月夜の郵便屋
月が明るく空に浮かぶ夜、田舎町の小さな郵便局に現れるという噂の「月夜の郵便屋」。彼の存在を知る者は少ないが、その噂を聞いた者は皆、彼が届ける手紙には特別な力が宿っているという。
冬の冷たい風が吹くある夜、18歳の沙織は一人きりで家のポストの前に立っていた。彼女の胸には、ずっと書けずにいた一通の手紙が握られている。それは、5年前に突然いなくなった兄、悠一への手紙だった。
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