冬の夜、音が消えるとき
真冬の夜、雪がしんしんと降り積もる町の片隅に、小さな喫茶店があった。名前は「サイレント」。その店には奇妙な噂があった。店内に入ると、すべての音が消えるのだという。
音が消える、と言っても耳が聞こえなくなるわけではない。ただ、何も音が発生しなくなる。扉のベルも鳴らず、カップがテーブルに置かれる音も消え、会話すら声にならない。それなのに、口の動きだけで相手の言いたいことが理解できる。不思議な空間だった。
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