、オオメカマス以外の10種の日本産カマス属魚類に寄生している単生類の種類はわかっていません。まずは1つずつ単生類を解明する必要があります。簡単にできるものではないですが、頑張るぞ!

カマスを料理した様子です。刺身がありますが、これはトビウオの刺身です。また、煮付けのなかにはホウボウも混じっています。ヤマトカマスの味のなさを知った我々は、最終的にホウボウやトビウオの取り合いになりました。あと、ご飯を用意し忘れたのが一番痛かったです。


参考文献

中坊徹次(編) 2013.日本産魚類検索全種の同定. 第三版 東海大学出版会,東京.
Ryohei Miki and Masaaki Wada, 2018 First Japanese records of the barracuda Sphyraena jello (Teleostei: Sphyraenidae) Biogeography 20. 62–66. Sep.
Ryohei Miki, Harutaka Hata, and Hiroyuki Motomura. 2019. Records of the Barracuda Sphyraena qenie from Japan, with Notes on the Taxonomic Status of Sphyraena nigripinnis (Teleostei: Sphyraenidae) Species Diversity 24: 23–27

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