ゲームで考える野球采配論③ー野手編ー
①投手編
②捕手編
本稿では内野手、外野手のシーズンに関する基本的な話を書いていきたい。若手の育成論や、一年を通した采配や球団としての動きはまた別の記事で追って記したいと思う。
千葉ロッテマリーンズ・内野手成績
内野手登録の選手を一覧する。
川崎 宗則(27)
123試合 .273(366-100)3本29点16盗
.301 .396 .697(出塁率、長打率、OPS)
中村 奨吾(27)
138試合 .283(488-138)18本56点1盗
.326 .475 .801
草野 孝典(28)
131試合 .282(511-144)17本58点2盗
.307 .452 .759
ビヤー(25)
42試合 .269(119-32)3本12点3盗
.276 .420 .696
クルーズ(35)
4試合 .250(12-3)0本0点0盗
.250 .333 .583
中島 卓也(28)
9試合 .111(9-1)0本0点0盗
.111 .111 .222
清田 育宏(33)
1試合 .000(1-0)0本0点0盗
.000 .000 .000
今江 敏晃(36)
60試合 .278(216-60)4本21点0盗
.286 .398 .684
石川 雄洋(33)
22試合 .286(49-14)1本2点0盗
.286 .388 .674
高濱 卓也(30)
3試合 .143(7-1)0本1点0盗
.143 .286 .429
島井 秀浩(23)
52試合 .200(55-11)0本4点0盗
.237 .327 .564
丸山 和史(19)
12試合 .114(35-4)0本1点2盗
.114 .114 .228
田中 広輔(30)
92試合 .273(264-72)2本23点3盗
.334 .379 .713(広島とロッテ合算)
32試合 .330(106-35)1本9点1盗 .783(ロッテ移籍後)
三木亮、井上晴哉、脇本直人、青松敬鎔、早坂圭介、青柳康平は一軍出場無し。
他に、外野手登録だが内野での出場が多かった鈴木大地と吉村裕基の成績。
鈴木 大地(29)
67試合 .279(226-63)3本19点0盗
.302 .367 .669
吉村 裕基(35)
53試合 .298(151-45)9本23点0盗
.316 .543 .859
開幕スタメンの決め方
野手編、といってもなかなかテーマを絞るのが難しい。
一先ず、開幕スタメンの組み方に焦点を置きたいと思う。
以下に記すのは、2019開幕スタメンの選手。
淺間、張志豪、草野、デスパイネ、中村、今江、吉村、小湊、川崎
陽岱鋼のMLB挑戦によって即戦力外野手を欲していた日本ハムは、荻野貴司と淺間大基のトレードを敢行。10歳も淺間の方が若いため、こちらとしても喜んでお受けした。
結果、淺間の方も開幕スタメンをセンターで獲得。角中勝也のFAによる巨人移籍で空いた外野の一角を見事つかみ取った格好。
レフトは張志豪、センター淺間、ライト吉村という布陣で開幕の外野陣は形成された。チーム事情を整理すると張はレフトのレギュラーとして2016シーズンより活躍。不動のレギュラーだ。
ほかに内野陣でレギュラー格なのはセカンドの中村、サードの草野、ショートの川崎の三人、そして指名打者のデスパイネだった。
これまでの実績か、オープン戦の成績か?
さて、ではレギュラーがいない場所は何で決めるのか。脂がのった年齢で、全盛期を迎えた選手がレギュラーならスムーズに決まるが、横一線のポジションというのはどうしても出てくるし、チームの活性化のためにはそういったポジション競争の有無が成績に響いてくるだろう。
ここでは内野手事情を主にしていきたいので、レギュラーがいない一塁手について。一塁を守る事の出来る選手は、今江、鈴木、吉村といったところ。能力値としては鈴木大地だが、私は鈴木大地をベンチ入りさせず。理由は絶不調だったから。オープン戦の成績、つまり開幕の状態というのは重視していきたいところ。吉村も今江に負けたものの、ライトで出場出来たのは外野手が開幕時軒並み不調だったことが原因だ。
三塁手から一塁手にコンバートされた今江はオープン戦も好調であり、ここ数年難しい立場でありながら、出場機会があった際はしっかり結果を残していた。今江が開幕スタメンで何も問題ないか。
他方で、実績という意味で中村や川崎が開幕スタメンであったけれども、勿論一年間のレギュラーというわけではない。例えば内野を一通り守る事のできる鈴木大地には必ず活躍の舞台が回ってくる。
開幕スタメンの面子には一定の打席数を与えるべきだと思うが、調子を崩した際のリザーブメンバーまで考慮してベンチ入りは決めていきたい。結果そういう部分で、守備固めの役割も含めて島井がリザーブとして52試合に出場した。
シーズン中のスタメン
左右の関係
よく野球ファンの間で話題になるのが左右プラトン起用の是非についてだ。相手先発の利き腕によって左打者を起用するのか右打者を起用するのかを考える。これが極端な首脳陣は「左右病」としばしば揶揄され、選手が育たない要因にも上げられる。結局レギュラー選手になるためには左右どちらが相手でも打ち返せなければならない。左右病の首脳陣では、その壁を乗り越える機会を奪うことになる。
シーズン中盤から終盤にかけて順位争いが激化する中で、データ上左右の差が出てくる選手も徐々に現れる。以下の表がその例。
概ね能力通りではあるのだが、それなりに差はついている。ビヤーや吉村のように極端な数字なら考える余地が出てくる。
普段野球を見ていても例えば鈴木大地くらいの左右差ならば、スタメン変更の必要が無いと思う。ただ、いざスタメンを決める側になると吉村や今江を出したいという気持ちも相まって併用を試みてしまう。スタメンとなると先発投手に対して二回、三回の対戦機会が予想されるため左右別打率も捨てたデータではない。
この表のとおり、一塁手は吉村今江鈴木の三人で回し、遊撃手は川崎と田中でシーズン終盤併用したが、吉村にしろ田中にしろ起用にしっかり応えたと言えるだろうか。
守備力か打撃力か?(内野)
内野手において守備は大事だ。突き詰めて言えば二塁手、遊撃手は守備が大切で打力は二の次となったりもする。逆に言えば二塁手、遊撃手の打力が高ければチームは強い。
というわけで2019シーズンショートを守った選手を、守った順に四人比べていきたい。
2018シーズンまで川崎が不動のレギュラーだったが、島井の加入によって少しずつ変わり始める。打力は劣るが圧倒的な守備力を兼ね備える島井がショートとサードの守備固めとして一軍定着。2018シーズンは61試合、2019シーズンは52試合に出場しスタメンの機会もあった。まだ23歳と若いのも魅力。
守りが拙く一軍で使われない選手は現実世界にも多いが、まず守備で安心できるところは大きい。中島卓也が2015年オフに、日本ハムからの持ちかけで加藤翔平とトレードされたが、その上をいく存在になった。
ビヤーは2018の途中加入。ユーティリティー制と肩の強さなど守備面でも安心できそうな戦力として加入。2018シーズンは54試合に出場し打率.276、ホームラン7本22打点10盗とらしい活躍をみせ残留。
ただ作成した当時MLBでの失策数を目にした私はうっかり「エラー」を特殊能力としてつけてしまった。これによりいくら肩が強くても挽回できないポロポロを繰り返し(エラーの記録は二回だけだが)、ダイヤモンドの左側では使いにくいことが判明。捕球や送球の能力もリアルを求めすぎたか。
思ったよりも守備が悪かったが、打撃面では優秀なためショートでも14試合に出場した。
田中広輔はドラフト組の狩野とのトレードで獲得。対左要員として活用した事は既に記した通りだが、非常に使いやすい選手だった。川崎よりも守備は劣るが打撃で勝った。どちらを起用するか、かなり迷うレベルだった。
まず、川崎宗則のシーズン別成績。主に一番を務めた2016からの三年間、チームの躍進に貢献。適度にホームランも打てるし足も使える理想的な一番打者であった。2019シーズンは数字を若干落としたが、対右打率は.284で安定感は変わらず。田中広輔との兼ね合いも先述したように左右の違いだけで守備は川崎が勝った。
ではなぜ、圧倒的に川崎が格上なのにショート118試合の出場で終わったか。まずKONAMIの絶不調時の能力の下がりようが半端ではない事も原因の一つ。もう一つ言えるのは九番でペナントを回った事もあるかもしれない。
オカルトめいた事だ。ただ、九番だとアウトカウントがある場面での打席も増えるし、思い切りのいい打撃は鳴りを潜める。二塁打は32本三塁打も2本今期の川崎は放っているものの、去年一番で回った時と比べ数字は下がっている。(二36三8)数字が下がれば見た目の印象も変わるというもの。
淺間一番固定をチームの方針とした以上、川崎はそのほかの打順に入るケースが増えた。これは代わりがいる打順だったと言える。川崎一番固定のシーズンであれば当然一番固定だが、川崎が六番や九番を打つシーズンでは、結局何番を打たせてもいいし、固定していないのなら誰と交代させてもいいという心理になる。首脳陣は基本的に全選手使いたいし、選手が応えてくれるならば打順の固定はしにくくなるもの。それを固定しなければ!と考えられるほど成績を出せていないシーズンであれば尚更代えられてしまう。
育成とは固定する事であり、我慢することなのだが、一旦レギュラを獲った川崎は来シーズンもレギュラーであるし、決まった居場所があるからこそ他の選手を試しやすくなってしまった。帰る家がある、というようなイメージだ。
守備をとっても打撃をとっても川崎起用が本戦だからこそ、調子が悪い時は他の選手の調子が良いタイミングが来れば、変えられてしまったのだ。
ポジションを複数人で回すという事
下の表は、それぞれのポジションにおいて誰が何試合起用されたかをまとめたもの(スタメン回数ではない)。
一塁手は先述したように併用。表を見ればわかりやすい。ショートの川崎宗則も118試合の出場であり規定打席には及ばず。後半戦、田中広輔がよく起用されていたことがわかる。
さて、そんな中いろいろなポジションを守った選手がいることがわかる。私は阪神ファンなので守備をコロコロ代えることには大いに抵抗があり、ある種拒絶反応レベルなのだが、この点についてはどうか。
まず、主力の守備位置が変わることはない。中村奨吾には外野の守備適正がついているがセカンド一本である(遊撃の1試合は代え忘れのはず)。交流戦等でDHが無くなった際などに草野に外野にいってもらったりしているが、大体は主な仕事場を決められていたと思う。
逆に、レギュラー選手以外となると複数ポジションを守る傾向も強くなる。石川雄洋は一塁で5試合、二塁手で3試合、外野で4試合の起用。ビヤーに関しても一塁以外全て守ったことになる。
しかしながら、リザーブメンバーが複数ポジションを守る事に抵抗はないのではないだろうか。リザーブは空いたところに入るのが仕事であり、だからこそ重宝される。加えて33歳の石川などは「どこかのポジションでレギュラーを獲る」というような立場でもない。良いバランスだったかなと。
千葉ロッテマリーンズ・外野手成績
外野手としてのみ出場した外野手登録の選手
張 志豪(30)
135試合 .280(528-148)9本55点10盗
.293 .441 .734(出塁率、長打率、OPS)
デスパイネ(33)
113試合 .285(400-114)29本75点0盗
.311 .543 .859
横田 慎太郎(24)
106試合 .308(380-117)25本54点1盗
.332 .582 .914
淺間 大基(23)
138試合 .273(553-151)13本39点12盗
.298 .423 .721
長内 信介(23)
71試合 .295(237-70)1本15点0盗
.310 .414 .724
岡田 幸文(35)
52試合 .286(7-2)0本0点0盗
.286 .429 .715
伊志嶺 翔太(31)
36試合 .259(27-7)0本1点0盗
.259 .333 .592
谷口 雄也(27)
4試合 .200(10-2)0本1点0盗
.273 .300 .573
藤原 昭光(26)
35試合 .267(60-16)0本7点0盗
.267 .333 .600
水沢 直輝(25)
9試合 .273(33-9)2本5点0盗
.265 .485 .750
未確定の右翼手起用法
張志豪はレフトのレギュラー、淺間はセンターでレギュラーを獲った。後はライトが競争ポジション兼育成枠ということになる。
ライトで起用された選手は横田、長内、藤原、吉村、鈴木、谷口の六選手。機会の少なかった谷口や一塁手での出場も多かった吉村と鈴木を除けば、横田、長内、藤原の三人がライトを争ったと言えよう。
開幕のライトは吉村だったものの、一塁手今江の調子も好調が続いたわけではないし吉村自身も好不調がある。ゆえに外野に一枠空きがあったことは事実(角中が抜けているのだから当たり前か)。
2018後半から一軍に定着し2019はレギュラー奪取が期待された24歳。まだまだプロスペクトレベルな年齢で25本の本塁打を放った。通算opsも900台を推移しておりリーグ最高打者になる可能性を秘めている。(横田が父親の所属していた球団で大成するというアナザーストーリーが出来るのもゲームの良い部分)
守備力か打撃力か?(外野)
一年間で規定に到達しなくとも25本打てる選手が出てくれば通常その選手がレギュラーだ。しかしそうはいかなかった理由に守備力の有無がある。
比較対象として二人紹介しよう。外野を64試合守った長内から。
2018ドラフト二位で入団した長内。三人指名したドラフトの中で一人大卒と、即戦力系は彼一人だった。結果起用に応えたわけだが、元々これほど能力があったわけではない。ライトの守備の上達スピードが速く、最終的に守備面での信頼も勝ち得たが元は打撃で一軍に登録されている。右投手を得意としある程度走れることから、一軍は近いところだった。逆方向にサヨナラホームランを打つなど定期的に結果を残し、半レギュラーになったのは実績だ。ライト守備C67は充分。
続いて藤原。去年は一軍登録は無くそろそろ厳しくなるシーズンだった。大卒四年目、そろそろ結果が欲しい。その中でそれなりの打撃を見せたうえにシーズン中盤はライトの守備固め要員としても活躍。35試合出場はキャリアハイ。送球に自信がある26歳は抑止力としてのライト守備も出来た。
パワーSとチームでもリーグでも屈指の大砲。御覧の通り、守備範囲が狭くスローイングも平均以下。走力と肩力で補えるにも限度があり実質は指名打者向きの選手。レフトには張志豪というGGレベルの守備が可能な選手がいるため(GGは獲れないが)、ライトを任されるがなかなか課題も残る。
右翼手の適正の一つとして「肩が強い」という要素があるが、やはりそれだけではない。横田慎太郎は肩こそ強いがそれ以外の能力で他二人よりも下回っているのが厳しい現状だ。
シーズン終盤は指名打者の起用も増えた横田慎太郎。規定打席に乗るためにも守備力アップは不可欠で、打棒は魅力なだけにチームとしてもそこのレベルアップは期待したいところ。
ただ、このままだと今年のように長内や藤原も使っていく采配となるだろう。外野守備というのは内野と同じように重要で甘く見ていいものではない。一年通して外野手として試合に出るためには克服しなければいけない要素となるだろう。
守備固め要員の有無
今季内野手では島井秀浩、外野の守備固めとして岡田や伊志嶺がベンチに入ったことがあった。NPBの試合を見ていると、終盤必ずと言ってもいいほど守備固めを起用するチームは多い。セリーグだと指名打者制が無い為その動きは増える。
2019ロッテではデスパイネを指名打者に固定していたので「外国人に対する守備固め」というイベントは生じず。淺間や横田に対して代える事や、代走から守備に入るケースもあるにはあったが、守備固めというのはそこまで必要な事なのだろうか。(岡田と伊志嶺の試合数を足しても72試合。守備固めに積極的ではなかった)
守備範囲の広さ・安定性はかなり重要だが、守備固めを複数人出さなければ安心できないスタメン選手達が私は心配だ。先ほどの章でも書いたが、八回に守備固めを出すとしても初回から七回まで守備を疎かにしているとすればそれは狂気である。
単打で終わっていたものが二塁打になる、二塁でストップしていたはずのランナーが三塁まで進塁する、取れていたはずのアウトが取れない・・・。こういったシーンを見ていると、UZRなどの数字だけでなく、実際にプレーを見て「厳しい」と判断できるのでは?と感じてしまう。
プレイヤーは当然「出来ません、守れません」とは言わないが、それに甘える首脳陣が多い印象。ユーティリティを求めて守備軽視を推進する球団は勉強不足なのではないかと心配になる。
「平均的な守備レベル」がどこのレベルかは判断が難しい。UZRに関しても極端に悪いと何かしら問題がある事が想像できるが、中位レベルでは気にしていられない。チームの総合力を下げない程度の守備力があれば、そのチームは最大限選手の能力値を得られたと言えよう。つまりは、UZRが微マイナスだからといって悪いのではなく、チームにおいて最善の選択が選べているかがポイントとなる。
横田の守備力では使いにくいという話をしたが「彼の打力でカバー」出来る場合には起用出来る。シーズン後半右投手に強いデスパイネに代わって左打者ながら左投手要因として横田慎太郎を指名打者起用していた。結果、左投手に対して.390という高打率を残し、横田自身の地位確立と共に2019ロッテの成績向上に貢献できた。
毎試合における打順論
2019ロッテはどうだったか
近年、セイバーメトリクスによる考え方が浸透し二番強打者論がNPBでも提唱されることが増えた。統計学的には四番は二番と一番の次に大事とされる打順だそうで、優先度は日本野球にある考え方と大きく異なる。
さて上の図は2019ロッテにおいて一番採用が多かっただろう打順。すべてを覚えているわけがないので、断定はできないが概ね。
二番強打者論を念頭に置くとこの打順はどうだろうか。ジグザグ打線という古の考えを用いながら、中村奨吾が二番であっても面白かった。中村奨吾は四球が33個でチーム最多を誇るため出塁能力が高いと言える。ゲームで自操作するとどうしても四球が減るので致し方無いが、当社比で出塁能力が高いのならそれは上位打線に置く根拠になりうる。
一番打順が回ってくる一番打者、一年間でその次に打順が回る二番打者が重要なのは小学生でも分かる論理で、これを適応すれば張、中村の一二番の方が良かったかもしれない。
リーグトップの50二塁打を放った張志豪はチーム屈指の中距離ヒッターであることから、上位での起用が望ましい。長打とはホームランだけではない。安打犠打安打で一点獲る野球よりも、二塁打安打で一点獲る野球を目指したのだ。
采配を前提とした打順?
最新研究が続々と出てくる現代野球において、古くからある打順論には議論の余地がある。「二番はいろいろ出来る打者が良い」とはよく聞くが、非力な打者に一年間託すには少々重い打順だと思う。NPBでは二番にバント要員が配置されることが多いが、「もし初回一番がアウトになったら」「二番から始まる打順だったら」どうするのだろうか。当然バントをするわけにはいかない。
初回先頭打者が出塁する
三番以降のクリーンナップが返す
この打順論はこの二つの要素が揃って始めて成立する。一番打者が.350ほど出塁したとしても残りの65%は二番打者が何とかしなければならないわけで、二番バント要員は勿体ない。得点圏に送れるという安心感だけで打順を決めないでほしい、というのが意見。
2019ロッテでは犠打は25個。
(江村6小湊5淺間3田村,島井,長内2中村草野藤原野村田中英1)
中村や草野にバントをさせていたのか、と驚いたが少ない方ではないだろうか。
短期決戦と長いシーズンでは打順の組方から作戦面まで異なるに違いない。一発勝負のトーナメント戦では効力を持つ作戦もペナントレースでは損になる可能性がある。「毎試合勝負だから」と言えばいいのではなく、選手に合わせた勝利を目指せる采配を目指してほしい。采配ありきの打順理論は目的と手段が入れ替わっていると思う。
基本打順から入れ替える時
打順が大方決まっていたとしても出したい選手は毎日変わるし個人の調子も変動する。どれだけ統計学で解明されても、きっかけが欲しいタイミングはあるし、ペナントなんて起爆剤として二軍から選手を上げる毎日だ。
そこで大切なのは誰を固定するかという事。打順とポジションを合わせて固定される選手こそがレギュラー選手だ。2019ロッテでは淺間から草野、そして中村が130試合に出場しポジションも大方固定された。
123試合に出場した川崎が慣れ親しんだ一番に代わって九番だったのは本人的にもチーム的にもどうだっただろうか。新鮮味が欲しくて一番をガラッと代えてみたが、長打力に優れる淺間なのかミート走塁面に長ける川崎なのか。考察の余地がありそうだ。
現実世界で大山がレフトやライト、佐藤がセカンドとたらい回しにされて憤怒しっぱなしだが、守備コロは絶対ダメだ。準備するタイミングや試合に入るタイミング、何時打席が回ってきやすいかなどのリズムが変わることにおける少しの揺れを首脳陣はわかっているのだろうか。
というわけで、2019ロッテでは固定する選手は決めて運用した。
ということは変わる打順もあるということ。例えば淺間に代わって伊志嶺を起用する際は伊志嶺を下位打線下げ、裏一番を打っている川崎を先頭に持ってくる。デスパイネを外し、横田を四番にする際には下位打線に自由度が生まれるので、吉村や長内、田中広輔などを調子順に置いたりする。
打者タイプの兼ね合いはどうしても生じる。新庄監督が「六番にチャンスが回ってくる」とかオカルトめいた事を言ったりしていたが、六番に置いた方が気が楽だろうか?とか六番七番でチャンスがつくれたらいいなとか考えながら打順は考えるわけだ。数字上は、下位打線の順番に面白みはないがそこは人間がやる事だと考え、大切に決めていきたい。
指名打者の使い方
日本で一番有名な指名打者は誰か?おそらく、大谷翔平だろう。指名打者を休養日と捉え、選手を入れ替えるチームも多い中、大谷翔平はほぼ全試合指名打者として出場。大谷翔平の凄さを話すのは置いておいて、指名打者専門の選手は多くないのが現状だ。
現実世界でも松本剛や荻野貴司など怪我の影響がある選手が入るケースもあって、これは指名打者制のいいところ。デスパイネやマッカーシー、ギッテンスが入る例は予想される所だが、なんというか、パリーグの方がセリーグよりも守備力が高いのだな、、、。(指名打者制が無いのが原因か?普通に育成が下手な気がする。もっと守備力に重点を置いてくれ、しょうもない外野手セリーグに多すぎやろ・・・DH無いからこそしっかりっせえや)
草野孝典について
最後に思い入れのある野手について。完全に趣味である。
今季、草野は131試合に出場。二塁打36本、本塁打17本は共にチーム四位の成績で、長打率.452は規定到達打者でチーム二位の成績。打点58もチーム二位で主軸として活躍した。得点圏打率.259は少し寂しいが投手の利き腕にあまり左右されない安定感を見せ、左と右の打率の差はわずか.008。これは安定して試合に出ることが出来た要因だ。一方で四球19、三振132は厳しい評価を下さずにはいられないか。とにかく三振がチームとしても1165個とリーグ五位だったので多すぎた。
草野のopsは本塁打王になった昨年の.777に続いて今年も.759と.800に到達せず。毎年.800を超えてくる中村奨吾と比較してしまうが、草野は今年も確実性に課題を残した。
草野は2015秋のドラフト、つまりペナントモード初めてのドラフトで一位指名され入団。福浦井口サブロー今江と高齢化が進むファーストサード事情がある中で、即戦力として指名した。社会人卒というスタートだったが、プロスピでよくみる「パワー馬鹿」になる可能性もあった。背番号も17。大谷がLAAで選んだ番号を付けてみた。大谷が17をつけたことで17をつける野手もこの先増えることだろう。
2016,2017は外野での出場も多く、ライトが最多だった(佐藤輝明と被って複雑だった、現場の苦労もわかろうというもの)。ただ100試合に出場し14本塁打は立派。新人王は競争相手がいなかった事も幸いしての受賞だったが、これから数年打線の一角を担っていく、担ってもらわないとという選手となった。
2018からは本職であるサードでの起用が増えて本塁打王に。名実ともにロッテの主砲になった。ベテランの引退もあっての内野起用だったが、草野自身も若くはない。中村、横田、淺間というような今年共にレギュラーを張った選手やこれからが期待される藤原や水沢よりも年齢が上なのだ。高卒がとにかく若いという事、大卒よりも時間が無いという事。社会人卒の草野が持つ思いも他の選手と比べて違う事だろう。
その中でタイトルを獲れたことは素晴らしい。ベストナインやゴールデングラブはまだないが、そこを目指していってもらいたいところ。2019は試練のシーズン。打率は上がったがホームランが減った。引っ張りシフトに対して二遊間をボテボテと抜ける安打も多く、数字の見た目以上に苦しいシーズンだったように感じる。来年度は29歳になるシーズンだ。もう一皮向けたいと草野自身も感じているだろう。
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