草野球の記録員してみた

題字の通り11月初旬頃から、旧来の友達に誘われ草野球チームの記録員をしています。普通草野球に参加、というとグラウンドに出るものですが紙と3色ペンを持って出掛けています
今回は草野球の記録員をするという事について、過去を振り返りながら分析するnoteにしたいと思います。


人生で最初に記録を採ったのは

私が人生で初めて記録を採ったのは中学生の時です。記録係はとんでもなく野球が下手だった私に顧問が与えた役割でした。
私は試合になると顧問の横で、1つしかない机の前に座り、スコアブックに試合を記録していました。
プロ野球の試合を見ていると監督の前に若手が座っている様子がカメラに抜かれたりしますがいわばそんな感じで、顧問の作戦なり愚痴なりを聞きながら1試合過ごしていました。
たまに試合に出る事もありましたが、交代してベンチに帰ってくればそのまま記録机に座っていましたし、自分のポジションという感じでした。

一方でストライクとボールの表記を逆にしていたりと、今思えば杜撰な感じで「やれることはまだあったな」という反省もあります。
回の先頭には相手打者が何番打者かなどを呼び掛けるなど、仕事はありましたがやれることはまだあったでしょうね。

ベンチ内で一番ホームベースに近い場所ですし、球筋や打者の反応も見えるのでそういう意味で楽しかった思い出もあります。
満塁で凡退したチームの四番が、バットを地面に叩きつけたことで泥がスコアブックに跳ねたりもしましたが、概ね悪い印象はありません。
同じくリザーブが予想されていた後輩にスコアの書き方を教えるというイベントも発生しましたし、クラスメイトに「後輩いるんだ・・・」って言われる事もありました。

高校三年生の体育の時間

「選手の成績を記録する」これを意識しだしたのは高校生になってからです。帰宅部(22時に帰宅)という勉強漬の生活の中、ストレス発散の場は体育の時間でした。テニスや卓球、サッカーなど様々なスポーツを生徒が選択して行え、どの種目を選んでも試合がメインという、学校側が用意しているストレスを発散するためだけの時間。
私はこれでソフトボールを選択し、秋はソフトボールに勤しむ事になります。一年間ソフトボールと言う事にはいかず、二か月ごとに競技を変更する必要があったのですが、私がソフトボールを選んだ時期は仲の良いクラスメイトも多く、かなり記録をするには適した環境でした。

その頃は、50mも6秒台で走れましたし、即投もスムーズに出来たんですけどね。草野球チームの監督でもある友人のキャッチボール相手を毎週やっていました
現役最終打席は死球からの牽制死で引退試合はネクストで終えた野球部時代から三年が経ち、リラックスして野球が出来る!という感じでした。

全部で13試合(授業日)だったソフトボールはそれぞれが2,3打席立てる感じで、17名も集まっていたので立派に試合ができる環境。スコアラーの腕が鳴ります。
ただスコアラーとしてノートを持ってグラウンドに出るわけにはいかず、記憶が頼り
詳しい記録をするのではなく、打順・アウトセーフ・得点を記録していきました。ノートに打順を書き、セーフなら○、アウトなら×、本塁打なら◎、三振ならKと表記し、打点の数を数字で記していきます。
記憶違いや記憶忘れの部分は友人に聞いて回り、全てのマスが埋まるように休み時間に書いていきました。意外と覚えているもので、投手の成績はそれを後からアウトプットすればいいですし、記録を完遂することが出来ました。
当然、補殺や失策数などの数字は記録できませんが大体は覚えていましたし、今見返しても信頼できる数字が出ていたと思っています。

筆者は.324しか打っていない
2打席の人は先生

長打率の計算は曖昧なものの、上記のように成績を出すことが出来ました。
この筆者の「ちょっと運動できる生徒の最下位感」は何とも言えませんが、○×だけの記録でも表にすれば充実した成績表を作る事が出来ます。

この他、左右別成績や打順別成績も生データとして抽出することが可能で、スポナビで見るような個人成績の表が作れます。この他、13試合だったことでセイバー指標の計算も手計算で可能。
FIPやwOBA、wRAA、BABIPなどが試算可能だったようです。

筆者の打順別成績。
なぜか中軸を打っている。

大人になって草野球の記録をやる

年齢を重ね、記録屋でありデータ厨となってしまった私は草野球チームのスコアラーに就任しました。
まずはなぜ選手じゃないのかをちょろっと書きたいと思います。

プレイヤーは諦めた

端的に言うと「出場するとチームに迷惑をかけるから」です。
野球が下手なんですね。好きではあるんだけれども。
調子に乗って草野球の練習試合に1打席だけ立ったことがあるんです。結果は死球でしたが、進塁から犠牲フライによる得点まで一通り「野球」が出来たことで淡い期待を私は抱いていました

柴田講平→和田一浩→川端慎吾→正木智也→ジェレミー・ペーニャと移り変わってきた自身のフォーム変遷において、頭でっかちになっている私は「如何にブレを失くしテイクバックからスムーズにレベルスイングするか」を考えていました。
結果、「はじめまして!」て感じで打席に立ったのにファールを記録し出塁までしたという事で結構自分に期待をしてしまったんですね。
そもそも選球眼においては学生時代の草野球から自信があって、それも自分の能力を過信するには十分のエピソードがあったわけですよ。
バッティングセンターで振り遅れ続ける私がなぜかフィールドに立ったら野球が出来ると勘違いしていたわけです。

で、紅白戦に出場しました。
それで結果は1暴走2三振3エラーというわけですね。後に3エラーだけいじられたので「2三振はみんな忘れてくれたのかな」と安心というか、他人からの見え方の勉強みたいな事を感じましたが、個人的にはパッションすら足りていないサードでの3エラーで自分に痛く失望してしまったのでした。
肩が弱いのは仕方がないですし、握力も確かに無いですし、送球は常にシュート回転するわけですが、捕球しなければその先が無いわけですから、野球オタクとしてもちょっと残念だったわけですね。

結構がっかりしたんですよねー。ボール握らない期間が長くて身体が動かなくなっているのは自分でもわかっていたわけですが、そこからすら落差が激しくてね。ミノサンもほんと酷くてね。過信してましたよ。
年末のミーティングにスーツで行って「球団から電話掛かってきたんですけど」ってボケようかとすら思いました
こりゃ迷惑だ、って事でプレイヤーはやめようと思ったのです。
でも紅白戦はやっぱり出たいです

まず記録員になってみて

「次の試合にマネージャーが参加出来ないので」
そう言われて参加した草野球でしたが、いざ記録を採ってみると忙しくて慌てましたね。特に得点した選手に記録をするのが大変というか。打席の結果や打点はわかりますが、1プレーに集中するのではなく俯瞰する必要がありました。
久しぶりに野球をグラウンドで見て実感しましたね。
スコアを厳密に書けるかと言われると私は書けないので、チームが定めた様式に合わせて書いていったのですが、それでも結構大変でした。

週末に記録員として2試合記録しましたが、ヒットかエラーかの判定も受け持ったので意外とそれも大変でした。
守備側目線で「いける!」と思った打球を野手が弾いた場合はエラー、「厳しいか?」と思った打球は弾いたり送球エラーをしてもセーフ、というように自分の中に指針はあって、それはプロ野球を15年見てきた中で感覚として覚えていったものだったのですが、目の前で行われている試合はプロの試合ではないですから、実際は場面場面で考える事になりました

マネージャーがいる試合での記録員は

そもそも、チームにはこれまで記録員を務めてきたマネージャーがいます。
で、その人たちがチームに帯同している場合は、私の仕事って何?ということになります。「野球観戦経験」で言えば私の方にアドバンテージはありますが、だからといってぽっと出が仕事を奪うみたいなのは抵抗がありました。
そこで私はより詳しい記録を行う事にしました
それは一球ずつ記録していくやり方です。
とはいえ、スポナビで見るような「観客大歓声」「打者悔しがる」「投手ガッツポーズ」みたいな事ではなく、スコア表から省いていたものを補足的に管理しようという試みでした。
記録し始めたのは以下の項目です。

・ストライク/ボール/ファール
・打球方向

この2つだけです。ただ2つの要素を増やしただけで、選手のデータはとても充実するものです
まずはストライクやボールに関してですがこれを集計する事で、投手であれば「初球ストライク率」「ストライク率」「球数」「空振り率」「ゴロ率」がわかります。
打者であれば、上記の項目に加えて「打球傾向」「被投球数」が試算可能となりました。
(通常見逃しストライクは◎なんですが、私は○で書いていました。理由は自分の感覚です。空振りって◎って感じじゃない?)

データに対しての向き合い方

いよいよ本題に入っていきます。
baseball savantをうっとりと眺め、NPBの選手名鑑はSlugger特別編集のData Stadiumの物を買うようになった私は、やはりデータによってチームが良い方に向かう事を願っています

こんな記事を真剣に読むタイプ
DELTAとSLUGGERの併せ技とか一般人読まねえだろ

草野球のたびに前項で書いた「空振り率」などのデータを私は集計し、チームに流しています。
その結果、初球打率が良いというデータが出た次の試合はかなりアプローチが積極的になっており、スコアラーが驚くレベルでした。
データ屋としては凄く充実しており、チームにはデータアナリストの経験をさせてもらっていると非常に感謝しております。

データは嘘をつきません。というか「数字も嘘をつく」というスタンスでは集計している意味がありません
良いデータも悪いデータも理解し改善していくプロセスが必要となります。

一方で、草野球で使うグラウンドにはスタットキャストなどあるはずもなく、ベンチにいる私の目からはストライクゾーンや球種も曖昧。採取できるデータは限られています
私は5試合詳細データを取ってみましたが、この塩梅が実は良いのではないかと思っています。

「エクステンション的に疲れが見える」とか「スライダーの曲がり幅が何センチある」とか「チームのハードヒット%が課題」とかそんな話が出来ないからこそ、シンプルに野球が出来ると思うのです。

野球をやる限り、上手くなりたいし試合に勝ちたい。しかし草野球の根底には「野球を楽しむ」という大事な目的があります。
この目的から外れない程度のデータをチームに提示しようと思いました

投手:ストライク率、初球ストライク率、空振り率、ゴロ率
野手:スイング率、初球スイング率、空振り率、被投球数
チーム:DER、BABIP

物理的に計算できる指標が上記に限られている環境。しかしこれで十分だと思っています。

どういうことかと言うと「選手の実力を示す指標が少ない」という事です。
言わずもがな、ストライク率やコンタクト率といった指標は選手の能力が反映される数字ですが、既にイメージ可能な数字でもあります。
草野球の環境では、コンタクト率の高い選手が打率を異常に下げる事は考えにくく、それは投手の能力にしても同じ。多少のブレは間違いなくありますが、改めて提示したからといって大きな発見がある数字ではありません。

つまり現状試算できる数字は、選手の能力を計るためではなくアプローチ方法の分析に使えるという事です。
しかしこれは当たり前で、指標とは結果ではなく過程の分析に使用するもの。
「相手に球数を投げさせても、投げさせなくてもどちらでも構わないがどんなアプローチが個人として結果が出るか」を考えるだけです。
ようは嚙み砕いていうとネガティブなデータの計算って難しいんですね。

今回、データ屋としてPDFを上げ、それを見て下さった選手達のアプローチが変わるのを実感しましたが、「初球から振れ」と言われたからといって振れるとは限りません。
スポーツは競技の能力以上に、メンタルに比重の多くを占めていることも体感出来ました

5試合記録した上で

私が参加している草野球チームは2025シーズン、リーグ戦に加入することが発表されています。全10試合のリーグ戦とのことで、勝負に徹するためにはデータの役割も今までよりは大きくなります。
スコアラーの役割は「根拠をなるべく多く提示する」事。
それも、こと草野球においては「ポジティブな理由を提示する」事です

チーム方針のもと、もし結果が出ていなくてもアプローチが正しいということを、精神安定剤的にデータを使ってほしいと思います。
チームの手助け、おいては監督(現場)のサポートを行うのがスコアラーの仕事ですから、思想としては監督の選択を助けられる・裏付けられるデータを提供する事に集中するのが理想です。

当然「相手チームの打撃傾向・打球傾向を分析し守備面に活かす」というのも理想としてはあります。「相手投手の球種分析」なんかも可能であれば試みたい。
ただ、ジブンタチノヤキュウを繰り返していくのが草野球として理想的な選択なのではないかと思っています。

「スコアラーとしてそれでいいのか」という話なんですが、幸い参加しているチームはレベルの高い試合を行っていて嬉しいので、ある程度プレイヤーに任せる方針で問題ないと思うのです。

今後について

まず、ヒットorエラーの判定を今までよりヒット寄りにします。
久しぶりにグラウンドに立ってわかりました。強い打球捕れないです。セイバー厨としても強い打球は正義だし。

それからこれまでの指標は引き続き記録していきたいと思います。
アプローチの違い、つまり選手の特色を並べるだけですが、単純に面白いと私が思っているからです。
例えば初球スイング率の大小が打率やOPSに直結するわけではない事が、草野球レベルでもはっきりとわかる数字が出ていました。
試合を見て受けたイメージと算出される数字が、近いのか離れているのか見直すだけでも私は楽しいです
それを言語化して他人に伝えるのも挑戦したいですし。

他には、守備指標を充実させたいと思っています。
「ゴールデングラブ賞を設定するなら」という前提ですが、補殺や刺殺を記録し守備率を計る事で、より根拠を示せると思いました
私は五試合しか見ていませんから、2024年はイメージで進言するしかなかったのですが、簡易レンジファクターを出せるくらいボックススコアを充実させることが出来れば、UZRがなくともOAAがなくともある程度の精度を担保できると思いました。
失策数で判断する時代は終わりを迎えつつありますからね。潮流に乗ってより多くのデータを示したいとの欲望があります。

また、投手のテンポを可視化する事を試みます。
「テンポ」は「流れ」と同じで宗派によって捉え方が違うタイプの概念なのですが、草野球だからこそ調べる価値があるでしょう。
自チームの投手が何球投じイニングを終わらせたか、投球間の時間はどのくらいだったかを大まかですが試験的に調べ、データにしてみます。

セイバー厨としては「奪三振能力が高く球速が速いのが正義」ですが、「打たせて取るゴロピッチャーの価値」も重視したいです。打球が転がらないと野球やってても面白くないですからね
私はエラーしますが、レギュラークラスは普通に捌いているので尚更です。

チームとしてやっている以上、より多くの選手の頑張りを評価する組織であってほしいわけで、打撃指標が固定メンバーで埋められるのは不服ではありますが、詳細なデータを取る事で、そこも改善出来るのではないかと期待をしています。

最後に

長々と書いてきましたが、草野球のスコアラーってなんなんですかね。
成績が残り続けるというのは野球をやっていると絶対試みたいもので、その点必要なポジションではあります。

しかし、ガチっぽい感じでペン持った人がベンチに居るというのもなんか面白いですよね。私もそう思います。だってグローブとか持ってきてすら無いですから。

グラウンドで野球が見られて、チームを応援して、記録してというのは趣味として私は楽しいので現状満足していますが、存在意義はやっぱり難しいなと笑っています。
最初は続けるつもりなど全くなかったのですが、なんかポジションに付いてしまいました。これは野球の魅力は勿論ですが、チームメイトのお人柄でしょうね。

普通に野球好きですよ。ただ、データは大好きだけど、DELTAのアナリスト達みたいに「どうせ俺たちわかってもらえないんだ」みたいな卑屈な態度はとりたくないですし。

だって俺文学部出身っすよ?
ゼミの発表で聞かれたことに答えられなかった時の白けた雰囲気忘れられないですからね?
優秀な生徒って怖いんですよ。
お前分かってて聞いてるよな?ってなりますよね。

説明係として文系は必要なんですよ。理系を増やしたい世の中で、意地張って文系行ったんだから、懇切丁寧に説明することの大切さは叩き込まれてます。
高校の先生にも大学の教授にも「お前らは必要だ」って言われてね。こういうことかと思ってますよ(絶対違います)。


でも、俺Excel使えないんすよ。笑っちゃうよね。
みんな趣味で野球してるんだから私も趣味に徹します。
このnoteで7000字書けるんだからなんだかよくわからないけど熱量だけはあるってことね。

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