幻影の街

第一章: 不可解な招待状

大学を卒業してから5年、佐久間涼介は毎日をただ無難に過ごしていた。東京の広告代理店で働く彼の生活は、スーツを着て出社し、上司の指示通りにクライアントに提案を行い、疲れ切った体で帰宅して寝る、という繰り返しだった。

「これでいいのか?」

時折自問するものの、結局答えは出ないまま時が過ぎていた。そんな彼に、ある日一通の手紙が届いた。送り主の名前も住所もなく、表にはただ「佐久間涼介様」とだけ書かれている。中には一枚の紙と地図が入っていた。

「あなたを選びました。日曜日の夜10時、この場所へお越しください。
新たな人生が始まります。」

紙にはそう書かれ、地図には見覚えのない街が描かれていた。奇妙だと思いながらも、涼介の胸には一抹の好奇心が芽生えた。いつもと違う何かを求めている自分に気づいていたのだ。

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