隣人の秘密
街の片隅にある古びたアパート、その201号室には若い女性カナが一人で暮らしている。彼女の生活はシンプルで、朝は仕事、夜は静かな部屋で読書をするのが日課だ。そんな彼女が気にしていたのは、隣の202号室の住人だった。
そこに住む男性、ユウキはとても無口で、時折深夜に妙な音を立てる。それは金属がぶつかる音や、何かを引きずる音のようで、カナは何度も気になったが、直接問いただす勇気はなかった。
「何をしてるんだろう?」
隣人の秘密を知りたいという思いが募る中、ある日、決定的な出来事が起きた。
その日は雨が降りしきる冷たい夜だった。帰宅途中のカナは、階段の踊り場でユウキとばったり会った。彼は大きな黒い袋を抱えており、それを車のトランクに運び込んでいる最中だった。
「こんばんは。」
思わず声をかけると、ユウキは少し驚いたように振り返った。「こんばんは」と返したその声は、どこか冷たく、カナは思わず一歩引いてしまった。
「それ、何ですか?」気づけば聞いていた。
ユウキは一瞬黙った後、「ただのゴミだよ」と答えた。
だが、その袋の形が妙に人型に見えたこと、そして雨に濡れた彼の手に赤い液体のようなものがついていたことが、カナの心に強い不安を残した。
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