2分小説『俺の人生は美しい』
俺には価値がある、だから生きてる。
価値。
かち。
カチ。
カチ。
カチ。
秒針が鳴り響くごとに俺の感動が刻まれてる。
俺の人生が、経験が、笑いが、出会いが、面白みが、詰め込まれてる。
その全部を、たった一瞬で俺は吸い込んでしまっていたんだ、今まで。
なんでだよ。
大事にしていてよ。
その感動はお前のものなんだから。
お前が見てきた世界なんだから。
ああ、思い出した。
桜の木が立つその下に、君が立っていたあの日。
あの青春、あの瞬間を俺は忘れない。
あれは俺だけの感動だ。
あのたった一瞬の景色が今も目に焼き付いて離れないんだ。
好きな人だった。
だからあんなに輝いてた。
何よりも美しかった。
俺の人生はめちゃくちゃ美しい。
そう自信を持って言えた。
大好きだった。
君と手を繋ぐことはなかった。
だけど君が、確実に俺の中のピースになっていて、今も俺を支えているんだ。
人生ってそうなんだ。
いろんな経験や、感動が、俺を支えてる。
俺の世界はめちゃくちゃ美しい。
そう言える。
そう言わせてくれ。
頼むから
「つまらない」
なんて言わないでくれ。
それは俺の口からも言ってはいけない。
だってこんなに愛されて生きているんだから。
今もずっと君のことを思うよ。
好きだよって。
ありがとうって。
俺はそっと花を添えた。
君が眠るその場所が、美しいことを示すために。