色々な縁に支えられた研究
「謝辞」とは、指導や支援を受けた相手に感謝の意を表すために相手の名前を示すものとなっています。個人で進めてきた分類学の研究ですので、規模は大きいものではありません。しかし、先に紹介したメバル複合種群の単生類の研究の謝辞には、13名+αの名前をあげていました。論文を書いている時には気にならなかったのですが、この論文を読んだある知人から「色々な縁に支えられた研究」とコメントをもらい、改めて研究を形にする大変さに気づきました。寄生虫の研究で13名と言うのは多いと思います。そもそも、日本で単生類を理解している研究者自体10名もいないのではないでしょうか?
「色々な縁に支えられた研究」とコメントをくれた方も謝辞に名前をあげています。この方は、分子生物学が専門で寄生虫については門外漢です。私がこの方と知り合ったのは、この方が10年ほど前に京都大学の博士課程に所属して自身の研究を進める傍ら、次世代シークエンサーの普及のために、生物系のクラブ活動が盛んな高校に研究の支援をする活動をしている時でした。寄生虫の研究にDNA解析の導入を考えていた私にとっては渡りに船でしたが、その当時の私は、PCR法もよくわかっていませんでした。そんな私に時間をかけて、高校でもできる寄生虫のDNA解析を一緒に考えてくれました。
また、勤務校の卒業生もDNA解析の援助を大いにしてくれました。この卒業生も当時は京都大学の博士課程でした(先ほどの方とも知り合いです)。卒業生ということもあり、忙しい合間をぬって来校し、私や生徒相手に解析ソフトの使い方、学会発表のポスター作成などをレクチャーしてくれました。他にも、廉価な解析機器を紹介してくれたのは大変助かりました。(勤務校からは、原則金銭的な援助はありません。現在も、個人で申請した助成金で進めています。)先日、この卒業生が日本生態学会の奨励賞を受賞したと知り大変嬉しく思っています。
他にも同僚の英語の教員も2名入っております。1名はネイティブの方で、偶然にも理系出身ということで論文の英語のチェックをしていただきました。投稿した原稿が、「Major revision (修正)」という形で返ってきたときは大変迷惑をかけてしまいました。というのも、修正原稿提出期限と受け持っていた学年のセンター試験の日がほぼ同じで、私の原稿修正に時間がかかってしまいました。そのため、期限直前にチェックをしてもらうことになり、ほぼ徹夜だったそうです。もう1人は、趣味を増やしたいという理由でメバル採集を手伝ってくれました。2年間ほぼ毎月手伝ってくれました。現在は、結婚してオーストラリアに住んでいますが、釣りはできているのでしょうか?
謝辞で最初に名前を挙げたのは、寄生虫の種同定の方法を指導してくださった大学院時代の教授です。指導を受けていたときは意識をしませんでしたが、寄生虫の種同定は一種のスキルです。メバルの単生類の研究が終わってからも、寄生虫の分類学の研究を続けられるのもこの先生のおかげです。卒業後しばらくやり取りをしていませんでしたが、最近情報交換をするようになりました。
他にも高校時代の恩師や目黒寄生虫館の研究員の方など多くの方の名前を謝辞で挙げました。また、謝辞には名前がありませんが助けてくれた人は数多くいます。1人ではできなかった研究だったということを、決して忘れないようにしたいです。ある意味、この謝辞がこの論文の見どころの1つかもしれません。
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