
「行動至上主義」を超えて-意味のある行動とは何か-
これまで2回にわたり「行動至上主義」の
問題点と失敗事例(製造現場での技術導入の例)
を見てきました。
最終回となる今回は、前回詳しく見た
失敗と成功の違いから、真に意味のある
行動とは何か、そしてそれをどう実践して
いけばよいのか、について、具体的に
考えていきたいと思います。
■意味ある行動の本質
前回お伝えした技術導入プロジェクトでの
経験から、私は価値ある行動には必ず
次の「3つの要素」が備わっている事に
気づきました。
①明確な目的意識
「なぜその行動をするのか」という問いに
具体的に答えられることです。
技術導入プロジェクトの失敗例では、
「とにかく使え」という表面的な
指示のみで、
「なぜその技術を導入する必要があるのか」
「どんな価値を生み出したいのか」
という本質的な議論が欠けていました。
一方、成功に至ったケースでは、
「技術の精度向上と安定化」という明確な
目的がありました。
この違いは、その後の行動の質を大きく
左右することになったのです。
②検証可能な指標
行動の効果を測定できる具体的な指標を
持つことが重要です。
「頑張った」「努力した」という主観的な評価
ではなく、客観的に進捗や成果を確認できる
基準が必要です。
失敗例では、技術の使用回数という単純な
量的指標のみに注目し、その結果、技術改善
のための有効なデータの蓄積すら怠られました。
これに対し、成功例では技術の精度や安定性
という質的な指標を重視し、着実な改善に
繋げる事が出来ました。
③改善のサイクル
行動と検証、そして改善が循環する仕組みを
作る事です。これは単なるPDCAサイクルでは
ありません。
より深い次元で、行動の質を高めていく
継続的な取り組みが必要です。
プロジェクトが成功に転じた際、最も重視した
のがこの点でした。個々の失敗を単なる失敗で
終わらせず、技術改善のための貴重なデータ
として活用し、次のステップに繋げていった
のです。
■実践のためのアプローチ
では、これらの要素を実際の行動にどう
組み込んでいけばよいのでしょうか。
技術導入プロジェクトでの経験を基に、
実践的なアプローチを提案します。
Step 1: 目的の明確化
まず、その行動が何を目指しているのか、
を具体的に言語化します。
「なぜそれをするのか」
「どんな変化を生みたいのか」
という問いに、できるだけ具体的に答えを
見つける事から始めましょう。
プロジェクトの場合、単なる「技術導入」では
なく、「実用に耐える精度と安定性の確保」
という具体的な目標設定が、その後の行動の質を
決定づけました。
Step 2: 行動の設計
目的が明確になったら、それを達成するための
最適な行動を設計します。ここでのポイントは、
「最小限の労力で最大の効果を得る」という
視点です。
プロジェクトでは、やみくもな技術の使用では
なく、まず技術の精度向上と安定化に注力する
ことを選択しました。
一見遠回りに見えたこの判断が、
結果的には最短路となったのです。
Step 3: 検証の仕組み作り
行動の効果を定期的に確認し、必要な修正
を加えられる仕組みを整えます。
これは単なる数値管理ではなく、質的な評価も
含めた総合的な検証システムです。
先の技術開発においては、以下の3点を常に
確認しました:
• 目的(精度と安定性)に対して効果的な行動
だったか
• 予期せぬ副作用はなかったか
• より効率的な方法はないか
これにより、方向性のズレや目的と手段の入替り
を防ぐことができます。
■新しい行動観への転換
このプロジェクトの経験を通じて、「行動」に
対する新しい捉え方の必要性が見えてきました。
①質的な充実
行動の量よりも、一つひとつの行動の質を高める
ことに注力することが重要です。
これは必ずしも「完璧を目指す」ということでは
なく、継続的な改善を重ねていく姿勢を意味します。
②持続可能性
短期的な成果だけでなく、長期的に持続可能な
行動パターンを確立することが重要です。
これは個人の成長においても、
組織の発展においても同様です。
③全体最適
個々の行動を独立したものとしてではなく、
全体の中での位置づけを意識しながら取り組む
ことで、より大きな成果につながります。
■おわりに
「行動すること」は確かに重要です。
しかし、それは単に「動く」ということでは
ありません。
目的を持ち、効果を検証し、継続的に改善
していく。
そのような質の高い行動こそが、真の意味で
価値のある成果につながります。
この3回のシリーズを通じて、「行動」に対する
新しい視点を提供できていれば幸いです。
これからの時代に必要なのは、より洗練された、
知的な行動様式なのではないでしょうか。
【最後に、読者の皆様へ】
もしよければ、「行動至上主義」に関する貴方の
体験を共有していただけませんか?
・「とにかく行動」で成功した経験
・逆に、慎重に準備して良かった経験
・行動の「質」にこだわって変化が生まれた経験
などなど、どんな経験でも構いません。
あなたの経験が、誰かの気づきのきっかけに
なるかもしれません。
コメント欄でお待ちしています。
前回記事①;
「行動至上主義」の実態と問題点-なぜ「とにかく行動しろ」は危険なのか-
前回記事②;
「行動至上主義」の落とし穴-ある製造現場で見た「考えなき行動」の代償
より詳しい考察記事;
行動至上主義への違和感-意味のある行動とは何か-